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1.洞爺湖G8サミットに向けた二年間
              大林ミカ(環境エネルギー政策研究所副所長、
     2008年G8サミットNGOフォーラム環境ユニット・リーダー)

もっとも期待されていた気候変動ではさしたる成果もないまま、洞爺湖サミッ
トが終了した。結局はブッシュ政権がいる間は大きく変わらないということを
示しただけだったのだろうか。それでも、ロシア・米国含めたG8諸国が長期
的な削減イメージに合意したことと国連のプロセスの重要性を再確認したこと
は小さな成果である。現在国際的な議論で話し合われていることが否定される
こともなく、ほとんど何も起こらなかったことが評価できるという声もある。
しかし、気候変動問題の緊急性に対して先進国が責任を果たせなかったことや、
原子力の推進などの懸念材料も残る。

さて、洞爺湖サミットに向けて、ISEPは2006年から活動を展開してき
た。中でも、国内の市民ネットワークの立ち上げに力を注いだが、その活動の
きっかけは、サンクトペテルブルグ・サミットに向けて行われたCivil G8
に招聘されたことだった。

2005年のグレンイーグルズでは気候変動が重要議題となり、2013年以
降の将来枠組について途上国との「グレンイーグルズ対話」が開始、2008
年日本開催のサミットで結果が報告されることが決まった。しかし、三年前は、
地球温暖化についての報道も欧米に比べて圧倒的に少なく、問題の深刻さも世
論レベルで共有されているとはいえず、日本のサミットがどのような役割を果
たせるのか、はっきりとはわからない状況だった。

ただ、国連気候変動枠組条約の下で将来枠組の議論が活発化する過程にある日
本のG8は、必ず、交渉を後押しする機会にしなくてはならなかったし、なに
より、サミット開催を利用して、気候変動への世論を盛り上げ、国内対策を加
速するために、運動を拡げ開発など他分野の運動と連携することは不可欠だっ
た。サンクトペテルブルグ・サミットに向けて、世界中のNGOが集い、シェ
ルパ(首相の個人代理としてサミットを運営する担当官)やプーチン大統領と
意見交換を交わす状況を目の当たりにし、日本でもG8に正面から市民参加を
求めていくネットワークを創る必要があると考えた。

G8に組織的に取り組んできた貧困開発関連の団体の実績を基盤にしつつ、平
和団体とも一緒に「2008年G8サミットNGOフォーラム」を組織、筆者
自身はNGOフォーラムの世話人(運営委員)を担うと共に環境分野団体のリ
ーダーとなった。また、政策議題としての気候変動への注目という点では、幸
い、ISEPもキャンペーンを行ったアル・ゴアの映画や、IPCCの報告書
発表などが相次ぎ、マスコミの露出も高まり、人々の気候変動への関心がサミ
ットに向けて大きく盛り上がっていった。

市民参加という観点からは、政府との対話について大きく進展したと言ってよ
い。ISEPは、幾多ある日本の環境団体の一つにすぎないが、二度にわたる
ロシアへの招聘や、ドイツ・メルケル首相との非公開の懇談会、ドイツでの
Civil G8への招聘など、日本を代表するかのような形で参加する機会を得る
ことができ、この実績は日本政府と交渉する際に大いに役立った。ロシアやド
イツでの経験を踏まえた話し合いが可能となり、関連大臣会合での発言や、
Civil G8、サミット開催時のNGOへのメディアパスの発行などを要求した。

環境については、G20(第四回グレンイーグルズ対話)や環境大臣会合への、
NGOの参加と会議中の正式な発言や発表が実現した。全体では、ISEPが
事務局を担い、各国シェルパとの対話を含む二日間にわたる「Civil G8対話」
を開催した。この国際会議には、外務省が多大な開催実務支援を提供してくれ、
海外の財団からも財政支援を得ることができた。また、サミット開催時には、
ルスツに設けられたメディアセンターへNGOのアクセスを確保、今までのサ
ミットで初めてNGOの記者会見場も設けられ、会見には記者たちが詰めかけ
る形となった。福田首相との個別対話や、国際NGOとの対話が実現できたこ
とも成果の一つだ。また、資金的に、環境NGOの活動を支えるためのG8が
地球環境基金でプライオリティーを置かれたことは、この二年間を通じて、環
境だけではないNGOフォーラム全体への大きな支えとなった。

