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4. 自然エネルギー金融セッション報告
古屋将太(Aalborg University, PhD student/ ISEP fellow)

今回の会議では、私は自然エネルギーの金融に関するセッションを中心に参加してきました。そこでの議論の概要を報告します。

2日目午前第3トラックで行われたファイナンス・セッション1「金融イノベーション:プロジェクト、ビジネス、技術」では、国連環境計画(UNEP)のエリック・アッシャー(Eric Usher)氏をモデレーターとして、「自然エネルギー金融イノベーションの最前線はどこにあるのか?そして、それはどのように資金調達されるのか?」「先発者(First mover)のコストと報酬はどのようなものか?」「イノベーションを支援する公的金融(Public finance)の役割はどのようなものか?」などの論点が議論されました。グローバルに自然エネルギー事業の金融を手がけている国際金融機関やアジア開発銀行、インド国内の案件を手がけてきた公的開発機関などが、これまでの経験や課題を共有するなかで以下のようなポイントが現れてきました。

- 世界の金融機関は明確に自然エネルギーを重要なセクターであると認識している
- この2~3年で公的金融機関の参入が増えており、重要な役割を果たしつつある
- 開発ステージ毎に質・量ともに異なる資金需要とリスクに各種金融機関はどのように応えるのか
- 国際金融機関やメガバンクがどのように地域金融機関の参入機会を創出できるのか
- 新しいビジネスモデルが求められており、そこには新しい金融モデルが密接に関連する
- 自然エネルギー金融は技術的、経済的側面だけでなく社会的側面(雇用や人材育成)を十分に考慮する必要がある

2日目午後第3トラックで行われたファイナンス・セッション3「スモールビジネスとエンドユーザーへの金融」では、国連財団(UN Foundation)のリチェンダ・ヴァン・リューウェン氏(Richenda Van Leeuwen)をモデレーターとして、「中小企業の自然エネルギービジネスにどのような金融が必要とされているのか?」「エンドユーザーにはどのような自然エネルギー金融が必要とされているのか?」などの論点について、主に途上国にフォーカスした議論が行われました。 特に農村における独立・分散型自然エネルギーの普及がカギとなるラテンアメリカやアジアでの経験や課題を共有するなかで以下のようなポイントが現れてきました。

- 途上国ではマイクロファイナンスを応用したソーラープログラムが成果を出しはじめている
- エンドユーザーの導入プログラムから、中小企業による一定規模のプロジェクトまで、マルチスケールでそれぞれのリスクに対応する金融オプションが必要とされている
- すでに技術は入手可能だが、金融機関の認識が「市場の存在」に追いついていない部分がある
- 公的金融機関のコミットメントによる「リスク共有の仕組み(Risk sharing mechanism)」は、地域金融機関参入の動機付けになる可能性がある
- 途上国ではCDM等のカーボンファイナンスが事業性を向上させるオプションになる可能性がある
- 個別の成功モデルを広く展開するためには、地域の技術者の育成だけでなく、モデルの経済的・社会的意味を翻訳し、他のアクターに伝える、金融機関の人材育成も必要となる

これらの金融関連のセッションに参加して得た印象は、途上国における自然エネルギー金融の加速です。特に開催国であるインドには農村や遠隔地における深刻なエネルギーアクセスの欠如ゆえに「いかにしてすでに入手可能な技術を素早く導入するか」という問題設定があり、政府による推進もあり、これに国際的な金融イニシアティブが連携するかたちで、ステークホルダーの生態系が形成されています。その中では現実にどのようなタイミングでどのようなリスクがあり、金融機関はそれにどのように対応するのかという学習が繰り返され、自然エネルギー金融の知識が分節化・蓄積されていきているという印象があります。

一方、途上国のようなエネルギーアクセス問題がない日本では、このような動機付けが働かず、また、政策的支援も十分ではないため、自然エネルギー金融の進化も生じていないように思われます。しかしながら、分散型で地域を単位とする自然エネルギーの特性を考えた場合、途上国で試行錯誤されている金融モデルから学び、日本の地域自然エネルギー導入へ応用を検討することは重要だと考えられます。この点に関しては、現在、ISEPを中心に進めている自然エネルギーの地域間連携モデル研究へと活かしていきたいと思います。

上記の金融セッションの他、マルチステークホルダー対話セッション等にも参加して感じたことは、特に人材育成面での日本の危うさでした。欧州をはじめとして、中国・インド・ブラジル等の新興国も含めて世界の自然エネルギー導入は圧倒的なスピードで進んでおり、それにともなって起業家や技術者の育成も進んでいて、今後も「さまざまな分野で人材育成が極めて重要である」ということが、あらゆるセッションで強調されていました。

この点に関して日本を振り返ってみると、自然エネルギーについて幅広くトレーニングを受ける場が国内に不足していると言わざるを得ず、今後30~50年という長期的な視点で考えた場合、これはかなり危ういのではないかと思いました。それでも、所長から借りた『ウェブで学ぶ - オープンエデュケーションと知の革命』(梅田望夫/飯吉透, ちくま新書)を帰りの航空機内で読み、「意志ある個人がインターネットで自ら自然エネルギーについて学び、地域でイニシアティブを発揮する可能性もあるのかな」とも思いました。
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