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1.「自然エネルギー2004」の終わりと「自然エネルギー政治」の始まり
 (飯田哲也、ISEP所長)

4日間にわたる自然エネルギー2004は、トリティン環境大臣の「自然エネルギー
の時代」の開幕宣言で始まり、ウィチョレクツォイル経済協力開発大臣(女性)
の「エネルギー問題が今世紀における国際政治アジェンダの中心になった」とい
う閉幕スピーチで締めくくられた。この2人の息のあったコラボレーションは、
自然エネルギー2004を「成功」と呼ぶならば、最大の成功要因であった。ドイツ
でも環境省は政治力が弱いため、経済協力開発省が加わったことで、ドイツ国内
におけるこの会議の政治的な重みを増したことに加えて、ウィチョレクツォイル
は「シュレーダー首相の門番」と呼ばれる政治的な位置にあるからだ。

彼女の閉幕スピーチは、政治的な美辞というよりも、この会議の成果を的確に要
約したものとなっている。まず彼女は、持続可能なエネルギー未来を建設してい
く強い政治意思というメッセージを全世界に送ったことを最初の成果として挙げ
た。そのメッセージに含まれる「ビジョン」は、単なる夢ではなく、政治的な意
思があれば実現できるというのだ。

わずか10年前には、専門家やエンジニア、金融関係者などで占められ、ほとんど
女性を見ることはなかったエネルギー問題が、この会議をとおして、今世紀にお
ける国際政治アジェンダの中心となり、女性を筆頭に多様な当事者が参加するよ
うになったことを強調する。自然エネルギーは、エネルギーへのアクセスを向上
させ、気候変動のリスクを回避させ、地域の雇用と経済開発をもたらし、地域資
源の活用によって経済負担を軽減し、そして「太陽をめぐる戦い」はなく平和を
もたらすことから、持続可能な発展に貢献する中心的な役割を果たすとしてい
る。

また、自然エネルギー2004の成果の一つである「国際行動プログラム」は、さま
ざまな主体による自主的・自発的な取り組みとはいえ、「コミットメント」であ
り、今後のフォローアップによって大きな成果が期待されている。たとえば今後
5年間にわたり自然エネルギーとエネルギー効率化への投融資を毎年20%拡大
していくという世銀のコミットメントは特筆されていた。それにひきかえ、日本
政府は既存の新エネルギー利用特措法の内容を書き込んだだけであり、ほとんど
無視されていた。

この先、この会議のフォローアップは、2つのトラックで行われる。第1トラッ
クは、ヨハネスブルグサミットで約束されていた2006/07のCSD(国連持続可能開
発委員会)であり、それまでの中間年にフォローアップ会議を途上国で開催する
ことが期待されている。第2トラックは、「世界政策ネットワーク」と呼ばれる
もので、まだ骨格も決まっていないが、事実上、マルチステークホルダーを継承
するものと見て良い。

最後に、ウィチョレクツォイル大臣は、ドイツ政府の新しい貢献を表明して、拍
手で迎えられた。ヨハネスブルグサミットの場でドイツ政府は、5年間にわたっ
て10億ユーロ(約1400億円)もの投融資を主に途上国の自然エネルギー開発に投
じることを表明しているが、今回、さらに5億ユーロを追加して、KfV銀行グ
ループとの協調によって自然エネルギー市場の立ち上げを加速するとしている。
じつは日本代表団も、研究開発費に単年度で1200億円を費やし、途上国への省エ
ネルギー技術援助に毎年100億円規模の援助をしていることを最終セッションで
述べたのだが、それほどの注目を集めたとは言えない。ドイツと異なり、見るべ
き成果に乏しいからであろう。

