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1.風発:よくわかる自然エネルギー(3)
                       飯田哲也(ISEP所長)

・自然エネルギーの新興大陸

 自然エネルギーを巡る地殻変動がおきている。いわゆる新興大国が、自然エ
ネルギーの市場と産業と金融と国際政治をリードしていることだ。もはや従来
の先進国・途上国という二分法で軽んじることはできず、むしろ日本は大幅な
後れを取っている。
 昨年、世界でもっとも風力発電が増えたのは中国だ。前年までの累積設置量
の倍となる1300万kWが1年で増えた。いまや累積でもアメリカに肉薄す
る世界2位となった。太陽光発電でも、昨年、世界で1000万kWを越えた
生産量の4割を中国が占めた。中国は、これだけの成果を、わずか5年で成し
遂げたのである。2005年に、世界自然エネルギー国際会議を招致し、そこ
で「自然エネルギー促進法」の導入を宣言したことがすべての始まりだ。
 ブラジルは、1970年代の石油危機以来、豊富なサトウキビ生産を活用し
たアルコール燃料を普及させてきたが、2002年にどのようなアルコール濃
度の燃料でも走らせることのできるフレックス燃料自動車が開発されてから、
普及に拍車がかかった。今や、アメリカと並ぶ「バイオ燃料大国」だ。アメリ
カのバイオ燃料がトウモロコシ原料が主体で、食糧生産との対立や二酸化炭素
削減効果に疑問があるのに対して、ブラジルのバイオ燃料はいずれも問題がな
いことが立証されている。
 そしてインドは、1990年代から風力発電の普及に力を入れてきたが、
2006年には自然エネルギー省を設置し、風力発電の普及で中国に次ぐ勢い
だ。
 さらに、いずれの新興大国でも、グローバルなベンチャー資金や公開株式市
場からの資金調達を受けながら、グローバル新興企業が次々に誕生し、成長し
ていることも見逃せない。中国のサンテックパワー(太陽光)、ブラジルのペト
ロブラス(バイオ燃料)、インドのスズロン(風力発電)などが代表例だ。毎年
数十パーセントもの成長を遂げている自然エネルギー市場は、昨年はまだ12
兆円に過ぎないが、10年後には100兆円を越えるとさえ言われている。
 日本の存在感が霞みつつあるのは、中国のGDPが日本を追い越すという「金
額面」だけでなく、こうした新興大陸が21世紀産業の創出で市場や産業におけ
る存在感と国際政治的なリーダーシップを発揮しているという事実にこそ由来
するのではないか。

・世界から立ち遅れる日本

 日本は、エネルギー自給率がわずかに4%ときわめて脆弱な国だ。温室効果
ガスも1990年比で9%増(2007年)で、京都議定書で約束した6%削
減を大幅に超過している。原子力発電は、全般に老朽化が進む中で、相次ぐ事
故・トラブルなどで稼働が低迷する一方、社会的合意が不十分なため、新増設
も思うように進んでない。
 そうした日本にとって自然エネルギーはもっとも重視されるべきエネルギー
であるにも拘わらず、世界でわずかに1%以下の市場規模という状況に過ぎな
い。個別に見ても、唯一世界をリードしていた太陽光市場も、ちょうど欧州や
アメリカなどで爆発的な市場拡大が始まった2005年に、日本では逆に補助
金を打ち切った結果、それ以降、日本は唯一、市場が縮小する国となった。風
力発電は、電力会社が安定供給を心配するあまり、事実上、風力発電を締め出
してきた結果、市場が低迷を続け縮小の一途を辿っている。バイオマス、地熱、
小水力など、その他のエネルギーも大同小異だ。
 さらに閣議決定された温暖化対策基本法案でも、民主党がマニフェストで掲
げた「自然エネルギーを2020年に10%」という目標を盛り込むに際して、
既存の大規模水力発電や未利用熱などを自然エネルギーの定義に加えることで、
「正味の増分目標」を切り下げる姑息な操作が官僚の手で行われたのである。
 自然エネルギーは、温暖化対策としてもエネルギー対策としても中心的な役
割を果たすことが明らかになっているばかりか、21世紀に出現した新成長産
業であり、地域分権的な活性化にも貢献するものだ。小規模分散型であること
が既存のエネルギー産業を脅かし、地域分権であることが中央のエネルギー政
策権益を脅かすが故に、そうした国益に反するサボタージュが行われたのであ
る。
 こうした日本の状況を打開するには、「自然エネルギー革命」の本質を見据え
た、真の政治主導が必要であろう。

・自然エネルギーの「第4の波」

 自然エネルギーが今日の隆盛に至るまで、ほぼ10年単位で4つの時期に分
かれる。
 まず1970年代の石油危機とそれに続く政府や電力会社による原発推進に
反対して、環境保護運動が自然エネルギーを求めた時代だ。ソフトエネルギー
やスモール・イズ・ビューティフルなど今日に繋がる基本的な考えが生まれた
時代だが、この時点では「ユートピア技術」に留まっていた。
 次に、第2次石油危機や米国での原発事故を経た1980年代。政府が代替
エネルギーとして本腰を入れ、北欧やカリフォルニア州で成功モデルも生まれ
たが、原油価格の低落で多くの国で努力が途絶えた。
 地球温暖化問題が本格化した1990年代に入って、欧州で「政策の仕組み
で普及する」という考えが広がる中で、ドイツの固定価格制の成功例が出現し
た。
 そして2000年代は「本流化の時代」だ。2002年のヨハネスブルグサ
ミットでは、世界全体の自然エネルギー拡大目標で決裂した。これで逆にドイ
ツ政府が「自然エネルギー2004」を主催し、世界的な政治気運を巻き起こ
した。ドイツ発の固定価格制が世界に広がり、自然エネルギーが爆発的に普及
するなか、温暖化対策のみならず、エネルギー対策、そして産業・雇用・地域
政策としても期待されるようになった。
 2008年の経済危機に対して、自然エネルギーを軸とするグリーン・ニュ
ーディールが世界中を席巻し、今や新しい産業経済の軸となっている。
 日本では、太陽光発電メーカーを除けば、本流化にはまだ遠い。これは、自
然エネルギーが「四面楚歌」に置かれているからだ。経済的な政策支援が乏し
く、電力会社による導入制約が厳しく、硬直的な縦割り規制の狭間に陥り、そ
して不十分な社会的合意という、「四面楚歌」をどのように解消してゆけるのか。
 日本で自然エネルギーが本流化するまでに、越えるべき課題は少なくない。

「聖教新聞」2010年4月19日号、5月10日号、5月24日号掲載

                       飯田哲也(ISEP所長)
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