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1.  風発 「討議」するエネルギー政策へ
 (飯田哲也、ISEP所長)

日本で公共的な政策を論争する場合、しばしば単純化された2項対立の議論に陥
りやすい。しかもそれが、本質を外れた「2項対立」である場合がほとんどなの
である。最近では、年金問題における不払い問題、道路公団の民営化などであ
り、古くは政治改革が選挙改革へとすり替えられ、小選挙区と2大政党論に移行
したこともそうだろう。結局、本質論の方は(おそらく官僚と既得権益の両方に
とって)都合良くすり替えられ、問題は一向に改善せず、むしろ複雑かつやっか
いになる。

環境・エネルギーでは、核燃料再処理の問題や新エネRPS法の問題、地球温暖化
の政府大綱などが直面する論争であるが、そこにも本質を外れた「2項対立」の
芽がある。核燃料再処理では、直接処分のオプションを再処理推進派が「使い捨
て」とレッテル張りをしようと画策しているが、自分たちが直面する六ヶ所再処
理工場だけを動かせばよいと考えている「その場しのぎ」であること、再処理こ
そ膨大な「ゴミの撒き散らし」である自己矛盾は、隠しているのか、無知なの
か、触れようともしない(毎日新聞論点参照)。新エネRPS法では、電力会社が風
車による系統への影響を大声で言い立てるが、そもそも系統の周波数の変動もそ
の対応もすべての需給変動の合成であることは、けっして触れない(「自然エネ
ルギー促進法」推進ネットワーク(GEN)のパブリックコメント
http://www.jca.apc.org/~gen/ 参照)。

こうした本質を外れた「2項対立」を生む日本社会の素地は何か。ムラ社会的な
政治風土の中で、自分にも問題が跳ね返ってきそうな本質論はどうしても避けら
れる。代わって、トリビアルな課題が「生け贄」として差し出され、これに、メ
ディアや政治家、そして専門家までもが「浅分かり」をする性向が加わり、それ
を官僚と既得権益があざとく利用しているのではないか。これは、日本社会全体
から見て、新たな「知」の獲得に向かわない、大きな損失である。

篠原一氏の近著「市民の政治学 - 討議デモクラシーとは何か」(岩波新書)
は、近年の欧州で潮流となっている新しい市民政治の流れをわかりやすく紹介し
ているが、中でも「討議デモクラシー」(deliberative democracy)という開かれ
た民主主義の発展が注目される。日本の「ワンフレーズ政治」や「本質を外れた
2項対立」のはるか先を行く成熟した社会のありようを教えてくれる。

その意味で、われわれ環境派に格好の題材がある。現在、フレームアップされて
いる風力発電による鳥類への影響の問題だ。自然保護の核心地域を保全すること
の重要性はいうまでもないし、予防的な態度で開発に臨む姿勢にも賛同する。し
かし、一方で、3つの「重み」を考慮した総合的なアプローチが必要だろう。第
1に、人為現象の中で鳥類に与える影響から見て、風力発電の「重み」はどうか
という点である。第2に、生物多様性全体から見た、この問題の「重み」であ
る。第3に、エネルギーが環境全体に与えている影響から見たこの問題の「重
み」とそれに対して代替エネルギーとしての風力発電の必要性とのバランスであ
る。(足利工大2004年風力発電シンポジウムにおける飯田基調講演から)

こうした問題へも討議を重ねながら、一つひとつ「社会知」を生み出していくこ
と。その先にこそ、持続可能なエネルギー社会が拓けていくのではないか。

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