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5.デンマーク・オールボーから(3):オールボー歴史博物館
       古屋将太(Aalborg University, PhD student/ISEP fellow)

私がデンマークでの生活をはじめて3年目になりますが、ときどき日本からオ
ールボー大学へ視察に来る方から連絡をいただき、博士課程の学生の視点から
のお話をする機会があります。先日も三重大学の先生がオールボー型PBL
(Problem and Project Based Learning)の研修で来訪され、街角のカフェで
巨大なサンドイッチを食べながらデンマークと日本の高等教育の違いや共通す
る課題などをお話しました。その後、街の中心部を案内した際に「オールボー
歴史博物館(Aalborg Historical Museum)」を訪れ、オールボー在住3年目に
して街の歴史的背景を知ることとなりました。

オールボー歴史博物館は、街の中央広場から徒歩3分ほどの場所に位置し、
1863年に設立された後、所蔵品の増加に伴って1878年に現在の建物へ
と拡張されています。当日は、1階でグリーンランドに関する特別展示がおこ
なわれており、オールボーからグリーンランドに輸送される生活雑貨や工業製
品、グリーンランドの手芸品などが展示されていました。解説はすべてデンマ
ーク語だったので詳細まではわかりませんでしたが、実物の白クマの剥製は迫
力がありました。2階にはオールボーの街の歴史に関するさまざまな資料が常
設展示されています。その中でも博物館の中心的な展示物である「オールボー・
ルーム(Aalborg Room)」と「C.W.オーベル・タバコ工場(C.W.Obel Tobacco
Factory)」が印象的でした。

「オールボー・ルーム」は、17世紀に商人によって建てられた建物の一室を
保存したもので、精巧な彫刻が施された木製パネルで天井を含む全面が覆われ
ており、当時の雰囲気を体験することができます。資料によると、1602年
に商人ニールス・クリステンセンが家を建てた際に作られた一室で、彼の死後、
1866年にオールボー通商ギルドが新たに建てた家屋の屋根裏に移設された
後、1897年に現在の博物館の展示へと移設されました。この部屋では商人
が取引をおこなったり、職人がワークショップをおこなったりするなど、ビジ
ネス目的で使われていたとのことです。

「C.W.オーベル・タバコ工場」は、1966年に閉鎖されたオールボー市
内のタバコ製造工場で、博物館の展示では同工場が所蔵していた1万4000
点以上のタバコ・コレクションのほか、巻きタバコ製造の作業台や従業員のマ
ネキンなど、当時のタバコ製造の様子が再現されています。資料によると、同
工場は1787年に噛みタバコ、嗅ぎタバコ、パイプタバコなどの製造を開始
し、北ヨーロッパ最大のタバコ工場となり、当時オールボーでももっとも大き
な産業であったそうです。同工場は、1000人以上の非熟練労働者、特に女
性を多く雇用し、彼女たちには市内でもっとも高い賃金が支払われていたとの
ことで、「陽気なオーベルガールズ(Merry Obel girls)」が街を活気づけてい
たようです。しかし、1961年に同工場がスカンジナビア・タバコ会社
(Scandinavian Tabacco Compnay)に吸収合併されたことと軌を同じくして生
産の合理化が進み、彼女たちの職場は機械に取って代わられてしまいました。
その後、同工場建物の一部はIT企業のオフィスとして使われていたり、オール
ボー大学の講義棟として使われていたり、スーパーマーケットの店舗として使
われています。

こうして街の歴史的背景をさかのぼってみると、オールボーという都市が商人
の交易都市から、活気ある産業都市へと変容し、それも衰退に向かっていった
という大きな流れが見えます。こうした都市の歴史博物館というのは、単なる
出来事の歴史ではなく、そこに生きた人々の様子を知ることができるという点
で非常に興味深いと思います。ちなみに、タバコ工場を引き継いだSonofonと
いうIT企業は、昨年ノルウェーのtelenorというIT企業の傘下に編入され
ており、グローバル化のもと、オールボーの都市産業の変容は現在も進行して
います。

       古屋将太(Aalborg University, PhD student/ISEP fellow)
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