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3.今年1年のグリーン電力をふりかえって?
                   躍動をはじめたグリーン電力市場
              竹村英明(ISEPプロジェクトマネージャー)

 2008年はグリーン電力にとって大きな変化の年でした。2000年にス
タートしたグリーン電力証書システムの信頼性を第三者機関認証という形で担
保してきたグリーン電力認証機構が、今年5月、経済産業省の外郭団体である
日本エネルギー経済研究所の機構の中に位置づけられ、その名もグリーンエネ
ルギー認証センターと改められました。
 その是非は微妙ですが公的機関に一歩近づいたわけです。経済産業省の中で
もグリーン電力を活用するということが確認され、7月にはグリーンエネルギ
ーパートナーシップという「推進機関」がつくられ、グリーン電力証書の活用を
アピールしはじめました。
 ただし、この動きは環境エネルギー政策研究所(ISEP)や東京都などが
すでに立ち上げていたグリーンエネルギー購入ネットワーク(GEPF)の動
きや、7月に立ち上げた「1億人のグリーンパワー。キャンペーン」と趣旨や動
きが重なるものです。民間主導で育ってきたグリーン電力を「公」の方に強引
に持って行こうとする行為にも感じられました。逆にそれほど、政府側がグリ
ーン電力市場の成長を意識した年ということもできると思います。
 グリーン電力の市場規模は、2007年には約5800万kWhから
1億1000万kWhへと倍増しました。今年2008年の集計は出ておりま
せんが、自然エネルギー・コムでの販売量は9月時点で昨年の5倍増となって
います。実際に市場が大きく膨張しはじめたのです。

 1)グリーン電力についておさらい

 グリーン電力という言葉の定義は少々厄介です。一般的には自然エネルギー
の生み出す電気がグリーン電力であるとされています。その際には電気も環境
価値も一体です。しかし、グリーン電力証書システムというとき、このグリー
ン電力は自然エネルギーの生み出す環境価値部分を指します。自然エネルギー
のつくり出す環境価値に「値段」をつけて、電気だけでない、プラスアルファの
「収入」を自然エネルギー発電所にもたらすことで、発電所設置を促進するとい
うのが、この仕組みの目的です。
 この仕組みの中では、自然エネルギーから生まれた電気は、照明や動力にな
る電気(働き電力)と環境価値としての電気(環境電力)に分けられます。「働
き電力」は発電設備を設置した施設の機器や照明にまわり自家消費電力となる
か、使い切らなかったものは余剰電力として電力会社の送電系統に流れ出てい
きます。「環境電力」も二つに分かれます。送電系統に流れた余剰電力分につい
てはRPS法の規定に基づいて電力会社のものとなり(電力会社がその分の代
金を払っていなければ別ですが)RPS価値となります。送電系統に流れなか
った自家消費分の「環境電力」は発電者側に残り、これはグリーン電力として販
売することができます。
 したがって日本では自然エネルギーの環境価値はRPSとグリーン電力が混
在し、両者を整合性を持って結びつけるシステムはまだありません。およそ
1億kWhの自然エネルギーからの電気の大部分は、電力会社に電気を売って
いる小水力発電や風力発電です。その環境価値の大部分はRPSになり、グリ
ーン電力になっているのは数%と推測されます。市場が膨張していると言って
もまだこんなもので、そういう意味では、市場はもっと何百倍にもなって行く
可能性を秘めているということです。

 2)国内排出権取引の迷走

 グリーン電力がにわかに政府関係機関によって注目されはじめた背景には前
首相の福田ビジョンで、国内排出権取引を速やかに実施することがうたわれて
いたことも関係しています。2008年という年は京都議定書の国際約束を達
成しなければならない年度の1年目です。2012年までには1990年度の
6%削減、現状からは14%削減という重い課題がイヤでも目の前に現れたと
いうことです。
 これを受けての国内排出権取引です。排出権取引というのは、まず日本の温
室効果ガス排出量に寄与している大きな事業所に(1)削減目標を課し、(2)
削減計画を立てさせて努力をさせた上で、それでも削減目標を達成できなかっ
た事業所には、(3)削減を達成できた企業の余剰分を買取ることを認めるとい
う仕組みです。この買取る分を二酸化炭素排出権とか二酸化炭素クレジットな
どと呼ぶわけです。

