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1.風発:よくわかる自然エネルギー(4)
                       飯田哲也(ISEP所長)

・政策の仕組み-固定価格制度の展開

 現在、政府が自然エネルギーの「全量買取制度」を検討しているが、その起
源は1978年にアメリカで公布された「自然エネルギー買取法」だ。
 特にカリフォルニア州で手厚い減税と高い買取価格が定められ、80年代に
同州だけで風車建設ラッシュが起きた。
 欧州では、84年にデンマークで風力協同組合と電力会社、政府が電力購入
の「3者合意」を結び、その後のひな型となった。これがドイツに渡って、今
日の固定価格制度の原型となる「電力供給法」が90年に成立した。
 自然エネルギーを電気料金の90%の価格で買うという制度により、風力発
電の本格的な普及が始まった。その後、この政策はデンマーク、スペインへと
「輸出」されていった。
 片や英国では、90年に自然エネルギーを競争入札で競わせる政策を導入。
2000年に見直したが、いずれも十分な普及効果が得られなかった。
 その後、電力供給法には2つの重大な課題が生じた。一律価格のため、風の
強い地域に集中して風力発電が伸びたものの、太陽光発電など、ほかの自然エ
ネルギーや、ほかの地域では普及が進まず、風力発電が集中した地域の電力会
社に負担が大きくなったことだ。
 1995年にドイツのアーヘン市が電気料金に地方税を上乗せし、それで太
陽光発電を電気料金の10倍で買うという制度を導入。瞬く間にドイツ中の都
市に広がった。ちょうど98年に成立した新政権が、これを参考に法改正を行
い、国民が平等負担するように見直して、今日の「自然エネルギー促進法」
(2000年)となった。
 こうして自然エネルギーを普及させる「政策の仕組み」が世界中に広がり、
発展していったが、日本は取り残され、「補助金」頼みが続いてきたのだ。

・費用負担とコスト-将来への投資の責任

 現在、政府が自然エネルギーの固定買取制度を検討している。その中で、平
均的な家庭で月に100~500円と試算されている、消費者の費用負担が議
論になっている。また、重工業など電力の大需要家も費用負担への懸念を訴え
ている。
 確かに、社会全体による負担は公平である必要があり、負担が過大となって
は困る。しかし、何と比べて「公平」「過大」なのか、立ち止まって考える必要
があるだろう。自然エネルギーの負担だけを見ると、問題の本質を見失ってし
まう。
 原油価格が高騰した2008年には、電気料金がいきなり500円も上乗せ
された。その年、日本は化石燃料を23兆円も輸入している。
 国内総生産(GDP)の5%もの国富(国全体の富)を、ただ海外に支払っ
ただけで、国内のエネルギー設備の形成には何の役にも立っていない。こうし
た費用負担とも公平に比較する必要がある。
 自然エネルギーの特性を、少し長い時間軸で考えてみる必要もある。小規模
分散型技術である自然エネルギーは、パソコンや携帯電話などと同じように、
「作れば作るほど性能が上がり、安くなる」という技術的特長を持っている。
 中でも風力発電は、すでに従来の化石燃料発電よりも安くなっている国や事
例が生まれつつある。高コストとされる太陽光発電も、年5割を超える急速な
市場拡大で一気にコストが下がりつつあり、数年で電気料金よりも安くなると
予想されている。
 つまり長い目で見ると、自然エネルギーのための費用負担はどんどん小さく
なり、やがては不要となる上、化石燃料の輸入も削減することができる。しか
も化石燃料は、今後も高騰や乱高下の不安があるのだ。
 そして汚染者負担原則も忘れてはならない。私たち電気の消費者は同時に地
球温暖化などの責任も負っており、将来に向けた投資をする責任があるのだ。

・新産業の興隆-存在感なく出遅れている日本

 100年前、T型フォードの第1号が世に送り出された。これがその後、「ビ
ッグ3」に代表される自動車産業として急成長した。
 これに歩調を合わせたのが石油産業。競合する鉄道会社を買収し破綻させて
まで、成長したことが知られている。こうして20世紀は、自動車と石油の世
紀となった。
 その自動車産業の象徴であるビッグ3は、2009年にいずれも事実上の倒
産となった。石油も、地球温暖化への対応に加えて、「ピークオイル」(=石油
生産が近年ピークを迎え、減少していくこと)への懸念などから、本格的な「脱
石油」の時代を迎えている。
 こうした世紀単位で産業が盛衰しつつある今日、自然エネルギー産業が興隆
している。すでに何度か触れた通り、自然エネルギー市場は年率60%の勢い
で成長しており、今や世界で15兆円市場に達し、10年後には100兆円市
場を伺う勢いである。
 その中で、自然エネルギー企業も急成長している。多くは10年以内に起業
した自然エネルギー・ベンチャーで、今や時価総額で1兆円を超える企業が4
社(09年5月時点)、1000億円超ではさらに10社以上に及ぶ。
 こうした企業の多くは、自然エネルギー先進国のドイツはもちろん、スペイ
ン、ノルウェー、ポルトガル、そして中国、米国、インド、台湾と多様な新興
国にも広がっている。まさに現代のグリーン産業革命の恩恵にあずかろうと、
世界中が自然エネルギー産業の創出を競っている。
 ところが日本は、太陽光発電を輸出する一部の大企業を除いては、ここでも
ほとんど存在感が無く、大きく出遅れている。かつてのホンダやソニーのよう
に、未来を見据えて世界市場に打って出る、21世紀の社会起業家の登場を期
待したい。

「聖教新聞」2010年6月7日、6月21日号、7月5日号掲載

                       飯田哲也(ISEP所長)
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