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1.『原子力政策円卓会議2010』の発足と問いかけ
                       飯田哲也(ISEP所長)

 環境エネルギー政策研究所では、昨年来から「原子力政策円卓会議2010」
(以下、円卓会議)の準備を進めてきており、この5月からは実際に円卓会議
としての会合を重ねてきた。このたび原子力委員会に飯田自身が招へいされ、
その場で、同円卓会議の名の下に「原子力政策大綱の見直しをすべし」との提
言を行った。
 本稿では、円卓会議の背景や想い、問いかけた内容について、簡単に報告す
る。

■円卓会議の背景
 1年前の政権交代で民主党を中心とする政権が発足し、鳩山首相(当時)が
国連の場で「90年比25%削減」を国際公約し、自然エネルギーでも「全量
買取制度」をマニフェストで掲げるなど、環境エネルギー政策が大きく転換す
るかと思えた。
 ところが原子力政策については、現政権のマニフェストでははっきりとした
見直しの方向も論点もなかったにも関わらず、アラブ首長国連邦(UAE)へ
の原発輸出を巡って韓国に敗れた2010年初あたりから、タガが外れたよう
な前のめりの推進姿勢へと代わった。
 ところが足元を見ると、日本の原子力は問題山積みである。六ヶ所再処理工
場のトラブルに次ぐトラブルは言うまでもなく、なし崩しに進むプルサーマル
と核燃料サイクル、まったく進展しない高レベル廃棄物処分、中越沖地震の直
撃を受けた柏崎刈羽原発の再起動問題や耐震基準見直しとそのバックチェック、
そして既存の原発の低迷する稼働率などだ。原発輸出にしても、各種リスクが
ほとんど検証されたフシはなく、そもそもおよそ現実性がない。
 日本の原子力政策が、こうした状況に陥っているのは、ひと言でいえば、旧
式の「二項対立」に陥ったまま、現実の問題が、事実に基づく合理的・論理的
な議論が開かれたかたちで行われてこなかったからではないか。いわゆる「両
極からのシャドーボクシング」が続いてきたからだ。
 すでに冷戦が終わって20年が経過し、インターネット革命とさまざまなグ
ローバル化が進む中、原子力推進・反対という軸だけで割り切れない多様な考
えを持つ人が広がってきている。リスク社会という認識からは、原子力は重大
な「サブ政治」の一つであり、今日あるべき開かれた参加型デモクラシー社会
においては、当然、熟議を要するものだ。
 こうした問題意識から、円卓会議では、「旧い二項対立」に留まっているよう
に見える日本の原子力政策の議論を解凍し、一歩でも前に進めるために、政策
の合意ではなく、まずは問題の共有を意図して、呼びかけたものだ。

■円卓会議の狙い
 かつて1994年(平成2年)に、政府も市民サイドもそれぞれのイニシア
チブで「原子力政策円卓会議」を開催し、いずれもが多少なりとも開かれた議
論をする契機となった。市民サイドの活動は、当時、「対立から対話へ」を標榜
するNPO「市民フォーラム2001」で、エネルギー研究会の世話人であっ
た飯田自身が発案者・発起人となって、「市民によるエネルギー円卓会議」を開
催した。この市民円卓会議には、国の官僚も審議会委員も東京電力も反原発団
体や環境NGOも集まり、「対立する原子力を議論せず、エネルギー政策に関して
『合意』できるところを探す」という方針で開催した。今から思えば素朴だが、
対話できたことと、合意できたことで、参加者全員がある種の興奮に包まれて
いたことを覚えている。
 今回の円卓会議では、まず世話人でバランスを取るように気をつけて、消極
派の飯田と吉岡斉九州大学教授だけでなく、原子力に関わっている澤田哲生東
工大准教授と長崎晋也東京大学教授という顔ぶれで、各方面の参加者に呼びか
けていった。
 その結果、年齢層は30代から60代の幅で、政治家、中央政府官僚、研究
者(大学、研究機関)、NPO(環境系、脱原子力系)メンバー、弁護士、会社
経営者、地方政治家、地方行政官、シンクタンク研究員、作家、アーティスト、
ジャーナリストなど約30名に参加してもらうことができた。
 円卓会議では、原子力政策に関して、推進・消極・否定の立場を超え、事実
と論理と合理に基づいた議論を目指し、原子力政策が直面している課題や政策
アジェンダを幅広い立場から洗い出すことを目的(政策の合意ではなく、政策
論点の合意を目指す)とした。2010年5月から5回の会合を重ね、9月に
原子力委員会および社会全般に向けた「提言書」を、まずは取りまとめた。

■「提言書」の概要
 円卓会議の最初の「提言書」は、原子力政策大綱の見直しに関するポイント
に焦点を当て、なぜ見直しが必要かについて、以下の8つ理由あげた。
(1)商業原子力発電政策について、原子力発電の段階的縮小を含む複数の政
策選択肢を対象とした政策総合評価にもとづいて、最善の選択を提言すべきで
ある。
(2)核燃料サイクル政策について、同様の方法にもとづいて、最善の選択を
提言すべきである。前回の策定会議の作業については不十分な点が多い。
(3)原子力政策大綱の策定後、原子力委員会の頭越しに、原子力政策に関す
る重要な決定が行われている。それらについて検証し、是非の判断を下すこと
が必要である。
(4)現行の原子力政策大綱の策定後、原子力事業の状況は、全体として停滞
状態が続いている。それらを踏まえた政策の見直しが必要である。
(5)現行の原子力政策大綱の策定後、原子力をめぐる国際的状況が大きく変
化している。それらについての分析と、政策的対処が必要である。
(6)原子力委員会の政策評価部会は、政策大綱が正しいことを大前提として
審議しており、政策大綱見直しにつながる検討を行っていない。
(7)日本では2009年9月に政権交代が起こり、民主党主導の連立政権が
誕生した。政治主導の行政をよしとする観点からは、政策大綱を見直すことが
不可欠である。
(8)多くの政策および事業について、誰が責任をもつのか、不明瞭な記述が
多い。その明確化を図るべきである。

■円卓会議の今後
 今回の「提言書」は、円卓会議における過去4ヶ月間に亘る助走的期間にお
ける議論の集約であり、終着点ではなく中間点である。
 円卓会議自体は、非常に良い雰囲気で建設的な議論ができる集まりとなりつ
つある。原子力政策大綱改定作業が始まってからも、円卓会議はそこでの議論
と並走しながら活動を続け、意見表明を行っていく予定としている。

                       飯田哲也(ISEP所長)
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