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3.青森エネルギー紀行(14)「トントゥビレッジ」
               森 治文(朝日新聞青森総局次長)

 すでにご存じの方も多いと思うが、青森県にまた1つ、原発ができる。東京
電力東通原子力発電所1号機である。改良型沸騰水型軽水炉で出力は138万
5千キロワットと国内でも最大級。1月25日に工事の認可が出て着工(実質
的な工事は雪がなくなって以降)、2017年の3月の運転開始を予定している。
ここにはさらに同じ規模の2号機を2014年度以降に建設する計画もある。
 東通村はまさかりの形をした下北半島のうち、刃と接する柄の部分にあたる。
その名が示すように下北半島へ向かう「東通り」で、南側に隣接するのが六ヶ
所村。東通村ではすでに東京電力の敷地から隣接した南側に東北電力の東通原
発が2005年から稼働しており、こちらも1号機のみで2号機は予定だけだ
が、異なる電力会社の原発がこれだけ近くに位置しているのはほかに聞いたこ
とがない。両社は村内に設けた原発PR施設も共同運営する。その名は村名を
音読みして「トントゥビレッジ」と言う。
 今回の着工は、東京電力の原発としては33年ぶりという。村の議会が原発
誘致を決議したのが1965年。その5年後、東京電力、東北電力は原発の共
同開発を発表した。それ以来半世紀近くを要した。
 高度成長時代を終えて電力需要は伸び悩み、ましてや東京電力にとっての供
給地からは最も遠い立地条件。そしてそこにふってわいたのが、2006年の
設置許可申請後に近くで見つかった活断層の存在だった。その安全審査の結果、
国は「原発の耐震安全性に問題ない」との結論を出したが、当初の2004年
度運転開始との計画から13年遅れることになった。
 ようやく設置許可が出た昨年12月24日、越善靖夫村長は「安全審査に長
期間を要したことによる村への影響は計り知れない」と、しびれを切らしたか
のような不満を漏らした。
 いらだちの背景は「カネ」だろう。原発で生きていくと決めた村は、先に稼
働した東北電力原発の固定資産税収入が約43億円もあった2006年度から
普通交付税の不交付団体となったが、減価償却が進み、それが25億円まで落
ち込んだ2010年度から交付団体に転落。今後、東京電力1号機、東北電力
2号機、東京電力2号機と計画が進まないと、財源が確保できないという危機
感がそう言わせたのだろう。
 昨年、秋晴れの一日に人口7千余人という村内をドライブした。面積300
平方キロメートルを南北に貫く国道をはじめ、ほとんどの道路がきれいに舗装
され、なだらかな丘陵地のアップダウンは実に快適だった。ただ、商店などは
ほとんど見えず、にぎわいを創出するような施設もなかった。原発をのぞけば、
牧畜業と漁業が主な産業という土地。その中にあって近代的な建物として目を
引いたのは、役場とその近くにある学校の真新しさだ。
 もともと、いくつも集落が集まって形成され、核となる場所がなかった村は
1988年まで役場を、どの集落からも比較的行きやすい隣のむつ市に置いて
いた。その後、道路が整備され、人工的に「中心地」が作られてきた経緯があ
る。だからなのか、役場も何となく周囲の風景に溶け込んでいない感じを受け
た。一方、近くの学校は村内に以前あった小学校、中学校をすべて統合した「1
村1小中学校」。遠くの児童・生徒は全員スクールバスで送り迎えし、校舎には
電気床暖房。これらの事業にかかったお金は電源立地地域対策交付金でまかな
われたという。
 村づくり、村に中心地を作ろうという意気込みは伝わってくる。そのお金の
ために、原発はなくてはならない、もっと作ってもらわなければという考えに
村が囚われていると感じる。だが、「安全審査に長期間を要したことの村への影
響は計り知れない」という発言は、安全審査を軽んじていると聞こえる。まる
で、日常の買い物で「多少の傷物でも良いから早く欲しい」と言っているよう
な「軽さ」だ。
 原発の是非論は別にしても、村民の安全に責任を負う村長の発言としてはい
ただけない。活断層のようなリスクが生じれば、そのリスク評価に時間をかけ
るのは当たり前。それよりも、なお「カネ」が大事なのだろうか。
 この村長、2007年には、原発のごみの最終処分地選定問題について、
(高レベル放射性)廃棄物は原発のある町村から出てくる。将来を考えれば、
議論を先送りするのはいかがなものか」として、こうした町村が「誘致の議論
をリードすべき」と報道機関に述べ、誘致に前向きとも取れる発言をしている。
 原発立地村としての責任を感じての言葉なのか、それともカネも絡むのか、
一度聞いてみたい気がする。

                   森 治文(朝日新聞青森総局次長)
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