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1. 「風発」
詐欺的な言説~マニフェストとロンボルグ

環境エネルギー政策研究所 所長 飯田哲也

マニフェスト総選挙であるといわれる。新聞記者からコメントを求
められたので、あらためて自民党と民主党のマニフェストを眺めて
みると、エネルギー問題にほとんど触れていないことに気づいた。

両党のマニフェストは、日本のエネルギー政策が直面している問題
である原子力政策、とりわけ核燃料サイクルの問題を避けている。
とりわけ自民党を中心とする与党は、エネルギー基本計画を閣議決
定し、その中で核燃料サイクルの推進を明記しているのだから、六
ヶ所村再処理工場の扱いや、核燃料サイクルに伴う新たな負担や税
の導入、電力自由化における原子力の優遇と構造(発送電)分離の
忌避などを明記しなければならないのではないか。

政治的な争点になっていないと言えばそれまでだが、今後も核燃料
サイクル路線を続けるかどうか、より具体的かつ直面する問題では、
六ヶ所村再処理工場でアクティブ運転にはいるかどうかは、費用面
でも数十兆円規模の問題であり、エネルギー政策としては取り返し
のつかない選択になることを考えれば、政治的な争点としない両党
の見識の方こそが問われる。

穿ってみれば、政治的な争点とすることを避けているのであろう。
「新エネルギー」や「原子力の安全強化」などのきれい事だけを前
面に出し、そもそも争点にしないことが両党の「党益」に叶ってい
る。電力会社からも議員を送り出し、原発立地県の族議員がエネル
ギー政策を支配する自民党は、そもそも争点を避けることで、エネ
ルギー基本計画を粛々と遂行することができる。

対する民主党も、党内のエネルギー政策を電力総連など「エネルギ
ー保守派」に支配されているという党内事情のために、エネルギー
基本計画に添って原子力の優遇や核燃料サイクルへの国の支援を行
うことは自民党の既得権益層と利害が一致している。そもそもエネ
ルギー政策基本法そのものが、「原子力国策化」という鎧を透けて
見せながらも、国会での論戦を巧妙に避けた両党の合作で成立した
「詐欺的な法律」であり、今回の総選挙でも2大政党のマニフェス
トがいずれも核燃料サイクルの問題を避けているとすれば、これは
もう「詐欺的なマニフェスト」と断ぜざるをえない。

欧州に目を転じれば、エネルギー政策の選択は、地球温暖化問題と
も相俟って、経済社会の基本構造を左右する、非常に大きな政治的
な関心事となっている。ドイツの社民党・緑の党による政権合意や
今年2月の英国エネルギー白書の野心的な目標や、とりわけWSSD
での自然エネルギー目標値への合意決裂を受け、来年6月にドイツ
・ボンで開催される「自然エネルギー2004」に向けて、国際社会
の関心がうねりのように盛り上がりつつある。それに対して、この
マニフェストのエネルギー政策面での「貧弱さ」は、目を覆わんば
かりである。

ところで、もうひとつの「詐欺的な言説」として、ロンボルグも紹
介しておきたい。このところ、環境問題の定説を疑う本が偶然にも
立て続けに出版されている。渡辺 正、林俊郎「ダイオキシン神話の
終焉」(日本評論社)がその代表だが、とくに、7月に邦訳された
「環境危機をあおってはいけない 副題:地球のホントの実態」(
ビョルン・ロンボルグ著、山形浩生訳・文芸春秋社、以下「ロンボ
ルグ本」)を取り上げる。はじめに断っておくと、「定説」を疑う
こと自体を問題にしているのではない。「定説」を疑うといって中
立を装いながら、一定のバイアスのかかった立場からの「攻撃的な
姿勢」が明らかであることが問題なのである。

著者のビョルン・ロンボルグは、デンマーク・オーフス大学政治科
学部の助教授で、訳者も書いているとおり、本書が出版されるまで
は無名に等しかった。ロンボルグは、デンマークでの政治紙で「地
球環境はじつは良くなってきている」という連載-無名の助教授に
よる連載自体が異例と言われている-と、それを下敷きにしたデン
マークでの本書の出版をきっかけにして、同国で激しい環境論争を
巻き起こした。

その後、2001年にケンブリッジ大学出版から英訳が出版されてか
らは、サイエンティフィック・アメリカン、ネーチャーといった権
威ある科学誌を巻き込んで、環境論争も国際的なものとなった。な
お、デンマークの原書では、英訳本での副題(The Real State of the
Earth)がタイトルだったが、これは後述するように、もともとロ
ンボルグが米国のワールドウォッチ研究所が刊行を続けている「地
球白書」(The State of the Earth)を「仮想敵」としているからだ。

英訳本の標題「懐疑的な環境主義者」(The Skeptical Environmen
-talist)は、「自分自身は環境主義者なのだけれども、科学的な懐
疑主義に立っているのだ」という、いささか挑発的なロンボルグの
本音が伺えるタイトルに変わっている。ただし日本語訳のタイトル
では、そうしたニュアンスは伝わらない。

ところで本書を巡る論争だけでなく、ロンボルグ自身がラスムセン
現デンマーク首相(自由党)の助言者として知られ、同政権の誕生
後の2002年2月には、「ロンボルグのための研究所」(環境評価
研究所)が設立されている。こうした「現在進行形」の政治性も含
んだ「話題の本」である。

ただし、産業擁護が露骨に透けて見える米国に多い典型的な「スピ
ン本」や、日本でしばしば見られる御用学者ないしは狭量な科学至
上主義による「トンデモ本」とは、巧妙さや政治的意図において相
当異なっており、新しいタイプといえる。

こうした類書への批判は、必ずしも建設的な作業とはいえず、往々
にしてむなしいものだが、俗に「環境先進国」と呼ばれるデンマー
クからこうした人物と論調が登場したこと、論争も人物も上記のよ
うな話題性があること、翻訳書が初めて日本語で登場した段階であ
り、そうした「新しいタイプの巧妙さ」にまだ免疫のない日本でひ
ととおりの批判を試みておくことも意味はあるだろう。

ただし、ロンボルグ自身は経済的・知名度的には「成功」したかも
しれないが、幸いなことにというか、当然のことながらというか、
一時期の話題にはなったものの、国際的な環境ディスコースはほと
んど微動だにしていない。こう書くと、「そのようなレッテル張り
で評価を貶めようとしている」というロンボルグの声が聞こえてき
そうだが、事実なのだから仕方がない。
(以下、続きはこちらへ
http://www.isep.or.jp/magazine/magazine003.html)

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