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3.自然エネルギー熱政策の現状と期待
                    山下紀明(ISEP主任研究員)

 5月末にミュンヘン(ドイツ)で行われた欧州太陽熱エネルギー会議(estec
2009)に所長の飯田とともに参加しました。世界各国から太陽熱の政策担当者、
研究者、ビジネスパーソンが集まる2年ごとの会合であり、最新の政策や産業
の動向が紹介されました。
 私が最も注目していた発表は、これまでも何度かSEENで紹介してきたソ
ーラーオブリゲーション制度(以下S.O.)についてのものです。バルセロナ
から始まり、スペイン全体に採用されたS.O.は、新築・改築の際に一定量
以上の太陽熱利用を義務付けるものです。それまで例の少なかった自然エネル
ギーの熱利用についての制度であり、業務・家庭部門への義務付けという強力
な施策ということで注目を集めています。
 S.O.の効果について、今回初めてまとまった研究成果が示されました。
その一つ、スペインの自然エネルギーコンサルタント会社eclareonのDavid
Perez氏の発表によると、2007年から導入されたスペインのS.O.は国
の太陽熱導入目標値を満たしておらず、効果は限定的ということです。これは
義務対象者にとって法の抜け穴が多いからだと言います。スペインのS.O.
は建築計画時に太陽熱が組込まれているかのチェックを行うのですが、その後
実際に導入されたかの確認、監視の仕組みが無いため、実際には太陽熱を導入
しない例も多いようです。また、S.O.の導入により、新たに住宅業界が太
陽熱産業に参入することで、市場が広がり価格は下がったが、全体として製品
の質も低下してしまったと分析しています。
 発表後、Perez氏と話した際に、「結果として、スペインのS.O.導入は失
敗だったのか?」と尋ねてみたところ、「現時点で抜け穴が多いのは、事実だ。
だがS.O.自体の問題では無く、チェック体制の問題だ。抜き打ち検査など
でコスト効率的に行うことは可能であり、現在提案などを行っている」という
答えでした。現在も各地でS.O.の導入が検討されているなか、新たな施策
を行う際に求められる慎重な制度設計について考えさせられる示唆の多い発表
でした。
 太陽熱業界の今後の展望を示す発表も多く見られました。ドイツやオースト
リアを中心に太陽熱給湯+暖房が進められており、2020年20%自然エネ
ルギー利用を目指すEU目標への貢献を掲げる発表が多く見られました。また
現在3万人程度の雇用が2050年には最高で50万人近くになるという予測
もあり、成長分野としての期待を感じました。
 所長の飯田による日本の状況についての発表では、日本の国自体の熱政策の
不在と、東京都のグリーン熱証書を用いた補助制度の復活、それに伴う太陽熱
業界の期待などが示され、複雑な日本の状況について質問が相次ぎました。
 全体として太陽熱業界への世界的な期待と日本の状況との差を感じつつも、
自然エネルギー熱政策という分野にイノベーションの可能性を強く感じた会議
でした。ここで得た知見とネットワークを今後の政策作りにも生かしていきま
す。

参考リンク
欧州太陽熱エネルギー会議(英語) http://www.estec2009.org/index.asp

                    山下紀明(ISEP主任研究員)


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