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2. 原子力円卓会議2010シンポジウム「原子力政策をどう見直すか
        ?日英独における今日的論点とその方向性」からの報告

開催日時:2010年11月23日 13:30~17:00
開催場所:東京工業大学 本館 第一会議室
主催:原子力政策円卓会議2010
東京大学グローバルCOE
          「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP)
特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
プログラム:
 開会 趣旨説明 飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)
 報告 日本「原子力政策円卓会議2010の提言」
     吉岡斉(九州大学副学長)
    英国 「英国の原子力政策について」
     スティーブ・トーマス(グリニッジ大学教授)
    独国 「独国の原子力政策について」
     ルッツ・メッツ(ベルリン自由大学政治社会科学学部上級准教授)
ラウンドテーブル論議
     原子力円卓会議2010+トーマス氏、メッツ氏
http://www.isep.or.jp/event/101123sympo.html

USTREAM配信
報告
http://www.ustream.tv/recorded/11035444
ラウンドテーブル
http://www.ustream.tv/recorded/11037228

(1)「英国の原子力政策について」
             スティーブ・トーマス氏(グリニッジ大学教授)
                 文責:栗山昭久(ISEPインターン)

スティーブ氏は原子力発電所(以下、原発)が期待されるほどに普及されてい
ない3つの理由を述べた。第一に、原発がほかの発電形式に比べて経済的競争
力がない。その背景として技術の不確実性による建設コストの上昇や借り入れ
コストの上昇により原発のコストが過去5年間において上がり続けていること
を指摘した。第二に、安全性を高め、かつ設計をシンプルにする試みがなされ
ているが、現状はうまくいっていない。原因は市民や行政からの原子力への安
全性の要求の高まりなどを背景にして過去50年間原発の建設コストは上昇し
つづけているとした。第三に、市民の原子力導入に対する反対意見の増加とと
もに原発を推進する政府が機能不全に陥っている可能性を示唆した。最後に今
後、北米や欧州で原発が大量に建設されることはなく、安くて安全性が低い原
発が開発途上国で建設されるだろうと予測するとともに、原発を創ることは多
くの将来の機会コストを上げていると結論付けた。

                    栗山昭久(ISEPインターン)


(2)「ドイツの独国の原子力政策について」
      ルッツ・メッツ氏(ベルリン自由大学政治社会科学部上級准教授)
                 文責:矢嶋孝裕(ISEPインターン)

メッツ氏の結論は、原子力発電は世界の電力供給のなかで、あまり大きな役割
を果たしておらず、今後も変わらないというものでした。世界の電力供給の約
15%は原子力発電により賄われていますが、全エネルギーの中で電力が占め
る割合は約16%です。単純計算では全エネルギーの2.4%が原子力発電に
よるものとなります。そして、2007年に世界中で新たに導入された全発電
容量のうち、原子力は1.2%でしかありませんでした。現在でも原子力発電
の役割は控えめなものであるといえるでしょう。

また、原子炉の耐用年数の問題もあります。現在、世界で稼働中の原子炉
441基のうち、送電線に接続されてから20年以上のものが358基、30
年以上のものが152基です。半分以上が接続から20年以上経ていることに
なります。原子炉の高齢化が示すものは、原子力産業に従事する労働者の高齢
化でもあります。新規の原子力発電所建設が少なかった事で、50歳の労働者
の数は30歳の労働者の3倍にものぼります。教育体制の再整備なども原子力
発電の隠れたコストと言えるでしょう。加えて、原子炉の重要部品については
製造上のボトルネックが存在することも、原子力産業にとっては大きな問題で
す。使用済み核燃料の処分という非常に大きな問題も未解決のまま残っていま
す。以上のことからだけでも、今後、原子力が現在より大きな役割を果たして
いくとは考えにくく、原子力ルネッサンスが起こっているとは言えないことが
わかるでしょう。

後半ではドイツにおける脱原子力政策の説明が行われました。ドイツでは
2023年までに原子力発電所の閉鎖を完了し、2030年からは核廃棄物の
最終処分を行うとされています。この目標を実現させるには、再生可能エネル
ギーの導入拡大、送電インフラの高度化、エネルギー効率の改善、より一層の
技術革新が必要であると氏は述べていました。

