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2.あおもりエネルギー紀行 第6回「あおもりの冬」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 青森でひと冬を過ごした。
 これまでも同様の寒冷地としては長野で2年間過ごしたことがあるが、県庁
所在地の雪と寒さはくらべものにならなかった。
 「これだけ降ったのは4年ぶり」と、現地の人も感心する「当たり年」で
1月17日には最大積雪量98センチを記録した。
 とにかく1月から2月にかけて、降るときは朝から晩まで集中的に降った。
東京などでは、いったんやんだら当分降らないという感覚だろうが、こちらで
は晴れたかと思うと、10分後には猛烈な吹雪が襲ってくるというから、油断
ならない。しかも、日中も気温は零下だから溶けない。ひっきりなしに車が行
き交う道路なら、日中降る雪は車体の熱で溶けてしまうと考えていたのだが、
6車線ある国道のアスファルトがみるみる白く染まったのには正直、びっくり
した。
 それでも数センチの雪で交通網がマヒする東京とは違い、青森は動じない。
しかし、そのためには多大な労力とエネルギーがかかっている。「除雪」だ。
 夜になり、交通量が減ると大量の除雪車=ショベルカーと大型ダンプが出動
してくる。メーンの道路だけでなく生活道路まで入り込み、とにかく車の通行
の支障がないように雪をわきに積み上げるなり、雪捨て場まで運んでいく。最
終的には海に捨てるという。そんな作業が「最盛期」には朝方まで続き、その
けたたましい音で安眠を妨げられるほどだ。
 こうした「冬の公共事業」に30万人都市・青森市は年約20億円をかける。
天からの「贈り物」ならぬ「やっかいもの」をどけるだけに、相当のエネルギ
ーがかかっている。
 除雪にかけるエネルギーといえば、青森の人たちのその熱意にも感心させら
れた。雪がやむと、必ずだれかが家の外に出て家の前の雪かきをしている。深
夜・未明に帰宅したときも、近所の人が寝る間を惜しんでスコップを握ってい
た。車を出せなくなるとか、玄関前に除雪車が道路の雪を放置しないためとか
理由はそれぞれあるだろうが、雪国に生まれた人たちに受け継がれている習慣
というか、それよりも防衛本能ではないかと思うぐらいだ。
 しかし、そうした人々の家の中には、断熱を施していないものも多い。記者
が単身赴任で借りているのは小ぶりながら鉄筋コンクリートのマンションでペ
アガラスが入っているが、それでも零下10度近く下がる真冬に帰宅してくる
と、石油ファンヒーターのインジケーターには冷え切った室内の温度を4~5
度と表示している。木造で窓もシングルガラスの家の中はどれほど冷え冷えと
しているのかと考えてしまう。
 東北芸術工科大(山形市)の三浦秀一准教授が2003~5年の家計調査を
もとに全国の県庁所在地と政令市の1世帯当たりの二酸化炭素排出量を調べた
ところ、青森市が年間6985トンで日本一。2位の秋田市の6581トンを
大きく引き離す。電気やガソリンの消費は両市でさほど変わらない一方、灯油
の消費の差がそのままCO2排出量の差になって表れている。それだけ暖房に
灯油を多く使っていると証にほかならない。
 だが、こうした家の改修はいっこうに進んでいなさそうだ。住宅のエコポイ
ント制度も全国一律ではなく、こうしたエネルギー効率の改善を図る必要の高
い地域に重点配分することも必要だと感じる。
 青森県はおおざっぱに言って明治維新後、西側の津軽氏の領と東側の南部氏
の領が一緒になって成立した。その際、県庁所在地を定めるにあたって、確執
のある津軽と南部の中間にある小さな港町の青森に置いたという経緯がある。
明治19年(1886年)の青森市の人口はまだ1万5千人ほどに過ぎなかっ
たとされ、これに対して弘前市は約2万8千人と倍近い差があった。
 北海道・函館とを結ぶ交通の要衝としてその後、大きく発展したのは言うま
でもないが、実は、青森市は青森県のなかでも最も積雪量の多い地域である。
本州最北の厳しい気候のなかで繁栄した弘前藩が、青森市よりも雪が少ない弘
前市に城下町を築いたのも、うなずける。
 我が愛車プリウスは雪深い最中、なんとリッター7キロという驚くべき燃費
を記録した。運転の下手さや近距離移動が多かったことを差し引いても、雪が
もたらすエネルギーの非効率さは尋常ではない。
 30万人もの人口を抱える都市として、地球上で最も雪の深い青森市。つく
づくエネルギーのことを考えさせられる土地柄である。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)
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