上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2. 寄稿

エネルギーシステムへの視点
槌屋治紀(株式会社システム技術研究所)

 1973年の石油危機の混乱のなかで、エネルギーの将来を考えるのは難しい問題
であった。こうした状況のなかで、1974年、プリンストン大学で行われた米国物
理学会の研究会は、まったく新しい方向への展開の契機となったとされている。
その結論は、「多くのエネルギー利用プロセスは、物理学からみると極めて効率
が低く、一般にエネルギー消費の増加は繁栄を示し良いことであると考えられて
いる」というものであった。
 このとき初めて米国のエネルギー消費の内容を,個別のエンドユース(最終用
途)とエネルギーの種類と品質(電力、可搬燃料、高温熱、低温熱など)に詳細
に分解する試みが開始された。

 1980年の冬、「ソフトエネルギーパス」を書いたエモリー・ロビンズが、ロー
マのソフトパス国際会議に来いというので出かけた。そこでスエーデンから来た
トーマス・ヨハンソン(ルンド大学)に出会うことになった。彼は、スエーデン
未来研究局から「ソーラー・スエーデン」という太陽エネルギー・シナリオを発
表していた。そしてこんどはトーマスが、1982年に、プリンストン大学エネル
ギー環境センターで「エンドユース・オリエンテッド・アプローチ」の研究会が
あるから来いというのだった。
 そこへゆくとA.N.レデイ(インド工科大学)などの物理学者やさらに開発途上
国の多くのエネルギー分析者らに出会うことになった。A.N.レデイはインドから
イギリスと米国に留学し電気化学の分野で活躍した後、バイオマスや効率の高い
技術を中心にしたインドの地域に密着したエネルギー政策を研究して世界的に知
られていた。
 このグループは、そのころ主流を占めていた方法論を供給重視型アプローチ
(Supply Oriented Approach)と呼んだ。これは、成長する経済に必要なエネル
ギー需要を過去の延長線上に想定し、これを供給するエネルギー源を用意すると
いう考えである。結果として幾何級数的に増大するエネルギー需要を想定し、こ
れを大規模なエネルギー供給によりまかなう計画になりやすい。これに対してエ
ンドユース・オリエンテッド・アプローチは、最も効率のよい技術によりエネル
ギー最終用途を満たす方法を積み上げて必要なエネルギー需要を求める方法であ
る。

 ここで、BAT(Best Available Technology)という概念が持ちこまれた。BAT
は、入手できる最良の技術を意味しており、多くの場合、現在使用されている平
均的な技術の2倍以上のエネルギー効率になることが多い。低燃費の自動車、効
率の高い電気冷蔵庫、電球型蛍光灯はその例である。多くのBATが広く普及した
シナリオを研究すれば、将来のエネルギー消費をきわめて小さくする可能性があ
ることが示されている。
 そこでの議論の結果は、ワシントンにグスタフ・スペスが設立した新進気鋭の
シンクタンク、世界資源研究所から「持続可能な世界のためのエネルギー
(Energy for a Sustainable World)」として発行され、世界中の多くの読者を掴
んだ。
 「エンドユース・オリエンテッド・アプローチ」は、エネルギーの利用目的は
何か、エネルギーの最終用途にもっとも効率よくエネルギー・サービスを届ける
にはどうしたらいいか、そのためには何が必要か、というように問題を捕らえ
た。そして、市場は非効率なエネルギー消費を促進しているので、適切に市場へ
介入する必要があることを示したのである。

 今、CO2を削減するために行われている活動をみると、彼らの見通しの確かさ
を感じる。

----
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://isepseenarchive.blog88.fc2.com/tb.php/87-b581a1bb
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。