 つまり削減余力のある事業所は二酸化炭素に値段をつけて売れることになり、
余分に削減するだけの設備投資をしても元が取れることになります。削減のた
めには大変なコストがかかる事業所が削減するよりも、比較的容易に削減でき
る事業所がより多く削減して、困難な事業所の削減量をカバーした方が、日本
全体の削減をより低コストで行うことができるという考え方です。
 ところが日本は京都会議のあと、経済界の抵抗もあり、本気でこの仕組みを
つくってきませんでした。各事業社の排出量を把握したり、削減義務量をはじ
き出したりする準備ができていませんし、削減された二酸化炭素の量をどのよ
うに計るのかの方法も決まっていません。明確な共通ルールなく試行制度がス
タートしたのです。
 そんな中で、もっともしっかりと環境価値を測定し二酸化炭素削減量を算出
することができる仕組みがグリーン電力なのです。そこでこのグリーン電力を
温暖化防止対策法の中で位置づけるための、細部の整備をグリーンエネルギー
認証センターが進めています。国内排出権取引にとってもグリーン電力は重要
なツールになろうとしているのです。

 3)1億人のグリーンパワー

 経産省がグリーンエネルギーパートナーシップを作ったことはご紹介しまし
たが、ISEPは地球環境イニシアティブ(GEIN)やグリーンスタイル(ソ
ニーミュージック系の広報誌)など、いくつかの団体と協力して「1億人のグ
リーンパワー。キャンペーン」を立ち上げました。自然エネルギーを増やして
行くためのグリーン電力を、広く個人のレベルまで知ってもらい活用してもら
うということが、キャンペーンの目標です。
 今年(2998年)の7月7日にスタートしましたが、これは洞爺湖サミッ
トの開催に合わせたものです。オープニングとして、小田急社や東京都の協力
を得て新宿南口サザンテラスで、ダンスとコンサートとシンポジウムをコンパ
クトに詰め込んだイベントを開催しました。
 キャンペーンツールはポータルサイトの「+グリーン」です。太陽光発電や
風力発電などの自然エネルギーを増やすという意味を「+グリーン」に込めま
した。サイトにアクセスし「+グリーン」をクリックしてもらう。それが自然
エネルギーを増やそうという意思表示になるというものです。
 クリック数は現在6万クリックを超えました。キャンペーン期間は来年の
12月、つまりコペンハーゲンで行われるCOP15までと設定しています。
2012年以降の地球温暖化対策が決められるCOP15にむけ、日本の政策
は怪しいが、日本の多くの人が自然エネルギーの飛躍的普及を求めていますよ
というメッセージを届けたいからです。クリック数を現在の10倍、100倍
に延ばしたいと、来年頭からは「1億人のグリーンパワー。09」として、装
いも新たにして再スタートを切ろうと考えています。
http://www.1okunin.net/

 4)ローカルグリーン証書の誕生

 注目を集めはじめたグリーン電力は、CDM(クリーン開発メカニズム)や
JI(共同実施)など京都メカニズムと呼ばれる仕組みによって海外から購入
される排出権(CDMによるCER、JIによるERUなど)とともに、今後
の排出権取引の柱になってくる可能性が高まってきました。それを見越してか、
NPO的な団体から商社のような大きなところまで、いろいろな組織がこの分
野に進出してきています。4つ程度しかなかったグリーン電力証書販売会社
10幾つに増えました。
 CERは価格は安いですが、日本のお金を海外に流出させることになります
し、環境価値は買ってくるが、それが環境を良くする効果(空気を汚さないと
か、資源を無駄に使わないとか、森林を育てるなどなど)は海外においてきて、
日本の中はちっとも良くならないのです。お金をたくさん使って、国内は汚れ
て荒れ果てたままというのは少し変でしょう。
 そこで、仮に価格が高くても、国内をきれいにするという効果もちゃんとあ
るグリーン電力の活用が広がらないといけません。それをよりローカルに「見
える化」し、より地域との結びつきを強めようというのが「ローカルグリーン
証書」の取り組みです。キーワードは当然ながら「地産地消」です。
 自然エネルギー資源はほぼどこにでもあるものですが、地域的に強み弱みが
あります。風の強いところ、日照時間の長いところ、急峻な山間地でたくさん
の川が流れているところ、温泉や地熱の豊富なところ、木材資源が豊富なとこ
ろなど、その強みを生かした自然エネルギーの開発とグリーン電力の活用が可
能になるのです。
 各地のNPOや地域事業社が担い手となりローカルグリーン証書の仕組みが
スタートしました。証書発行会社は自然エネルギー・コムですが、地域の団体
がその代理店となって、独自の証書デザインを作り、地域の電源を開発し、地
域の顧客に販売することができます。