これらの活動を追求したのは、他の国で実現しているものが日本で実現しない
のはおかしいという思いが強かったためだが、成果が単なる形式に陥ってしま
う可能性も否めない。例えば、平和的手法の団体であるにもかかわらず、特に
反グローバリズムや反捕鯨活動を理由として、明らかに過剰な警備体制が敷か
れ、入国の際の査証発給の遅延や拒否、長時間の尋問、デモでの逮捕などが行
われた。海外の一部“過激な”活動をおもしろおかしく報じ、あたかもNGO
は危険であるという印象を煽ったメディアも存在する。政府が、広い意味での
市民運動の多様性を認め、NGOを政策決定上の専門家・ステークホルダーと
して尊重することがなければ、本当の意味でのパートナーシップは築くことが
できないし、政策提言型NGOが日本で育つことはない。

市民参加についてもう一つ強く感じたのは、メディアや一部の人のG8への関
心は高く、政策提言型NGOは盛り上がっていたが、草の根の市民運動の参加
があまりなかったことだ。確かに実施レベルでは、何も決まらないサミットな
どどうでもいいのかもしれないが、急速に草の根のネットワークや労働運動の
元気がなくなり市民社会全体の力が弱くなっているように思われた。ISEP
もその一端として努力を続けているところだが、選挙制度の見直しや地方自治
のあり方の変革など、市民社会活動基盤の再構築が必要だ。

洞爺湖が終わり、一気に醒めるかと思われたが、気候変動問題そのものへの関
心はまだ継続しているようだ。特に、昨年からのG8関連の報道で、実は日本
が国際的には気候変動政策で遅れをとっていることが明らかにされたことは良
かった。自然エネルギー政策の遅れもますます自明となり、いまだに太陽光発
電一辺倒なのが少し残念ではあるが、国会でも再び議論が始まろうとしている。
いよいよ本番の国連のプロセス、2010年のCOP15に向けて、国内対策
も国際議論も、勝負を迎えている。

最後に、ここには紹介できなかったが、ISEPが深く関わったもの以外にも、
北海道で市民ネットワークが誕生したり、連続勉強会や数々の国際会議の実施
や、札幌で大きな市民サミットが開催されたり、短冊を用いたキャンペーンが
国際的に取り組まれるなど、NGOフォーラム関連でもそれ以外でも活発な活
動があったことを記しておく。多様な運動は多様な効果を及ぼし、時には大き
な力を持つ。例えば、環境や国際問題ではないが、サミットに先立って、初め
て日本政府がアイヌ民族を先住民として認めたことは、洞爺湖サミット開催が
もたらした一番の成果と言って良く、このような「利用方法」こそが本命なの
かもしれない。

日本のNGOは、少なくとも日本の政策を良いものにしていく義務を負うし、
サミットが自国で開催されるということは、特に途上国に対して、自らも先進
国に住む市民としての責任を担っているとわたしは考える。NGOフォーラム
そのものは報告書作成などを行い、11月の解散に向けて動いているが、
2010年にCOP10が名古屋で開催される生物多様性グループなどは、今
回の活動を機にネットワークが組織され、今後も活動を続けていく。10月初
旬、ISEPは、環境ユニットとともに、気候変動と生物多様性について、今
後の展開に向けた国際会議を開催する。お知らせはまたお送りするので、どう
ぞ皆さんにもご参集いただき、議論に加わっていただくことを期待している。

              大林ミカ(環境エネルギー政策研究所副所長、
     2008年G8サミットNGOフォーラム環境ユニット・リーダー-)


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