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2.連載「光と風と々と」(28):ポピュリズム─日米での動き方
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

■小沢一郎強制起訴に
 民主党代表選は、予想どおり小沢一郎前幹事長が敗北し、菅改造内閣の支持
率は6月の発足当初の高水準に戻った。小沢支持票は、国会議員票では菅を6
人分下回っただけだったが、地方票や党員票では大きな差がついた。「選挙上手」
などと煽られてきた小沢のメッキは急速に剥げていくことだろう。
 6票差の国会議員票が示すように党内に多い小沢シンパと世論の求める「脱
小沢」のはざまで、菅内閣が微妙な舵取りを迫られている。
 鳩山前内閣の場合には、支持率は下降を続けたのみで1度も上昇に転じるこ
とはなかった。小泉純一郎が、旧橋本派に代表される「守旧派」との距離を演
出してみせることで高支持率を維持したように、菅内閣は「脱小沢」を演出す
ることで、支持率を維持するという戦術を見出した。前号で予測したように小
選挙区制などのゆえに、また副大臣や政務官のポストを小沢系に回したために、
小沢系が大分裂するような事態は考えられない。
 そして昨日(10月4日)、検察審査会の2度目の議決によって、小沢は強制
起訴されることになった。検察審査会という市民の判断によって政治家が起訴
される日本初のケースである。
 5日付けの朝日新聞の社説は小沢の議員辞職を、日経の社説は、民主党によ
る離党や除名勧告の処分を求めている。読売の社説も内容は不明確だが、小沢
と民主党にけじめを求めている。
 小沢の政治資金疑惑は、本人を刑事被告人として、法廷で決着が付けられる
ことになったが、代表選で小沢が負けたことによって、現職の総理大臣が政治
資金疑惑によって「起訴される」、あるいは、現職の総理大臣であるがゆえに強
制起訴を免れる、という醜態は回避できた。
 強制起訴が十分予想されたにもかかわらず代表選に立候補したこと事態、異
常な無神経というべきではないか(あるいはそもそも強制起訴を牽制しようと
するねらいの立候補だった可能性も高い)。また小沢に投票した議員諸氏はどの
ような政治感覚を有しているのだろうか。有権者は、選挙区内の民主党議員が
今回の代表選でどのような投票行動をとったのか、また強制起訴の事態に直面
して個々の議員が、有権者にそれをどのように説明するのかを銘記しておくべ
きだろう。

■中間選挙を迎えるオバマ政権
 11月2日(火)、アメリカのオバマ政権は中間選挙を迎える。任期6年の上
院議員の3分の1が改選され、任期2年の下院議員は全員が改選される。大統
領選挙から2年後に開かれる中間選挙は、事実上、政権運営について審判を受
ける機会とされている。Change を掲げて華々しくスタートしたオバマ政権だが、
経済不況のもとで苦戦を強いられている。
 最大の焦点であり長年の懸案だった医療保険制度改革は、3月に下院で、賛
成219対反対212の僅差で可決、大統領が署名して、ようやく医療保険改
革法が成立した。選挙中の公約のような、日本の国民健康保険のような公的医
療保険制度の設立は断念せざるをえなかった。ずっと穏健な、国民全員に民間
保険に加入するよう義務づけ、そのために加入条件を緩和し、保険加入を国が
補助するという内容の法律である。現在83%程度の医療保険加入率が95%
程度まで上がる見通しという。(加藤祐子「ついにアメリカが「常識」の国に
CHANGE、医療保険改革がついに 1・2」。
http://news.goo.ne.jp/article/newsengm/world/newsengm-20100322-01.html
 私たち日本人の感覚では、医療保険制度改革は政権前半の最大の成果として、
高く評価されていい。しかしながら、医療保険改革法の成立は、アメリカの文
脈では、ティーパーティーなどの保守系に「大きな政府」批判、オバマは「社
会主義的」という批判の口実を与える効果も持ってしまったようだ。
 9月24日に発表されたCNNの世論調査ではオバマ大統領の支持率は過去
最低の42%にとどまり、不支持率は54%と過半数を超えている。
 中間選挙を前に、上院は、今年7月、温室効果ガスの排出を制限する包括的
なエネルギー・温暖化対策法案の成立を断念した。中間選挙で民主党の苦戦が
予測され、1994年のクリントン政権と同様に、中間選挙での敗北によって
下院と上院双方で共和党が多数を占め、政権が立ち往生する事態も予想されて
いる。
 そうなると、オバマ政権の温暖化対策への積極姿勢はさらに難しくなり、
11月下旬からのCOP16でも、2013年以降の枠組みづくりに向けて、
大きな前進は見込み薄となるだろう。
 経済不況とポピュリズムは、オバマ大統領を誕生させた原動力だが、保守派
のティーパーティーの隆盛に見られるように、ポピュリズムが大きく右に振れ
つつあるのがアメリカの現状である。インターネットを駆使して小口の資金を
集めるティーパーティーの手法は、その限りでは、オバマの選挙戦術ともよく
似ている。
 当時の好況が90年代半ばのクリントン人気を支えていたのに対して、好転
の兆しの見えない現下の不況は、オバマ政権にとって大きな壁である。
 やや図式的に言えば、日本のポピュリズムは、政権交代を実現するとともに、
増税論を嫌って参院選では自民に大きな議席を与えたものの、小沢を批判し菅
の再選に貢献したのに対し、アメリカのポピュリズムはわずか2年で右に大き
く振れ、オバマ政権に立ちはだかっている。むろんティーパーティーについて
は、その草の根性を疑問視し、FOXテレビなどに代表される保守派に操作さ
れ、演出されたものだという批判も根強い。
 宗教的背景が乏しいだけに日本のポピュリズムは相対的に健全だが、キリス
ト教右派の信条に支えられたアメリカのポピュリズムはしばしば独善的で狂信
的である。

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)
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