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3.青森エネルギー紀行(7)「お笑い再処理工場」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 「お笑い再処理工場」。北朝鮮をおもしろおかしく描いたテリー伊藤の“名著”
になぞらえれば、そんな状況だろう。
 今、六ヶ所村の再処理工場はゲームセンターと化している。一昨年12月に
天井からはがれ落ち、高レベル放射性廃液の入った炉の底に沈む一片のレンガ
を、先端に2枚の金属板を「はさみ」代わりに取り付けたクレーンを遠隔操作
で動かし、つかみ出そうとするのだが、廃液は真っ黒、高温のためにカメラも
入らない。いわば、目をつぶったままガラスケースに入ったぬいぐるみをつか
み取る「UFOキャッチャー」ゲームに躍起という状況である。
 トラブルや故障はこれまでも何度もあった。それがまた新たなトラブルを呼
び、また修復するという作業を繰り返してきた。でも、それらは再発防止のた
めの手練手管があったように思う。今回は縦24センチ、横14センチ、厚さ
7ミリという大学ノートほどのレンガが本当に命取りになるかもしれない。取
り出せなければ、ガラスの中に封じ込めた高レベル廃液を炉の下から排出する
「口」をふさぐ恐れがある。「廃炉」にもつながりかねない危機である。
 原燃は当初、3月に作業を始め、月内に取れると言っていたのに、作業開始
自体が4月に遅れた。その時の理由を原燃は「UFOキャッチャー」の器具の
準備を念入りにするため、としていた。だが始まってみると、この器具、やっ
ぱりうまくいかない。
 れんがをはさむ幅がきゅうくつだの、緩いだのといった不具合があり、4月
中に早くも器具を改良する羽目に。それにこの作業、24時間、続けられない。
その理由は炉の熱が冷めると、炉内の液体ガラスが固まり、れんがその中に埋
まってしまうためだ。そこで約30時間かけて炉を熱してガラスをどろどろに
しては、冷めてしまうまでの5~7時間だけUFOキャッチャーにトライする
ということを繰り返す。
 それでも、ほんの数時間だけ、原燃が、ぬか喜びしたことがあった。
 5月16日。午後1時半ごろ、UFOキャッチャーが何かをつかんだという
報告があり、炉のすぐ外に置いた白黒テレビでは、器具の先端に黒い物体が確
認できたという。今となっては本当に「黒い物体」が単なる影でなかったのか
という疑惑が渦巻くが、原燃は喜び勇んで、その日の夕方、報道各社に速報を
流した。
 ただし、弊紙の社内でもその時点で、本当に取り出したのかという疑問の声
が上がっていた。問題は、取り出す炉の上部の口の狭さ。そこを通過する際、
物体をはさんだ2枚の金属板の向きを縦に長く変える必要があるが、その転回
がうまく行くかどうか、未知数だったからだ。
 果たして、金属板の先端を確認しなおすと、何もなかった。最初から何もつ
かんでいなかったのか、それとも、途中で落としたのか。そこははっきりとし
ていない。当日夜になって、原燃はあわてて訂正の発表を報道各社の担当記者
に連絡した。

 原燃は器具をさらに改良し、UFOキャッチャーゲームをまもなく再開する。
しかし、「すぐに取れる」という弁解を4月以降、繰り返す原燃社長の発言を聞
いていると、北朝鮮が何を発言しようとも日本の国民がその内容を信じていな
いように、原燃への信用がますます薄れていく。その危惧が原燃の社内にない
のだとしたら、まさに「お笑い再処理工場」である。

               ◇

 でも「核燃サイクル」は進む。5月13日には、原発から出る使用済み核燃
料を貯蔵する「中間貯蔵施設」をむつ市に建設する事業と、再処理工場から取
り出したプルトニウムやウランを原発に使うための「MOX燃料工場」を六ヶ
所に造る事業に、国の許可が出た。MOX燃料だけで稼働させるため、建設が
進む下北半島の先端、大間町の大間原発もあわせ、下北半島は「核燃施設」包
囲網ができようとしている。
 MOX燃料工場はそもそも、中間処理が本格稼働しなければ意味をなさない。
中間貯蔵は50年の期限つき。市民説明会では「その後は本当になくなるのか」
という不安の声が上がる。見通しなき核燃サイクルに投じられる巨額な費用。
それに群がるしかない青森県下の自治体。万が一の事故など危険に直面しない
ことを願いながら、嘲笑していられるだけ、ましかもしれない。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
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