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2.あおもりエネルギー紀行 第5回「のりピーと新政権と核燃サイクルと」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 今月18日、総選挙と同時進行形で世の中の耳目を集めたのりピーが、つい
に姿を現した。夕方6時半のニュースで生中継されたおわびの記者会見に画面
に釘付けになった人も多いでしょう。
 デスクという仕事はこの時間帯、忙しいのだけど、やっぱりしっかり見ちゃ
いました。
 「決して手を出してはいけない薬物というものに自分の弱さゆえに負け・・・・」
「取り返しのつかないことをしてしまった自分を戒め、反省し・・・」。逃走中
に染め直したとかいわれた髪の毛だが、おじぎをしたときにのぞいた黒々とし
た頭のてっぺんが拘留中の生活を思わせ、ちょっと切なかった。

 切ないといえば、そのとき見ていた原稿もそう。自民党王国の青森では今、
市町村や産業界がこぞって、民主党政権に戦々恐々としている。補正予算がス
トップすると事業ができない、雇用が確保できない、と騒ぎ、それこそ自民系
の知事のところに駆け込んできて、民主政権にモノ申してくれとのたまってい
る。そんな話を原稿で見ていると、とてもむなしい。
 青森にいると、新政権への期待感、高揚感などまるで感じられない。後ろ向
きの声ばかりが聞こえてくる。ある市長が「選挙で自民党を応援した知事に頼
んでも、国が言うこと聞いてくれるとは思わない」とつぶやいたのは、なかな
か言い得て妙ではあったが。
 政権交代したから、こうもりのように右から左へと乗り換えるのも節操がな
いと思うが、新時代に新しい希望を見いだすような意見がほとんど皆無という
のも、さびしい。有効求人倍率や賃金は最低レベル、産業構造も第2次、3次
産業中心の開発主義に取り残され、バブルのおこぼれにちょっとばかり預かる
だけ、地方格差の犠牲者となってきた県なら、これ以上、落ちることはないと
前向きに考えてもおかしくないように感じるのだが。
 何がそうさせるのか、と思いめぐらしたとき、この県に巣くう「おねだり主
義」に行き当たった。国の補正予算にある緊急雇用創出対策事業やふるさと雇
用再生特別対策事業という、一時金にさえすがりついて離したくない。県内に
2年ちかくいる同僚の記者は「冬の厳しい気候にじっと耐え、辛抱強く打開し
ていく根性をはぐくむ前に、厳しいのだからいい目を見させてほしいという甘
えの体質が、この県の一部に染みついている」と。
 公金や人様から預かった小金をちょろまかして横領し、役人や職員が、役場
や銀行を首になるというイヤな事件が県内ではすごく相次いでいる。理由はい
ろいろだが、だいたいは遊ぶ金。弱さや甘さが垣間見える。

 自治体も自助努力にはほど遠く、国からの補助金や交付金という「麻薬」が
次から次へと注入されることに麻痺したようなところがあるような気がしてな
らない。だから、自民政権のもとでこれだけ痛めつけられ、格差の犠牲になっ
たのに、まだ旧政権が売る「麻薬」の幻想におぼれ、新政権が新しい社会構造
を作り出してくれるという、もっと大きな変化や未来になど思いが至らなくな
っているのではないだろうか。
 その最たるものが、来年度から県や近隣自治体に配られる「核燃料サイクル
交付金」。下北半島のむつ市などに関連3施設が出来るのにあわせて、10年間
180億円がばらまかれる。こうした原発がらみの「麻薬」はもちろん、これ
までも何度も注入され、「(自治体自身が)身の丈が分からなくなっている」と
いう記者もいる。東通村には16小学校などを統合したピカピカの小、中一貫
校ができたが、全員がスクールバス通学、校内には歯科診療所もある。過疎と
いう事情もあるが、他県の同じような村からすれば、むちゃくちゃ豪勢だ。

 そんな原発や核燃のもたらす「麻薬」にはもはや、自治体は勝てそうにない。
のりピーなみの「弱さ」だろう。同僚の記者の試算では、むつ市には約12億
円、大間町、六ヶ所村にも約11億円が入る。県は120億円もいただく。加
えて、地元の市町村には毎年、「匿名」の寄付が数億円寄せられる。寄付者が名
前を出したくないと希望するためだが、そんな謙虚な篤志家など地元にいるは
ずがない。これだけの大金が出せ、その金が意味を持つのは、日本原燃をはじ
め原子力発電関連施設の企業に決まっている。首長らもそんな金を当然のよう
にあてにし、寄付金がすぐに一般会計補正予算に組み込まれているという手際
の良さだ。匿名とすることで、企業は地元対策費であるその金をあいまいに処
理し、原発や核燃料コストに入れない算段なのではないかと勘ぐりたくなる。
 むつ市は24日、老朽化した庁舎を建て直す代わりに、倒産した床面積1万
8千平方メートルものショッピングセンター跡を新庁舎にして業務を始めたが、
その土地と建物の取得や移転に要した費用28億円のうち、なんと半分以上の
15億円が東京電力と日本原子力発電からの寄付だ。

「麻薬」は危険だと言っても、常習者には通用しない。これまでのノリピーが
そうだ。原発や核燃サイクルに反対する人たちは、それがいくら危険だと「正
論」を述べたところで、「麻痺」している地元の自治体や首長らには決して通用
しないと理解した方がいいと思う。止めたいのなら、金の出所を止めるか、体
制を変えるしかない。あるいは、国策として行き詰まるの待つか。民主党はダ
ムに目が行き、核燃料サイクル事業という最大級の公共事業には目をつぶって
いるけれど。それでも、もし止まったら、禁断症状は相当ひどいだろうなあ。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

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