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3.青森エネルギー紀行(9)「ねぶたのエネルギー」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 今年の東京は猛暑と聞く。7月の終わり、私用で東京に帰省した時は確かに
参った。ただでさえ汗かきで、しかも青森の気候に慣れた身には夜でさえ歩く
と汗がじわーっとにじみ出た。
 青森も昨年に比べれば暑い。でも木陰は涼しく、夜になれば「天然冷房」の
風が吹き抜ける。
 家でもエアコンをかけるのはごくまれ。日中、職場にいることが多いせいも
あるが、夜中は窓を開け放てば、風が室内をやさしく通り抜ける。「青森の人は
必要もないのに見栄でエアコンを家につけている」と言われるほどだ。
 今冬には東京から新幹線が開通する。厳冬は敬遠したいが、夏は「すずしい!
あおもり」というキャンペーンでも張り、避暑地として多くの観光客でも招き
入れれば、真夏の都心で全開する冷房のエネルギーがわずかでも減るのではと、
なかば本気で思ってしまう。

 その青森の人々を熱狂させるのが、毎年8月初めに各地で繰り広げられる夏
祭り。青森市では「ねぶた祭」、弘前市は「ねぷたまつり」、五所川原市は「立
佞武多(たちねぷた)祭り」などと、表現が微妙に異なるのはその土地土地の
プライドかもしれない。ちなみにねぶたやねぷたは津軽地方の祭りで、南部地
方の八戸市の夏祭りは「三社大祭」である。
 なかでも最も大規模かつ全国的に名を知られている青森市の「ねぶた祭」に
は、針金で作った骨組みに和紙を張り合わせ、武者絵などを描いた大型ねぶた、
子どもねぶた計30数台が登場、毎晩、市内を2時間かけて練り歩く。大型ね
ぶたは幅9メートル、奥行き7メートル、高さ5メートルもあって、その迫力
に目を見張る。ねぶたの前を浴衣、たすき姿の跳人(はねと)が文字通り跳ね
ながら踊り、後ろから太鼓や笛の囃子が続く。夏が短い分だけ、凝縮して楽し
もうというその迫力と熱気は、だれもが一度は見て損はないと感じさせる。

 毎年作り替える大型ねぶたの制作費や祭り期間中に繰り出すための人件費や
食費などで1台当たりの年間費用は2千万円ともいわれる。そのお金を捻出す
るため、多くのねぶたには企業がお金を出している。パナソニック、東芝、日
立、三菱といった電機関係の企業が結構多い。ねぶたは、夜空を焦がすと表現
されるほどの光で内側から照らす。近くで見ると目映いほどで、そこに使われ
る電球などの関係もあってスポンサーとなっているのだろう。
 電球や蛍光灯などは20ワットから100ワットタイプまで少なくとも約
1000個。それだけの光源を確保するため、各ねぶたには約1.5トンの発
電機が取り付けてある。市内を練り歩くのはおおむね午後7時過ぎから午後9
時まで。準備の時間も含めて明かりをつけるのは1日2時間半ほどになる。そ
の際、発電機を動かすのに使う軽油は直接聞いたところ、ねぶたによってまち
まちで1回の運行で少ないところで13.4リットル、多いところで20~
30リットルと言う。
 これでもかつては1日40~50リットルに上ったことがあったという。そ
れよりも減ったのは、以前はほとんど電球を使って代わりに蛍光灯が多くなっ
たから。加えて今年は少なくともパナソニック、東芝がスポンサーのねぶたに
LEDが採り入れられた。

 パナソニックのねぶたは電球が400~500個、電球型蛍光灯が約700
個、蛍光灯約20本、LEDが約200個。東芝は電球が約130個、電球型
蛍光灯が約600個、蛍光灯が数本、LEDが約200個という。東芝のねぶ
たの関係者は「祭りも最近はごみを出さないようにするなど、エコが求められ
ている。省エネもこれからもっと進むだろう」という。
 それなら、すべてLEDや蛍光灯にできないものかと聞くと、「アート」との
兼ね合いが難しいのだという。蛍光灯は全体の色が白っぽくなり、LEDは電
球のように全方向に光がまんべんなく散らばらず、一定方向に強くなるため、
せっかくの武者絵がきれいに浮かび上がらない。ねぶた制作のリーダーである
「ねぶた師」がうんと言わないそうだ。そこで青白っぽく光って構わない刀の
部分は蛍光灯にするとか、絵の小さなパーツにLEDを使うなど、作品の出来
映えを損ねないように工夫を凝らしているという。

 確かに、数ヶ月かけて制作した力作をきれいに見せたいという思いを「省エ
ネ」のひと言で裏切りたくない。和紙には電球の出す昼光色が似合う気がする
し、何よりも青森が最も輝く日々に傾ける人々の情熱、ほとばしるエネルギー
を、「エネルギーのムダ遣い」と切って捨てるほど無意味なことはない。

 それでも、祭りの効果を損なわないようにしながら、わずかでも省エネの光
を使う努力が進んでいることに、宣伝効果をねらう企業の意図も当然あるだろ
うが、技術革新の意義を感じる。
 LEDが祭りなどさまざまな場で利用されることでさらに進歩をとげ、生活
に完全に溶け込む日も近いだろうと、ねぶたにこだまする「ラッセラー」のか
け声を聞きながら考えた。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
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