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1.風発:よくわかる自然エネルギー(2)
                       飯田哲也(ISEP所長)

・エネルギー供給と自然エネルギー

 『自然エネルギーにエネルギー供給の主力は無理、補完的なエネルギーとし
て』という声を聞くことがあるが、まったくの誤解だ。
 まず量的に見ると、太陽エネルギーだけでも、現在世界全体の石油・石炭な
どの化石燃料や原子力発電のおよそ1万倍が降り注いでいる。これを太陽光発
電や風力、水力、植物など、様々な形態や技術を用いることで、代替エネルギ
ーとして使うことができる。3千倍程度の利用可能量があるという試算もある。
太陽エネルギー起源ではない地熱や潮力を加えると、それ以上の有り余る量の
自然エネルギーを人類は使えるのだ。
 『自然エネルギーは密度が薄くて使えない』『広い土地が必要』という批判も
目にするが、これも正しくない。たとえば集中太陽熱発電を、広大なサハラ砂
漠のわずか10キロメートル四方に設置すればヨーロッパの電力を賄え、30
キロメートル四方で世界の電力が賄えると試算されている。『生み出す以上のエ
ネルギーが必要』という批判もあるが、これも古い知識だ。今や太陽光発電や
風力発電は1~2年で製造エネルギーを取り返すことができる。
 自然エネルギー普及のほぼ唯一の課題はコスト高だったが、風力発電のよう
に競争力を持ったものやそうでなくても政策によって効果的に普及させること
ができることを知った世界各国が、雪崩を打って自然エネルギーの普及競争に
走っている。
 日本は、1次エネルギーでわずか4%と先進国の中でもずば抜けてエネルギ
ー自給率の低い国だ。「原子力を含めると16%」という統計もあるが、ウラン
も輸入しているので不適切だ。ウラン供給が数年後に厳しくなるという予測も
あり、やはり冒頭の「4%」という純国産エネルギーの数字で考える必要があ
る。
 その日本が、自然エネルギーの普及にもっとも消極的であったという事実は、
世界にとっては七不思議、日本国民にとっては不幸なことだ。

・欧州がリードする自然エネルギー

 欧州は、世界の自然エネルギー拡大の大潮流をリードしてきた牽引車である。
今日でも、世界の自然エネルギー市場のほぼ半分を欧州が占めているだけでな
く、現在8.5%の自然エネルギー供給のシェアを、2020年までに20%
へと高める野心的な目標を掲げている。これは欧州が掲げる地球温暖化防止の
目標(2020年までに20%ないしは30%削減)を達成する上で太宗を占
める。
 それだけではなく、エネルギー安全保証と産業競争力とを同時に達成するこ
とを狙ったものだ。自然エネルギーは、それらを両立しながら達成しうるもっ
とも有力なエネルギーオプションという理解が欧州では共有されているのだ。
 もともと、北欧を中心とする環境先進国が新しい社会モデルを創造し、その
社会モデルや環境政策をドイツなど環境大国が導入し発展させながら、欧州全
体の大きな市場や政策空間へと拡げていったのである。
 たとえば木質バイオマスのエネルギー利用をリードしてきたのはスウェーデ
ンとフィンランドだ。林地残材や木質ペレットを使った小規模な温熱・暖房か
ら大規模な地域熱供給やコジェネに利用する社会モデルを創りあげ、欧州のバ
イオマス利用技術や市場・政策をリードしてきた。
 風力発電はデンマークが先駆的に利用拡大し、その後、ドイツやスペインに
市場が拡大してから一気に世界的な普及期へと広がっていった。日本がパイオ
ニアだった太陽光発電も、2000年にドイツが積極的な政策を導入してから、
市場も産業もドイツがリードするに至った。
 欧州連合27カ国は、まだ地域の発展度合いに大きな格差があるが、それを
是正する手段としても自然エネルギーを位置づけているほか、地域主権の原則
にしたがい、地域での自然エネルギー開発の取り組みを支援する、さまざまな
工夫がある。
 自然エネルギーは21世紀を担う産業になることが予見されており、欧州は
そのリーダーを目指しているのだ。

・アメリカの自然エネルギー

 アメリカの自然エネルギー政策の歴史を振り返ると、1970年代のカータ
ー政権に遡ることができる。カリフォルニア州に今でも数多く残る風力発電を
生み出しただけでなく、今日の世界が自然エネルギーの隆盛となったルーツで
もある。
 その後は、共和党政権が続いたほか、民主党政権でも連邦議会の同意が得ら
れないなど、連邦政府は自然エネルギーを冷遇してきた。その間は、カリフォ
ルニア州やテキサス州などの州政府が革新的な自然エネルギー政策を実践する
主役となった。
 そうした長い低迷期を経て、オバマ大統領の誕生がアメリカの転機となった。
オバマ大統領が事実上の生みの親となった「グリーン・ニューディール」は、
瞬く間に世界中を駆け巡り、自然エネルギーへの期待をグローバルに高める契
機となった。また、オバマ政権自らの自然エネルギー支援策も功を奏して、
2009年にはドイツを抜いて世界最大の風力発電大国となり、風力発電の雇
用者数が石炭の雇用者を上回るなど、着実に成果をあげている。
 「スマートグリッド」も、オバマ政権がグリーン・ニューディールのもう一
つの柱として提唱し、今やグローバルなうねりを生み出している。この「賢い
送電網」の構想に、シリコンバレーを中心とするアメリカのIT業界の人・モ
ノ・カネ・技術が、こぞって乗り出している。その象徴が、「自然エネルギーを
石炭火力よりも安くすること」を目標しているグーグルが、2月に電力事業の
認可を得たことだろう。
 現在、オバマ政権は、エネルギーと地球温暖化対策のための新法を上院で通
すべく、苦労している。とくにキャップ&トレードなどの地球温暖化対策は見
通しが厳しいとされているが、自然エネルギーの分野は、環境に優しい新しい
雇用(グリーンジョブ)を生み出し、エネルギー独立にも役立つことから、野
党(共和党)も支持すると見られている。
 今やアメリカが自然エネルギー大国として、世界をけん引しつつあるのだ。

「聖教新聞」2010年2月21日号、3月7日号、3月21日号掲載

                       飯田哲也(ISEP所長)
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