 5)枯渇する?自然エネルギー

 さて今年の私の重要な仕事は、急増するグリーン電力需要に供給を追いつか
せるために電源をさがして、グリーン電力を確保する買い付けでした。バイオ
マス発電を手がけている各地の木材・建材メーカー、大規模な太陽光発電所を
設置している企業、風力発電を独自に建てた自治体、南の島のサトウキビによ
るバガス発電所にもお邪魔しました。
 買い付けに行った先でグリーン電力についての認識を持たれているところは
少なく、これまでは認識していなかった「価値」があるらしい、しかもそれに値
段がついて売れるとは「夢のような話だね」というのが、おおむね最初に抱か
れる感想のようです。
 で「夢のよう」だからすぐに成約となるかというと、逆に「怪しい」とか「信
じられない」となるようです。私も合計すれば数千万kWhの電源を巡ってい
ますが、「売りましょう」といってもらえたのはまだわずかです。あるメーカー
ではバイオマス発電所の場所が、最初は人里離れたところだったのにまわりが
開発されてマンションだらけになってしまい、新住民から公害施設とうとまれ
ているのに、それがグリーンですか・・とびっくりされたこともあります。残
念ながら地域住民に快く受け入れられていない施設は設備認定は受けにくいの
で、実際にはグリーンにはならないとは思いますが。
 グリーン電力の需要は来年も急増すると思われますので、これら交渉中の施
設が電源として成約がなったとしても、おそらく早晩、需要をまかなう絶対的
設備の不足ということが起こるだろうと思います。自然エネルギーが足りない
わけではないのです。自然エネルギーを電気に変える施設が足りない、追いつ
かないということです。
 固定価格買取制度で爆発的に普及を続けるドイツはじめヨーロッパの各国に
比べると日本の自然エネルギー発電所は少なすぎるのです。またエネルギー資
源を発電設備に効果的に低コストで流すためのインフラもまったくできていま
せん。これだけ森林がありながら、日本のバイオマス発電はほとんど建築廃材
で間伐材などほとんど使われていないのです。自然エネルギーが飛躍的に伸び
て行くためには、このことは欠かせない課題であると思います。

 6)来年にむけて

 2004年から4年間にわたり、飯田市にて「おひさま進歩エネルギー」で地
域事業に携わらせていただきましたが、今年の4月からは中野の自然エネルギ
ー・コムに戻りまして、グリーン電力担当となっています。主な役割は本文中
にありましたように「電源開発」。数少ない電源を求めて、全国各地に「買い
付け」の旅をした1年でした。各地でお世話になった皆さん、また飯田市や南
信州でお世話になった皆さんに、この場をお借りして御礼申し上げます。
 グリーン電力は来年さらに大きな市場に拡大することは間違いないと思いま
す。それにあわせ、自然エネルギー・コムも名称を「株式会社エナジーグリー
ン」に改めて再出発します。商品であるグリーン電力の登録商標を、そのまま
社名にするというわけです。最大の課題は、増大する需要に供給を間に合わせ
ることです。
 いまはほとんどグリーン電力に組み入れることができていない小水力発電の
環境価値を市場に売り出すシステムづくり、そしてバイオマスでは森林活用の
インフラづくりへの道つくり(まだインフラの一歩手前です)などがカギだな
あと思っています。その先には、日本のグリーンな電気を扱うグリーンPPS
という夢があります。昨年のSEENでは、やがては東京電力よりも大きくと
書いた記憶があります。実現に向けて、着実に一歩一歩、踏み固めて行きたい
と思いますので、これからもご支援ご協力をよろしくお願いいたします。

              竹村英明(ISEPプロジェクトマネージャー)


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