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2.連載「光と風と樹々と」(22)
   多彩で卓抜な工夫??地域発の温暖化対策・続
                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

■47都道府県代表が一同に会す??地域発の多彩な取り組み
 前回に引き続いて、「ストップ温暖化『一村一品』大作戦 全国大会2008」
の模様を速報的に紹介したい。
http://www.jccca.org/content/view/1956/672/
 昨年10月から12月にかけて開催された各県予選を勝ち抜いた47都道府
県代表が一同に会する全国大会が、丸ビールホール2月9日、10日に開催さ
れた。全国から寄せられた、最終的には1074件にのぼる温暖化対策の地域
的な取組みの集大成である。カタログ・ハウス取締役の竹本徳子さんも、5人
の審査員のお1人だった。
 1組4分間のプレゼンテーション。全体を、取り組んでいるテーマごとに大
ぐくりにして、Aグループの前半は、木質バイオ・排熱利用・太陽エネルギー
利用など、後半は、マイカー利用を減らす取組など、Bグループの前半は、B
DF関連、後半は、ごみ減量、生ごみ堆肥化、マイバック運動などの取組であ
る。Cグループは、普及・啓発などである。
 休憩・講評も含めて、初日のプレゼンテーションは、約5時間という長丁場
だったが、パフォーマンスあり、漫談風あり、ゲーム仕立てあり、飽きること
がなかった。練習の成果だろう、4分間の制限時間を1分以上オーバーしたの
は1チームのみで、ほとんどのチームは、4分間でぴしゃりと終えた。各県予
選を勝ち抜いてきただけに、どのチームも見事に水準を維持している。満員の
観客席も、熱気に充ちていた。
http://www.jccca.org/content/view/1956/672/

■ネガティブな条件と向き合う
 もっとも印象的で感動的だったのは、地域のネガティブな条件を克服しよう、
負の難題と向き合って、それを逆手にとって、地域起こしや環境都市づくりを
めざそうという取組である。
 北海道の中でも、有数の豪雪地帯、人口4000人の沼田町の雪冷熱を利用
して、お米を貯蔵した「雪中米」をはじめとする利雪の取組は銅賞を受賞した。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/hokkaido/
 真摯に環境再生都市をめざす熊本県水俣市の「地域丸ごとISO」の取組。
ISO14001の認証を取得したのは全国で6番目。学校版ISOなど、地
域版のオリジナルなISO創設の草分けである。スライドに「袋小学校」が出
てくる。重傷の水俣病患者を多数出した地域の小学校である(地域丸ごと連携
賞を受賞)。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/kumamoto/
 琵琶湖の汚染を契機とする滋賀県の菜の花プロジェクト
http://www.jccca.org/daisakusen/area/shiga/
 中海の水質浄化活動から始まった鳥取県米子市彦名地区の廃天ぷら油・割り
箸回収プロジェクト
http://www.jccca.org/daisakusen/area/tottori/
も、水質汚染という地域の負の歴史を契機とした取組である。
 前回も紹介した宮城県代表の塩釜水産加工業協同組合の全国一の生産量を誇
る揚げかまぼこの廃食油をBDF化したプロジェクト(バイオディーゼル賞を
受賞)
http://www.jccca.org/daisakusen/area/miyagi/
も、昭和30年代は、廃食油を松島湾にたれ流していたのだという。かまぼこ
製造業者が協同組合をつくって、汚水処理にまず取組み、その経験を土台に、
廃食油の回収とBDF化に取り組んでいる。
 佐賀県代表は、小川の泥をみんなですくって田畑にまく「ごみくい」という
伝統農法の復活のプロジェクトだった。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/saga/
 高度経済成長期に宅地化された住宅団地は、30~40年を経て、最初の居
住者たちが70歳代を迎え、どこでも高齢化がすすんで、地域社会の大きな問題
となっている(仙台市でも深刻である)。福岡県代表は、宗方市の住宅団地での
省エネ運動の取組である。車の利用を控えて歩こう、運動しよう、と省エネ運
動を高齢者の健康づくりと結びつけている。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/fukuoka/

■プラスの特色を生かす
 もちろん地域の資源など、地域に特徴的なプラスの材料を活用した応募も少
なくなかった。審査員には、これらがアピールしたようで、上位入賞が多かっ
た。
 大河ドラマ「風林火山」にちなんで、県の観光協会から借りてきた10kg
にも及ぶという、武田信玄などの衣装に身を包み、市民水車発電所を紹介した
山梨県都留市チームは、パフォーマンスが大受けで、金賞を受賞した。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/yamanashi/
木製水車による小水力発電である。市の名前にちなんで「つるのおんがえし
債」というミニ公募債(総額1,700万円)を発行したが、40人の枠に対
して、4倍の161人から応募があったという(抽選で40人の出資者を決定)。
http://www.city.tsuru.yamanashi.jp/forms/info/info.aspx?info_id=2688
 最優秀賞を受賞した、北山杉の地産地消的な活用を訴える京都府立北桑田高
校森林リサーチ科の取組
http://www.jccca.org/daisakusen/area/kyoto/
 日田杉で有名な、大分県日田市の環境都市づくりは、環境都市賞を受賞。市
内の全小中学校が、学校版環境ISOを取得している。山紫水明の日田杉の町
だからこそ、市民の合意を得るのも容易なのだろう。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/oita/

