上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
5.ザルツブルク REFORM Group Meeting 報告
        古屋将太(Aalborg University, PhD student/ ISEP fellow)
                     山下紀明(ISEP主任研究員)


概要(古屋)
 9月6日~10日にかけて、オーストリア・ザルツブルクにあるレオポルツ
クロン城で第15回リフォームグループ会議が開催され、ISEPからは飯田、
山下、古屋が参加しました。リフォームグループ会議は、ベルリン自由大学環
境エネルギー政策研究所が中心となって組織され、毎年8月下旬?9月上旬にレ
オポルツクロン城で開催されており、1週間のプログラムには欧州の代表的な
環境エネルギー政策研究者をはじめとして、政策立案や国際交渉の実務者、エ
ネルギー産業界の代表者等、環境エネルギー政策に関係するさまざまなキーパ
ーソン数十名が集まり、活発な議論が行われています。今年の全体テーマは「世
界のエネルギーシステムの脱炭素化戦略(Decarbonising Strategies for the
Global Energy System)」でした。

9月6日:1日目(古屋)
Energy Perspective 2050:2050年に向けたエネルギーの見通し

 初日のセッションは、主に欧州を中心として、2050年を視野に入れた中
長期的な気候変動・エネルギー政策の動向が発表されました。COP15での
国際交渉におけるジレンマを反映して、欧州全体としての交渉カードは「やや
手詰まり」という印象は拭えないものの、依然としてドイツによるリーダーシ
ップは継続しているというのが全体的な論調でした。
 ベルリン自由大学環境政策研究所のMiranda Schreurs氏による発表では、自
身が委員を務める「ドイツ環境審議会(The German Advisory Council on the
Environment)」による2050年までの気候変動・エネルギー政策の検討内容
が報告され、改めて自然エネルギーと省エネルギーの推進が強調されました。
検討シナリオでは2050年にドイツの電力需要を100%自然エネルギーで
供給することを想定し、その際に考慮すべき論点が浮かび上がってきました。
 その中でも注目すべき点として、国内自給を前提とすることを政策課題の最
優先に起きつつも、変動する自然エネルギー供給を活かす上ではスカンジナビ
ア諸国との連携を現実的に考慮する必要があるということが指摘されていまし
た。具体的には、ドイツやデンマークの風力発電の変動をノルウェーの水力発
電との連携によって対応することが考えられているのですが、こうした連携は、
実際にはカナリア諸島のEl Hierro島ではすでに「島」というスケールで実現
しており(参考文献)、国同士の広域レベルでも検討に値するのではないかと思
います。また、現在デンマークでは風力発電の変動をヒートポンプとの連携で
対応する研究が進められており、「自然エネルギーには変動があるから導入は限
定的」という紋切り型の批判を超える「変動に対応して導入を推進する」とい
う方向性が確実に現れていることがわかります。
 翻って、COP15以降の日本の気候変動・自然エネルギー政策の動向を考
えると、「環境政治の空白」とも言えるような中でずるずると重要な政策が棚上
げになり、「2020年25%削減」で切り開いたモーメンタムが次第に失われ
つつある状態だと思います。現在検討が行われている固定価格制等の各種政策
は、国内だけでなく国際的な気候変動・自然エネルギー政策の議論にも影響を
およぼす試金石のひとつになると考えられるため、積極的な政策を期待したい
ところです。

参考文献
Radzi, Anis. 2009. “100% Renewable Champions: International Case
Studies.” Pp. 93-165 in 100% Renewable: Energy Autonomy in Action, edited
by P. Droege. London: Earthscan.

9月7日:2日目(山下)
Greening Energy in Europa:欧州のエネルギーのグリーン化

 この日はEUの気候変動政策、欧州自然エネルギー連盟の構想、省エネ策、
バイオマスの土地利用問題などの個別の発表とともに、エネルギー事業者を集
めたラウンドテーブルでの議論が行われました。
 気候変動交渉を先導してきた欧州においても、COP15以降の展望と今後
のEU議長国のエネルギー業界との関係性から、全体としての大きな進展を目
指すよりも可能なところが個別の進捗を積み重ねていく方が現実性が高いと認
識しているようです。
 ラウンドテーブルでは、2050年までの長期のエネルギー政策および事業
の展望について議論が行われました。参加者は欧州太陽熱産業協会会長である
Oliver Druecke氏、欧州風力発電協会のCEOであるChristian Kjaer氏、エ
ネルギーコンサルタントとしてJobst Klien氏、ガス事業者の立場からWim
Mallon氏という4名。Oliber Druecke氏は自然エネルギー熱の重要性を強調し、
今後20年にわたってはガス業界との連携も視野に入れたいと述べていました。
また風力発電については、今後の主要なエネルギー源となること、その際に地
域の役割がますます重要になると述べていました。一方Wim Mallon氏はガス事
業の重要性を強調していました。全体として大きな変革の方向性は理解した上
で、どのように実現に結びつけるかが重要であり、机上の計算や研究結果より
も実践に向けた効果的な働きかけを重視する実践的な視点での議論が行われま
した。

9月8日:3日目(山下)
Efficiency & Renewable Energy Strategies for Developing Countries:
途上国におけるエネルギー効率化・自然エネルギー戦略

 この日はアジア、中南米における自然エネルギープロジェクトが多く紹介さ
れ、特にバイオマスの持続可能な利用に関する議論に多くの時間を取りました。
他に主な発表内容は、エネルギーと貧困、太平洋・カリブ海地域のエネルギー
政策、地域エネルギー事業の機会、メキシコの自然エネルギー戦略などです。
 バイオマスの利用状況については3件の報告がありました。(1)「改良型バ
イオマス調理器の世界状況」Mary Louise Gifford, ベルリン自由大学・UCバ
ークレイ校(2)「地域でのバイオエネルギーシステムの最適化」Mirco Gaul, ベ
ルリン工科大学(3)「途上国でのジャトロファ・プログラム:状況と展望」Lutz
Mez、ベルリン自由大学。
 (1)については、途上国で多くのプログラムが進められている改良型バイ
オマス調理器についてレビューし、現状を分析したものです。80%を超えるプ
ログラムが目標を達成できておらず、技術面・社会面・金融面・制度面での障
害がありつつも、技術的な改良やマイクロファイナンスの台頭などのチャンス
があることも紹介していました。
(2)(3)についてはいずれもジャトロファを中心に取り上げていました。ジ
ャトロファは非木質バイオマスの一種で、成長が早く、非食用で食料との競合
が無いため注目を集めています。しかし、土地利用の観点からは限られた農地
の取り合いとなること、生産プロセス・エネルギー利用の仕方により大きな効
率の差が出るため、効果的な利用には全段階にわたる仕組み作りが必要なよう
です。
 途上国での自然エネルギー利用は今後の世界全体のエネルギー需要増への対
応から重要であることは言うまでもありませんが、先進国と異なる形の障害と
可能性を強く感じました。

参考)会議の発表資料はこちらからダウンロードできます。(英語サイト)
http://www.polsoz.fu-berlin.de/polwiss/forschung/systeme/ffu/veranstal
tungsarchiv/salzburg_2010_program.html

概要・1日目報告 古屋将太(Aalborg University,PhD student/ISEP fellow)
2日目・3日目報告            山下紀明(ISEP主任研究員
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://isepseenarchive.blog88.fc2.com/tb.php/453-b804ce59
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。