最後に感想として、メッツ氏の発表は、最近にわかに注目されるようになった
原子力ルネッサンスと原発輸出を考える際の前提となる国際的な文脈について、
端的に事実を示したものでありました。事実を示されて目から鱗が落ちる思い
をするという事は、普段、私がどれだけ無知であるかを思い知らされると同時
に、何が知らされていないかを知るための非常によい機会となったと思います。
メッツ氏の発表資料について、是非、多くの方々に目を通してもらいたいと思
います。

資料はこちら
http://www.isep.or.jp/event/101123entakukaigi/101123Mez.pdf

                    矢嶋孝裕(ISEPインターン)


(3)「原子力政策シンポジウム」全体ディスカッションから見える今後の議論
                  文責:氏家芙由子(ISEP研究員)

11月23日に開催された「原子力政策シンポジウム」では、S.トーマス氏、
L.メッツ氏に、円卓会議世話人のISEP飯田所長、東工大澤田氏、東大長崎
氏、九州大吉岡氏を交えてディスカッションが行われた。これまで一般に、原
子力についての議論は、放射能汚染や事故のリスクなど安全性の問題が多くを
占めてきたと思う。近年、エネルギー源の中での位置付けや経済性の議論も注
目されているが、この日は核拡散や国際政治へも議論が及び、この技術が核物
質を扱うゆえに不可欠な視点についても再確認させられた。

ディスカッションでは、論点を様々に出し、さらに各論点に様々な見方がある
ことを提示することが目指された。大きく分けると、1)エネルギー源として
の原子力の位置付け・経済性の問題、2)原子力が現実に直面している問題、
3)新興国・途上国による原子力への関心の高まり、4)核不拡散、以上の論
点が提示された。

1) に関しては、吉岡氏が「立地支援や損害賠償法等、政府による保証・下支
えをどうやってやめさせていくかという具体的な政策提案を行い、その上で電
力会社に自主選択させるというふつうの路線に戻すべき」との持論を述べた。
トーマス氏は、遅延とコスト上昇を繰り返しているフィンランドのオルキルオ
ト原発の問題点や原子力の経済性の問題等を詳細に説明した。

2) に関しては、「六ヶ所再処理工場や、もんじゅ、柏崎刈羽の運転開始など、
現に直面している問題の本当の要因はどういうところにあるのか」という問題
提起に、「ガバナンスの問題」「技術の劣化や継承が不十分」などと様々に意見
が出された。

3) は、最も議論に時間が割かれた。澤田氏は、「ルネサンスとは関係ないとこ
ろで経済的に買えないはずだが途上国が原発導入に関心を持っている、それを
どう説明できるか」と問題提起した。スティーブ氏は、「新規原発導入国はより
リーズナブルな価格で提供すると思われる中露韓から導入しようとする。それ
らは欧米で建設される原発よりも安全レベルが低くなるだろう」と懸念を示し
た。

4) については、「核兵器は民生用プログラムから広まっていった」というコメ
ントに、「歴史上核を非保有国が独自に核開発したのは米国のみで、ほぼ核保有
国の技術移転なりがないと開発できない」「技術は民生用軍事用と垣根がないが
人間の意思がないと開発できない」などと応答があった。また、「原爆を落とさ
れた日本がなぜその後数年のうちに原子力開発を始めたのかという意味を考え
るべき」という意見には、フロアから「第五福竜丸事件で史上最大の国民が反
核運動に立ち上がったときに、米国によるプロパガンダがあった」などとコメ
ントがあった。

ディスカッションの最後は、「今日は従来なかったフォーメーション。今後は、
未来世代を含めた多様なステークホルダーにも参加を求め、リアルな問題をも
う一歩進めていくため、立場は違うが議論を交わしていきたい」と円卓会議世
話人より締めくくられた。

今回は多く議題に上らなかったが、気候変動問題への対策の中での原子力の位
置付けや、どの国も頭を悩ませているという高レベル放射性廃棄物処分の問題
も重要である。これら原子力利用に伴うすべての関わり合いを明らかにした上
で、当然のことだが、原子力のエネルギー利用は私たちのためになるのかとい
うことを大局的見地から検討し、選択をしていくべきだ。

昨年12月から原子力委員会で始まった原子力政策大綱新策定会議は、第2回
会合を終えた。今後本格化する約1年間の審議とともに、建設的な議論を行っ
ていきたい。

                      氏家芙由子(ISEP研究員)
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