上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2.連載「光と風と樹々と」(29)袋小路の温暖化対策──国内編
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員) 

・菅政権の断末魔

 民主党の菅内閣が暗礁に乗り上げている。ねじれ国会と20%を下回る低い
内閣支持率のもとで、新年度予算案成立の目途が経っていない。4月の統一地
方選では民主党系候補の惨敗が予想されている。民主党批判の急先鋒だった与
謝野馨(政治家や歴史上の人物などについては敬称略、以下同様)の経済財政
政策担当大臣への起用、社民党へのすり寄りといい、マニフェストからのなし
崩し的な後退といい、もう「なり振り構わず」「政権にしがみつく」という格
好だ。
 解散権を行使すれば、民主党は歴史的大敗を喫し、政権からずり落ちるだろ
うから、解散もできない。統一地方選前に内閣を総辞職して、首相を交代させ
て、目先を変えてみるしか道は残されていないのではないか。それは、
2006年の参院選敗北後に自民党の安倍・福田・麻生の3政権が辿ったとま
さしく同様の末路であり、断末魔である。

・温暖化対策もまた袋小路に

打つ手なしの袋小路に陥っているのは、菅政権だけではない。国内外の温暖
化対策もまた同様である(国際的な温暖化対策については次回に述べたい)。
予算案の年度内成立、国会運営の見通しも立たないなかで、国内的には、遺憾
ながら「温暖化対策どころではない」という状況である。25%削減をアドバ
ルーンにした鳩山前首相に比べて、菅首相は、個人的にも温暖化対策にほとん
ど興味がないのではないか、と環境省サイドでもささやかれている。
1年前の2010年3月には、温暖化対策基本法の国会上程・成立というロ
ードマップが描けていたが、予算案成立でさえ危ぶまれる現状では、温暖化対
策基本法も画餅のようなものである。こういう状況の中で、産業界や経済産業
省サイドからの圧力に屈する形で、2010年12月の「排出量取引制度」の
導入先送り決定に代表されるように、政策の後退が相次いでいる(明日香寿川
「崩壊する日本の温暖化対策」『世界』2011年3月号参照)。1990年
比25%削減の中期目標に代表される積極的な温暖化対策は、政権交代による
「新しい政治」の代表的なシンボルとして、一時は輝いてみえたが、政権自身
によってたちまち泥を塗られ、いつのまにか実質的に旗を降ろしてしまった感
がある。

・政策評価なき権力の暴力──「事業仕分け」「再仕分け」の問題性

 「事業仕分け」「再仕分け」という名の半ば暴力的・権力的な政治ショーでも、
「費用対効果だ」「実質的な削減効果だ」という性急で乱暴な大声のもとで、と
くに地域レベルでの温暖化政策は標的の一つとなり、圧殺されかかった。京都
会議の翌年、1998年に、日本は各国に先駆けて「地球温暖化対策推進法(以
下、温対法と略記)」を制定した。この法律では、各都道府県は、地域地球温暖
化対策推進センター(以下、地域センターと略記)を設置してよいことになっ
ており、2010年までに県レベルでの地域センターがようやく全都道府県に
そろった。北海道、宮城県、埼玉県、神奈川県、静岡県、長野県、京都府、大
阪府、兵庫県、広島県、福岡県、沖縄県などのセンターは、設立も比較的早く、
きわめて積極的に活動している。他の地域センターも、都道府県、市町村レベ
ルでの温暖化対策の着実な足場となってきた。2009年度からは、政令市や
中核市でも、市レベルでのセンターを設立することができるようになり、浜松
市、長野市、熊谷市など、熱心な市を皮切りに、市レベルのセンターができは
じめている。
 温対法のもとに、全国には約7400人の地球温暖化防止活動推進員という
ボランティアが存在する。地域センターが研修を行い、育成してきた人材であ
る。約6割が男性で、定年前後の年齢層の人が多い。
 地域センターの連絡調整にあたる組織として、全国地球温暖化防止活動推進
センター(JCCCA、以下、全国センターと略記)がある。これらは、いず
れも温対法にその役割や権限などが規定された法律上の存在である。しかしな
がら、「事業仕分け」「政治主導」の名のもとに、温対法をあたかも無視するか
のように、地域センターや全国センター、推進員に関する環境省の予算は「廃
止」を宣告され、昨年11月の「再仕分け」でも、冷ややかな扱いを受けるこ
とになった。
 「事業仕分け」は本来、まず予算削減ありきではなく、政策評価を前提に行
われるべきものだろう。地域レベルでのこれまでの温暖化政策がどの程度効果
をあげ、どのような課題と問題点を抱えているのか、このような検証がまず必
要である。にもかかわらず、環境省の担当課からの短時間のヒアリングのみで、
基本的には仕分け人の「印象論」で、地域レベルでの温暖化対策関連予算は「廃
止」を宣告され、昨年秋の「再仕分け」でも、前年の仕分け結果の妥当性の検
証プロセスもないままに、事業仕分けどおりに予算が配分されているかどうか
だけがチェックされた。
 マニフェストがなし崩し的に後退する一方で、政治主導とメディアが喧伝し
た「事業仕分け」の名のもとに、こういう乱暴な権力行使がまかりとおってい
る。残念ながら、これが政権交代の実像である。私自身、宮城県センターの運
営委員長を務め、全国センターの受け皿として、事業仕分けの批判をのりこえ
るべく昨年8月に新しく組織化された「一般社団法人 地球温暖化防止全国ネ
ット」の理事長として、この問題の渦中の当事者の1人として対応を余儀なく
されてきたが、文字どおり民主党に振り回され続けてきたこの1年半だったと
いえる。政治家が「権力」をもつということの実体を垣間見た思いがする。

*一般社団法人 地球温暖化防止全国ネット
http://www.jccca.org/about/about02.html

・次は有権者が「仕分け」る番だ

 昨年の参院選もそうだったが、4月の統一地方選も、来るべき総選挙も、現
政権党への有権者からの「仕分け」である。十分なデータも事前の準備もなか
った、政権担当能力なき政権は、「仕分け」られるしかあるまい。そこにしか、
日本の政治の再生の道はないだろう。総選挙後の新政権にも、醒めた視線しか
送りようがない気がするが……。
 日本の政治にも、温暖化政策にも、希望をどこに見出せばよいのか。

            長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://isepseenarchive.blog88.fc2.com/tb.php/484-3b3fadeb
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。