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2.連載:あおもりエネルギー紀行 第3回「市民風車は建てられない?」
                     森治文(朝日新聞青森総局次長)

 グリーン・ニューディールにかかわる風力の話を前回に引き続いて、もう少
しくわしくお話したいと思う。
 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が7月7日に発表した今
年3月末現在の風力発電の導入容量で、青森は27万7100キロワットとな
り、25万8485キロワットの北海道を抜いて、日本一に返り咲いたことが
改めて確かめられた。
 しかし、その内訳を見てみると、ほとんどが「エコ・パワー」や「ユーラス・
エナジー」など東京に本社がある企業による売電事業で、地場の資本といえば
ホテルなどが自家消費分をまかなうような形式が散見されるぐらい。売電事業
を手がける地元の企業はまだない。そんななかで気を吐くのが、わずか2基だ
が、住民らの出資をもとにした「市民風力発電」だ。
 その一つは、津軽半島の付け根に日本海に面して位置する鰺ヶ沢町に立って
いる。発電容量は1500キロワットで、愛称は「わんず」。津軽弁で「わたし
たちのもの」という意味だそうだ。
 この風車がNPO「グリーンエネルギー青森」(青森市)の手で動き始めたの
は03年2月のこと。三上亨事務局長は、「あの時だから建てられた」と話す。
今ある「新エネ特措法」(RPS法)が施行された03年4月以降だったら無理
だったというのだ。
 RPS法前は、再生可能エネルギーを増やすため、各電力会社が風力などを
長期で買い取る契約を結んだ。「わんず」の場合は17年間、1キロワット時当
たり11.5円で全量を東北電力が買うという内容だ。「わんず」の建設費は
3.8億円。このうちNEDOが半額を補助。残りを県内外の住民の出資など
に頼ったわけだが、年間の発電量320万キロワット時から340万キロワッ
ト時の売電収入をもってすれば、返済も含めて事業として十分成り立った。
 ところが、RPS法ができてこうした買い取り契約がなくなった結果、仮に
風力発電を建設し、抽選に当たって買い取りの契約が成立しても、1キロワッ
ト時当たりの発電価値3.6円とプラスRPS価値(環境価値)の6円程度の
合計額でしか買ってもらえなくなったという。「2円も安くなったのでは採算が
合わなくなる」と、三上さんは嘆く。電力会社に環境価値を買ってもらう代わ
りに、グリーン電力証書を発行することも考えられるが、企業でもない市民風
力発電では、いくらで買ってもらえるか分からない証書をあてに建設するのは
リスクが大きいという。
 今の状況を解決する一つは、大規模な風力発電開発によって発電単価を下げ
ること。石川県輪島市では今、NPOの手で風力発電10基以上を稼働させる
「ウインドファーム」の建設が始まっているが、これもコスト削減をねらって
のこと。裏返せば、風に恵まれた地域の人々がお金を出し合って、細々と1基、
2基と建てるようなことは無理ということだ。
 グリーン・ニューディールとは、エコカーなどの環境に配慮した製品の生産
や消費による経済の循環だけでないはず。風の強い、どちらかと言えば過疎地
にあたるような地域で、風力という新しいエネルギー産業が建設時の一時的な
需要を生み出すとともに、恒常的な雇用を創出し、お金が循環する仕組みをつ
くることも立派なニューディールである。
 RPSの制度が改められ、ドイツのような固定価格での買い取り制度になれ
ば、「風況のよい地域では、所有する土地に風力発電を建てる農家などが次々と
現れるだろう」と、三上さんは予言する。
 だが、東京の大きな資本に進出されるだけの今の制度では、そんなことは夢
物語にしか過ぎない。そもそも、「わんず」の運営だって専従職員は、他のNP
Oと掛け持ちをしている三上さん一人。青森県内に立つもう1基の市民風車を
運営するNPOも専従はいない。
 「わんず」の雄姿は、秋田県から青森県にかけて風光明媚な海岸線に沿って
走るJR五能線の列車内からも見られる。だが、この五能線、風の影響でしょ
っちゅう止まる。その頻度といったら、運休しても新聞記事にならないほど。
そんな風をうらめしく思っているかもしれない農漁村の人たちに、「風力」とい
う風の恵みを感じてほしいと思う。

                     森治文(朝日新聞青森総局次長)


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