それにしても、自然エネルギー2004を振り返ると、主要なトピックスは、ここ数
年にわたって日本の市民セクターがリードしてきた論点がほとんど網羅されてい
て感慨深い。たとえば、6年前にドイツ型の「自然エネルギー固定価格買い取り
制」(FIT)をベースに、市民立法を目指した「自然エネルギー促進法」は、日
本でも国会を巻き込んだ政治トピックスに発展したが、こうした政策措置が自然
エネルギー2004の「影の主題」(すなわち、FITかRPSかの議論)となる政治ト
ピックスにまで展開するとは、正直なところ、当時は思いもよらなかった。グ
リーン電力も、国際行動プログラムやサイドイベントで、様々な形で見え隠れし
ていた。

ヨハネスブルグサミットで最大の焦点となった「数値目標」は、ドイツ(先に
2020年に電力の20%を表明)や英国(1月に2015年に電力の15%を表明)、欧州連
合(2020年に1次エネルギーの20%水準の目標を2007年に決定予定)、そして中
国(2010年に電力設備の10%)などに見られたように、今回も間違いなく主要な
ポイントだったが、ヨハネス当時よりは、相対的に重みが小さくなったように思
われる。それは、自然エネルギーという性格上、世界全体の数値目標を定めると
いうヨハネスブルグサミットでのトップダウンアプローチにやはり無理があった
ことに加えて、国際行動プログラムなどの自主的なコミットメントやファイナン
スの新しいオプション、そして適切な政策措置などにも、重心が移っていったた
めであろう。

UNEPが主催し、主要な関連イベントとして併設された「自然エネルギーへのファ
イナンス」は、世銀やIFC、あるいはJBICなどによる途上国向けの従来型のエネ
ルギー開発資金の流れを変えるという政治課題よりも、むしろ、リスクが大きく
投資利回りの小さい自然エネルギー開発に対して、従来とは異なる革新的なファ
イナンスオプションを探ることに主眼があった。その意味で、村上報告にあるよ
うに、開発金融NGOやスマート補助金など、あらためて新しい領域の広がりを認
識させてくれた。

初めての試みであった世界国会議員フォーラムは、日本から4名の国会議員と1
名の県会議員が参加し、とくに河野太郎議員のスピーチは注目を集めた。また、
そこで取りまとめられた提言も、なかなか評判が高かった。しかしながら、自然
エネルギー2004の本会議全体のプロセスや「成果」に、大きな貢献をするように
は必ずしも位置づけられていない。また、「地方自治体による自然エネルギー
2004」も、もう少し大きな役割を期待していたのだが、予想外に小さな規模とな
り、しかも主催が異なっていたせいか、やはり本会議の「成果」に十分反映され
る会議デザインではなかったことは、少々残念であった。

自然エネルギー2004は、英国主導で昨年10月に立ち上がったREEEP(自然エネル
ギー・エネルギー効率化パートナーシップ)や、欧州委員会が事務局を務めてい
るもののまだ実態の見えないJREC(ヨハネスブルグ自然エネルギー連合)に比べ
ると、154カ国が「ボン宣言」を採択し、国連プロセス(CSD)に戻していく道筋を
つけるなど、ひとまずは「成功」といえるのではないか。

しかも、事実上ドイツ一国で成し遂げたのであり、長谷川報告が指摘するとお
り、21世紀の国際社会、とりわけ南の国々に対して、ドイツは強烈なプレゼンス
を示したといえよう。今回のドイツの果たした、国連の枠組みを外れながら国連
のプロセスを強化するような役回りを、いったい日本が担うことは可能だろう
か。政府や政治家の力量の差は言うに及ばず、自然エネルギー産業の広がりや
ファイナンス会議の顔ぶれ、そして市民社会の分厚さの違いを考えるとき、自然
エネルギー普及量やエネルギー政策の質的な水準だけでなく、とくに知的営為の
水準において、途方もない遅れを痛感してしまうのである。

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テーマ:【閣僚参加会合(2日目)】

本会議C 閣僚間パネル
 パネル1:エネルギーサービスと今後100年の発展目標(9:00-10:30)
  - 自然エネルギーとエネルギー効率化の役割
 パネル2:気候変動問題解決へ向けた自然エネルギーの役割(10:30-12:00)
本会議D 閉幕 (12:00-13:00)

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