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3.ベルリンの風 第3回 バルセロナ 「バルセロナ・モデル」発祥の地
                     山下紀明(ISEP主任研究員)

 日本では記録的猛暑で、場所によっては一ヶ月半も熱帯夜が続いているそう
ですね。こちらベルリンはすでに秋の気配。最高気温が17、8度、朝晩は厚
手の上着が必須です。噂には聞いていましたが、本当にあっという間の夏でし
た。心地よい季節は終わり、長く厳しい冬に近づいています。研究仲間とは暖
かいところにこもって資料・データ集めに没頭するしかないね、と笑いあって
います。
 ベルリンに着いてはや3ヶ月、10ヶ月の滞在の3分の1が過ぎようとして
います。ドイツ語は練習の甲斐があり、友人との易しめの日常会話はこなせる
ようになり、辞書を引きつつ新聞の記事に挑んでいます。やはり気になるのは
エネルギー政策のニュースです。このところドイツでは原子力の運転期間延長
に関する議論が続いており、成長を続ける自然エネルギーとの対比も行われて
います。
「原子力論争がドイツ経済界を二分」(8月23日)
「2050年には自然エネルギー電力のみ」(8月30日)
「私たちには希望を持てるエネルギー政策が必要だ」(8月31日)
これらはドイツの有力紙「Die Zeit」オンライン版の最近の記事です。自然エ
ネルギーが大きな存在感を持っていることがよくわかり、日本との違いを実感
します。
 さて先月のハンブルクに続き、今回はもう一つの候補地であるバルセロナ(ス
ペイン)についてご紹介します。ベルリンからは飛行機で2時間半ほど、首都
マドリードからは高速鉄道で3時間ほどで、イベリア半島の付け根に位置する
スペイン第二の都市に到着します。独自の文化を発展させ、中世には地中海全
域に君臨したカタルーニャ地方の中心都市であり、現在は160万人が暮らし
ています。
 この街は世界遺産でもあるサグラダ・ファミリア聖堂やグエル公園といった
アントニオ・ガウディの建築群で有名ですが、2000年代に入って自然エネ
ルギー政策の分野でも著名となりました。その理由は2000年に導入された
太陽熱導入義務化(ソーラー・オブリゲーション:以下S.O.)です。S.O.
についてはこれまでもISEP関連の多くの場所でご紹介してきたのですが、欧州
ではバルセロナから始まり、スペイン中の50以上の自治体に広まり、
2006年にはスペイン全土に採用されました。バルセロナのS.O.は、建
物の新築・改築の際に一定割合以上(30%~70%程度)の太陽熱利用を義
務付けるものです。それまで例の少なかった自然エネルギーの熱利用について
の制度であり、業務・家庭部門への義務付けという二重の意味で重要な強力な
施策であり、「バルセロナ・モデル」として知られるようになりました。バルセ
ロナでの導入を端緒として、自然エネルギー熱利用全般に対象を拡大されたも
のを含め、地域の事情に合わせてバリエーションを拡げながら欧州のみならず
世界各地で次々と制度化が進められています。
 地元NPOがまとめた論文(参考資料1)では、バルセロナの成功要因とし
て3つの要素を挙げています。まず政治的意思、次に技術水準、そして市民の
参加。言い換えれば、政策決定者、企業、市民の三者の密接な関与です。特に
市民のエネルギー分野への参加は1980年代から続いており、そうした取り
組みがS.O.の導入に結びついたとしています。また1995年の市政選挙
の際に、持続可能性を課題の一つに掲げており、バルセロナ史上初めて緑の党
の候補者が出たことなども導入への流れを作っています。その後エネルギーの
市民会議や地域エネルギー機関などを設け、担当者の一人がある自治体で議論
されていたS.O.案にヒントを得て、バルセロナでの実現に向けた検討が始
まったそうです。(その「ある地域」とは、なんとベルリンなのですが、その後
検討はうまくいかなかったようです。)
 他の調査候補地でも同様なのですが、バルセロナでもNPOと行政との関係
性が注目に値するものと考えています。指導教官と数度の話し合いを行い研究
計画の方向性も定めましたので、これからはどんどん文献と人に当たっていき
ます。まずは前回ご紹介したハンブルクの概要、環境政策の歴史、主要アクタ
ーについてのインタビューを始めています。次回からはその経過を含めてご報
告する予定です。

参考資料)
1.「Barcelona and the Power of Solar Ordinances: Political Will, Capacity
Building and People's Participation」J PUIG, “Urban energy transition:
from fossil fuels to renewable power” P433-447
2.「物語 カタルーニャの歴史 知られざる地中海帝国の攻防」田澤耕著中公新書

                     山下紀明(ISEP主任研究員)
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