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3.連載:あおもりエネルギー紀行(15)「最悪の事態」
                   森 治文(朝日新聞青森総局次長)

 とんでもないことになった。
 今も現在進行系の東日本大震災、そして福島第一原発の事故である。
 マグニチュード9.0という日本でかつてないような地震に見舞われ、その
直後、これまた未曾有の大津波に襲われ、突然、その命を奪われた多数の方々
の無念さはいかばかりだったろう。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。さら
には残された家族、一家の大黒柱や最愛の妻、両親、そして幼い命を失った人
たちのことを考えると、胸が張り裂ける思いだ。この先、どうやって生きてい
けばいいのかと絶望しそうになっているかもしれないが、どうか希望を捨てな
いで前を向くよう、何の手助けもできていない者としては祈るしかない。

 宮城、福島、岩手3県の惨状とは比べものにはならないが、青森も県内第2
の都市、八戸市を中心に被害が出た。3人の方が亡くなり、1人が行方不明の
ままだ。犠牲者が最小限に食い止められたのは、震源が南寄りで津波が他の地
域ほど陸地の奥まで到達しなかったことが大きい。しかし、海岸部にある港や
工業地帯は壊滅的な打撃を受け、数百人の避難者が出た。

 原発関連施設が並ぶ下北半島は幸いなことに震度4、津波もさほど大きくな
かった。さらに東通村の東北電力東通原発は定期点検中だった。六ヶ所村の再
処理工場は地震直後、外部から電気を取り込めなくなり、使用済み核燃料貯蔵
施設の冷却用ポンプを動かす非常用ディーゼル発電機に切り替えたが、その1
台の燃料供給システムにトラブルが発生。その後、復旧した外部電源に戻した。
福島第一原発4号機のような、使用済み核燃料の温度上昇はないという。それ
にしても非常用発電機が故障するのは、福島第一原発を連想させ、気持ちのよ
いものではない。

 福島第一原発は予断を許さない。「想定外のこと」が起きたという、津波のせ
いにするような言い訳が許されないのは当然だろう。日本国中、いや世界中を
不安に陥れ、特に地震と津波の被害の上に、さらに避難や屋内待避を命じられ
た二重苦の人々のことを考えれば、東京電力の企業責任は過去の公害企業をは
るかに超えて重いと思う。被爆の危険性を省みず、現場で必死に戦っている人
には敬意を表したいが、その後方で、記者会見にも今のところ1回しか顔を見
せないトップを始めとするエリート集団が、とにかく事故を小さいもののよう
に見せようとしたいとしか思えない発表に終始しているのは見苦しい。次から
次へと起きる事態に、「そんなこと聞いてないよ」と、国民が目を丸くしている
様子など眼中にないようだ。情報を小出しにするばかりで、今後、どんな大惨
事になるか分からないのに、その可能性に触れないのは明らかに責任逃れであ
る。

 原発を手なずけることに失敗した東電が実は、震災後も着々と新しい原発建
設を進めていた。

 前回の本欄でも触れた東京電力東通原発だ。昨年暮れに設置許可が下り、今
年から港湾部分などの工事に着手したが、津波警報や注意報が出されたため、
いったん中断していた。ところが、福島第一原発で事故が発生したのにもかか
わらず、津波注意報が解けると、この14日から再び、造成工事を再開したの
である。

 17日、弊紙青森県版でそう報じたところ、東京電力が急きょ、4月からの
本格工事を当面見送ると表明した。

 この原発、近くにある活断層をめぐって安全審査が長引いたという代物だ。
地震が引き金になった今回の事故をきっかけに、今は原発の耐震性が改めて問
われるかもしれない状況だ。その最中にあって、本格工事を見送るとはいえ、
原発事故のさなかに再開した造成工事はまだ進めるというのである。つまり、
本格工事までの地ならしはしておきたいというのだ。その神経が疑われる。

 一般の企業、特にメーカーに置き換えて考えてみる。「電気」という商品を作
る工場が大爆発を起こした。付近の住民に生命の危険にさらしたうえ、さらに
その事故は拡大の一途をたどる。壊れた工場は沸騰水型というタイプだ。それ
の改良型とはいえ、似たタイプの工場を今、作り続けるのは、どういう感覚な
のだろうか。地元の人々が沈黙しているから、福島のことなど関係ないと考え
たのだろうか。

 いわゆるメーカーなら、事後の検証も含めたすべてを終えるまで、建設は中
断すると思う。企業倫理が働くだろうし、何より、強引に工場建設を進めれば
顧客は不信感を募らせ、そんな企業の「電気」を買いたくないと言うに違いな
いからだ。ところが、電気は選べない。どんなことがあろうと、首都圏に住む
人たちの大多数は東京電力が作る電気を使うしかない。聞こえが悪いが、どん
な事故や不祥事を起こしても「安泰」なのが、電力業界なのだと改めて感じ入
る。

 事故をもうこれ以上拡大させない必死の努力とともに、もっと国民に説明を。
そして、すべてをさらけ出し、審判を仰ぐべきだ。青森でいえば、東通原発は
もう1度、白紙に戻して本当に建てるべきか、お伺いを立てなくてはならない。
国民は憤っている。その声に素直に耳を傾けてもらいたい。

                  森 治文(朝日新聞青森総局次長)
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