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3.カンクン会議(COP16/CMP6)
                 :世界の趨勢に背を向けた日本の真意
               平田仁子(気候ネットワーク東京事務所長)

 昨年末のCOP16/CMP6では期待を上回る形で「カンクン合意」が成
立し、久々に明るい気持ちで帰国してみたら、「重要合意は先延ばし」であって、
「政府はよくやった」とする国内報道に直面し、感覚のズレに驚かされた。会
議後も政府は、京都議定書の第2約束期間に反対との方針を見直す気配はなく、
「地球益のために主張した」「日本の立場を守った」と居直っている。国内では、
「カンクン合意」で世界が一歩を踏み出した直後の年末の閣僚委員会で、国内
排出量取引制度の実質的な先延ばしや、再生可能エネルギー全量固定価格買取
制度の更なる後退を匂わせる、「温暖化政策マニフェスト見直し・後退宣言」を
した。世界の趨勢に逆らった、狭い利害に立つ愚鈍で内向きな政治が温暖化政
策を蝕んでいる。
 カンクン合意は、コペンハーゲンのマイナスからプラスへ国連プロセスを改
善させ、極めて重要なステップを踏んだ。国連が世界の気候変動を防ぐ枠組み
作りに動かなければ、この問題の解は出せない。この先にも険しい交渉が待っ
ているが、合意では、各国から政治的な歩み寄りを確かに引き出したし、中国
も自らの削減行動で一歩前に出た。立派な成果である。
 問題は次の今年末の南アフリカのダーバン会議(COP17/CMP7)だ。
アメリカ国内事情や中国の硬いポジションから、法的拘束力ある枠組み合意は
無理だと片付けるのは簡単だが、今繰り広げられるべき攻防は、それをあきら
めずにどう米中を引き込みながら国際合意を作るかだ。最終合意の中で、先進
国が京都議定書の第2約束期間の削減目標を設定することは、合意の核として
不可欠な要素だ。それなくして途上国が合意に乗る可能性がほとんどないとい
う国際情勢がある上、京都議定書を基礎にしなければ先進国の行動も緩む。日
本政府のように、当面は米中が法的拘束力を持ちそうにないから、京都議定書
の第2約束期間には反対だと否定し、一つの枠組みで行こうというのは、米中
がやらないから皆で法的拘束力のないアプローチに降りて行こうということと
同義であり、逆流だ。その結果起こるのは、温暖化対策の更なる遅れである。
NGOや各国政府から日本政府へ批判が集中したのは、その主張の本質に問題
があるからこそである。長年の交渉で日本の立場を知った上での批判だ。誤解
でも無理解でもない。
 日本の主張は、単純な「KY」でも、地球益を代弁する「正論」でもなく、
米中を口実にしながら、京都議定書の義務目標設定から自主的目標の宣誓方式
に戻すことを狙うものだということに帰結する。「温暖化対策は負担」だから強
化されたくないという国内の産業界を席巻する空気が、国際的に波及してしま
った結果なのである。
 2012年後に空白を空けないために、ダーバンに向け、京都議定書の行方
を決着させる議論が高まる。今年1年、日本がこのまま泥舟に乗って突き進む
沈没戦略を取り続けるとすれば、おろかというしかない。京都議定書の延長に
よって先進国だけが厳しい削減義務を課される仕組みが固定化されるという政
府主張は根拠のない詭弁でしかないし、日本だけが厳しい目標を課されて産業
空洞化や経済衰退を引き起こすという経団連の主張もとてつもない飛躍がある。
多くの国を敵に回しながら交渉を妨害することは外交戦略上も、得策ではない。
何より、ノーと言い続ければ気候変動が解決するというわけでもない。
 様々な情勢と、気候変動問題の解決の道筋を考えれば、米中が参加する枠組
みを作っていくために取れる手立ては様々に用意し、実質的な進展を図るべき
ことは明らかだ。いずれにせよ先進国として削減義務を負うことから避けられ
るはずがない。その前提に立ち、日本も他の先進国と同様に京都議定書の下で
次の目標に合意しつつ、米中を含む枠組みを作る「2トラック方式」がより近
道である。協調しながら次の一手を考えるべきだろう。
 方針を見直すための後押しとして、世界から追いつめられるというのは一つ
だが、外圧に屈する方法に寄らずとも、国内の議論・検討の中から、自ら方針
転換を図るべきだ。政府方針が誤った戦略であると指摘する声はNGOのみな
らず各界に存在する。ダーバンまでに今必要なことは、将来を見据えたビジョ
ンを語り合える多様な人がつながり、経団連・連合といった声ばかりではない、
見識ある議論を市民社会から巻き起こし、日本の温暖化対策の有り様を問い直
す機運を作っていくことではないだろうか。

               平田仁子(気候ネットワーク東京事務所長)
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