■学校が未来を開く
 学校の取組としては、ほかにも、全校生徒57人の青森県五戸町立南小学校
の3年生男子、6年生女子の3名で紹介してくれた、小学生が地域にひろげる
エコ活動の取組が印象的だった。
「地球の未来賞」を受賞http://www.jccca.org/daisakusen/area/aomori/
関係者に話を聞くと、校長先生が熱心で、赴任する学校ごとに、熱心に環境
教育に取り組んできたのだという。
 小学校での取組は、香川県代表の三豊市立下高瀬小学校の取組
http://www.jccca.org/daisakusen/area/kagawa/
高知県代表の高知大学の教員志望の女子学生らによる環境劇などの出前講座
なども印象的だった。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/kochi/

■どちらを向くか??市役所職員の視線
 全体に市役所職員の健闘も光っていた。47代表のうち、8県の代表は、市
役所が前面に出た、応募団体名も、市役所という取組だった(前述の沼田市・
水俣市・都留市・日田市も)。
 その中で好評だったのは、福島県代表の郡山市役所環境保全課の若手職員に
よる「チーム環太郎」。課長さんが作曲し、手づくりでレコーディングした手話
の振り付けをまじえたエコソング「Go!Go!環太郎」で、会場を沸かせた。
普通の市役所職員のイメージを突き抜けた軽快感とノリの良さが光っていた。
地方にいるとよくわかるが、地方自治体は、人材の宝庫である。この人たちを
どちらに向かせるかが、大きなカギを握っている。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/fukushima/

■コロンブスの卵
 コロンブスの卵的な新鮮なアイデアが印象的だったのは、群馬県伊勢崎市役
所である。
群馬県は、人口当たりの車の保有台数が日本一であり、それゆえ、マイカー
の抑制がとくに課題となっている地域だが、人口70万以下の地方都市はバス
頼りで、マイカーの抑制が難しい現実がある。伊勢崎市役所のマイカー削減の
取組は、職員に、自宅から職場まで5kmの職員なら5日間に1日の削減でい
い。Nkm離れていたら、1/N日の抑制でいいとしている点である。1km
の近くに住む職員は、毎日徒歩で通勤せよというわけである。これなら職員の
参加感が高まる。月1日だけのノーカーデーに比べたら、はるかに実質的であ
る。
http://www.jccca.org/daisakusen/area/gunma/
 東広島市の女性たちが中心になった「ひろしま環境家族」の「市民版排出量
取引」もなかなか興味深いアイデアである
http://www.jccca.org/daisakusen/area/hiroshima/
 環境家計簿などによる節電の取組は、全国でひろく行われているが、ここの
取組で面白いのは、前年比マイナス6%の節電を目標に、地域に節電を呼びか
け、たくさん節電できた世帯は、余分な節電枠(10%節電できたら、4%分
の節電量が余剰枠になる)を、節電できなかった世帯にゆずってあげるという
発想を持ち込んだ点である。小さな赤ん坊がいるために、節電しにくい家など
を隣近所でサポートしてあげよう、お互いに支え合おうという卓抜なアイデア
であり、実践である。節電運動を地域にひろげていこうというときに応用可能
ではないか。
 
■こんなものがあったらいいな。あった! 東京自転車グリーンマップ
 東京に泊まりがけで出張の朝などに時間が空くと、よく散歩をする。土曜の
朝や日曜の朝は車も少ないので、どこかに貸し自転車屋があればな、と思うこ
ともある(オランダは、ほとんどの全ての国鉄の駅に駐輪場があり、そこには
貸し自転車がある! さすが、自転車が「国技」のオランダだ)。
 東京都代表のアーバンエコロジー東京は、とてもお洒落な、足で調査した「東
京自転車グリーンマップ」を作成・配布し、ウェブでも公開している。
http://urbanecology.jp/tokyo/
面白いのは、プレゼンテーションでも解説があったが、彼らがつくった地図
を見ていると、江戸城(皇居)を中心に、高低差のある江戸の町が見えてくる
ことだ。モーダルシフト賞を受賞した。

■政治家は?
 会場が狭くて、関係者だけで約300席が埋まってしまい、一般の人に参加
を呼びかけられなかったことを始め反省点も多い。もう少し、草の根的な、本
当に市民レベルでの取組が評価されるべきだったのではないか、という審査に
対する要望もあった。
 残念だったことは、審査員の竹本さんも感想でおっしゃっていたが、表彰式
で表彰状を手渡した環境大臣をのぞくと、現役の政治家が1人も出席していな
かったことである。日本の国会には、本当の意味での環境議員が何人いるのだ
ろうか、と常々思っていたが、こういう場所に姿を見せる議員は本当に1人も
いないのである。「低炭素社会への移行」が、政権の最重要課題の1つとなって
おり、温暖化問題が新聞の一面に連日登場するようになっていてさえも。
 もしもアル・ゴアが見ていたら、彼はきっと賛嘆しただろう、と思うのだけ
れど。
(2008年2月19日記す)

                長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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