上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
1.  風発 政策を近代化するということ
 (飯田哲也、ISEP所長)

住宅用太陽光発電への設置補助金の打ち切りがいよいよ確実らしい。とはいって
も、1キロワットあたりの設置補助金は昨年の9万円から今年はわずかに4万5
千円に下がっているため、実質的な補助効果はすでになきに等しい。このように
補助金が下げられてきた理由は、Hotwiredの連載第6回
(http://hotwired.goo.ne.jp/ecowire/tetsunari/040817/)で触れたように、財
務省や経済産業省に根強い「市場の自立化思想」が背景にある。つまり、「市場
で自立していない」から補助金を出し、「市場で自立化」すれば補助金を打ち切
るということだろう。

しかし、この補助金とセットになった「市場の自立化思想」に日本の政策の根源
的な歪みがある。そもそも「市場の自立化」とはどういう意味だろうか。たとえ
ば、太陽光発電は市場で自立しているかといえば、明らかに「否」である。補助
金がここまで下がっても太陽光発電が普及し続けているのは、あきらかに電力会
社が現在1キロワット時あたり25円程度で太陽光発電からの電力を購入している
ことを前提にしている。ところがこの余剰電力購入メニューは自主的なプログラ
ムに過ぎないため、電力会社はいつでもこれを打ち切れるし、打ち切った瞬間に
「世界最大」を誇る日本の太陽光発電市場も瓦解するだろう。これは、かつて太
陽熱温水器市場で経験済みである。

では、仮に太陽光発電が低コスト化し、風力発電と同等の競争力を持てば「市場
の自立化」といえるだろうか。これも「否」である。エネルギー全体の中で自然
エネルギーに対する適切な普及策 - 現行のRPS法の改善なり固定価格制度への転
換なり - が適用されない限り、太陽光発電は化石燃料や他の自然エネルギーと
の厳しい価格競争を強いられるだろうし、電力会社から系統連系を口実にした市
場制約を加えられるだろう。市場原理派から見れば、それが「市場の自立化」で
あり、それでいいのだと言うかもしれない。

結論から言えば、「市場の自立化」という発想を改めなければならない。それに
代えて、「公正な市場環境をつくること」(Level playing field)を政策の目標
に据えるべきだろう。両者は似ているようだが、根本的に異なっている。たとえ
ば原子力はその社会的費用や破局的なリスクのすべてを経営者が引き受けている
わけではなく、むしろ恩恵を得ている。化石燃料もその社会的費用を支払ってい
ない。逆に、太陽光発電など自然エネルギーは、環境保全やエネルギーセキュリ
ティへの貢献に対する政策的な恩恵が補助金という古典的な政策支援に留まって
いるために、電力会社などの既得権益が何のリスクも負わない一方で、市場の欠
陥や制度的なリスクは事業者や消費者が転嫁されている。

一方で、環境省でもNEDOでも地球温暖化防止や新エネルギーへの補助金の大盤振
る舞いが行われているが、政策目的のために有効な公的資金の使い方なのか、と
りわけ機器に対する設置補助については疑問がある。一つには、kW(規模)に比
例した補助よりもkW時(出力)に比例した補助の方が効果的であるという理由に
加えて、政策の役割のズレがある。政策の役割として、初期の設置補助金ではな
く、制度的な障害や市場リスクを取り除く適切な政策措置が行われれば、初期投
資は補助金でなくても民間資金で十分に賄うことができる。政府債務が膨大に積
み上がる今日、特別会計の補助金だけは効果も疑問のまま政策も改善されないま
ま大盤振る舞いされるという状況をいつまでも放置するべきではない。

「市場の自立化」という古くさい発想を土台にした補助金という古典的な手法を
そろそろ見直し、健全な市場形成のためにリスクとコストを政策的にシェアする
方向へと転換する必要がある。これが、エネルギー政策の近代化の第一歩となる
だろう。

----
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://isepseenarchive.blog88.fc2.com/tb.php/86-f73c8341
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。