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3.青森エネルギー紀行(8)「W杯と津軽半島で感じたこと」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 いきなり私事で恐縮だが、6月後半から7月にかけて、やたらとせわしない。
参議院選挙の報道が本格化し、また、弊紙主催の高校野球地方大会の準備も並
行して進めるのは業務だから致し方ないとして、もう一つ、サッカー狂として
は4年に1度のW杯(ワールドカップ)がおのれの首を絞めている。
 開催国の南アフリカとは時差7時間。1日の仕事が片づくころから試合が始
まり、好ゲームとなれば、夜中に起き出し、未明のテレビ中継に釘付けという
ことにもなってしまう。あ~やれやれ。困った「趣味」だが、テレビを長時間
見続けているうちに、ピッチを囲むスポンサー企業の広告でソニーやコカコー
ラなどと並んで、あまり見慣れない名称を見つけた。Yingliとある。
 どんな企業かと調べてみたら、「英利」という中国の太陽光発電メーカーだっ
た。そう言えば4年前のW杯は開催国がドイツだっただけに、「環境にやさしい
イベント」を売りに、「カーボンオフセット」が大はやりだった。日本が試合を
したカイザースラウンテルンのスタジアムの屋根も太陽光パネルで覆われ、会
場の電気をまかなっていた。その太陽光発電のメーカーが実は英利だった。そ
れから4年、大枚をはたいてW杯大会の公式スポンサーにまで成長したことに、
世界の潮流がうかがえる。
 さて、青森である。先日、青森市内から約2時間、津軽半島の先端、竜飛崎
まで文字通り車を飛ばした。その日は恐ろしく風がなく、先を急ぐ国道の右手
に見える陸奥湾は波もほとんど静かで鏡のよう。竜飛崎も「べた凪」状態の絶
好の観光日和だった。
 しかし、平均風速毎秒8メートル、竜も飛ばされるというその地には「竜飛
崎ウインドパーク」という風車群がかつてあった。先端から数百メートル離れ
た山中に東北電力が92年以降、11基を立てて実証実験に使った場所のこと
である。つまりは、それぐらい実は風況に恵まれた地でもあるということだ。
しかし今では実験の役目を終えたということですべて撤去され、これとは別に、
「ホテル竜飛」という突端にある観光ホテルが、ホテルで使う電気の一部を相
殺するかのように03年から稼働させた750キロワットの風車1基だけがぽ
つんと孤立するだけだ。
 下北半島に林立する風車とくらべて、風では見劣りしないのに寂しい限りな
のだが、ようやく新たな胎動の芽が出始めた。地元の外ケ浜町が出資した第三
セクター「津軽半島エコエネ」による風車が2基立つのだ。ホテル竜飛の風車
のすぐそばにあり、この地を訪れた先日は来年2月の稼働めざして、土地を平
らにならすためのショベルカーがあった。
 青森にとって風力発電を専業にする地場産業の誕生である。2基で計
3350キロワットの出力があり、計画している年間発電量は1216万キロ
ワット時。13年で初期投資を回収する算段という。
 中央の大手風力発電事業者が進出してきても地元に落ちるカネは固定資産税
と土地の賃貸料ぐらい。そうした地位に甘んじてきた青森がようやく「目覚め
た」。以前からこのコラムでも繰り返してきたように、自らの資源を有効活用す
る取り組みはもっともっと広がるべきだと思う。
 ただ、この「地場産業」もウインドパークであった変電設備などを譲渡する
契約を東北電力と結び、また、同電力に発電価値はすべて買ってもらうという
前提があってこそ、成立した。こうした「特約」抜きには現行制度では、拡大
はおいそれとはいかないだろう。
 世界のビッグイベントのスポンサーに新興国の太陽光発電メーカーが名乗り
出るという地球規模の流れと、日本の最も風況に恵まれた地域で風力の地場産
業が産声を上げたばかりという、この「落差」。竜飛崎に風車が林立するのを見
る日はいつのことだろう。
 
 ところで、六ヶ所村の再処理工場について書いた前回のこの欄で、高レベル
放射性廃液の入った炉内に天井からはがれ落ちたれんが片を回収する作業が困
難を極めており、その様子をまるで目をつぶった「UFOキャッチャーゲーム」
に例え、「廃炉」にもつながりかねない危機と指摘した。が、その後、メルマガ
発行後の6月17日に無事回収されたと日本原燃が発表した。れんがを取り出
す器具の改良を重ね、回収に成功した方々の努力には素直に敬意を表したいと
思う。
 ただ、れんが片の回収はいわば、核燃サイクルの「ゴール」を考えれば、自
らのミスでボールを相手に奪われ、あわや失点という場面を何とかクリアした
に過ぎない。ミスを重ねての防戦一方でシュートを許さないのは「健闘」かも
しれないが、今の戦いぶりでは得点はまだ遠いという状況に変わりはないとい
う気がする。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
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