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2.バリ会議で合意された個別争点と日本政府の対応
             山岸尚之(WWFジャパン 気候変動グループ長)

■バリで合意された個別争点

今回のバリ会議で合意された「ロードマップ」では、メインであるプロセスの
設立に加え、4つの構成要素(building blocks)とよばれる個別争点分野に
関する合意もその重要な内容であった。その4つとは、「緩和」「適応」「技術」
「ファイナンス」である。

「緩和」分野に含まれる中心的な争点についてはここでは重複を避けるために
省くが、今回の会議に特徴的であったものとして、「途上国における森林減少か
らの排出量削減」、通称、REDDと呼ばれる争点があった。世界の温室効果ガ
ス排出量の約2割相当が森林減少に由来することから徐々に注目を集めてきた
この問題は、今回、森林国インドネシアでの会議開催ということもあってとり
わけ注目が高かった。いくつかの重要な論点について議論がされたが、この争
点はむしろ今後の交渉の中で特に重要な役割を持つことになる。

2つ目の「適応」については、昨年より引き続き議論となっていた適応基金の
運営主体に関する争点が一応の決着をみたことで、前進があったといえる。以
前より先進国側はこの基金の運営主体としてGEF(地球環境ファシリティ)
を候補に挙げていたが、途上国側は、先進国の影響が強くまた利用に関する手
続きが煩雑なGEFが運営主体となることには強く反対した。今回、妥協案と
して、適応基金理事会という新たな組織を運営主体として設立することで合意
がされた。

3つ目の「技術」という争点分野では、個別の争点として、技術移転に関する
指標の作成を決定した他に、技術移転に関する基金の設立を途上国側は行なっ
た。これには先進国側が難色を示し、最終的にはGEFの下での「戦略的プロ
グラム」の設立ということで妥協が図られた。

4つ目の「ファイナンス」については、これ単独では大きな進展はなかったが、
先の「適応基金」に関する合意や「技術」に関するGEFの「戦略的プログラ
ム」の合意という形で、他の争点分野の中で実質的な前進が見られたことにな
る。

このように、今回の「バリ・ロードマップ」では、メインとなった将来枠組み
の交渉プロセスの設立の他にも、それらを構成する重要な分野でも一定の進展
が見られた。ただし、適応基金をのぞけば、それらもやはりほとんどが「今後
何をするか」に関する合意であったことには留意する必要がある。

■日本政府の対応

今回、日本政府は当初から「アメリカ、中国、インドが入った形でプロセスが
設立されること」に最大の重きを置いていたようである。そして自らの役割を、
アメリカ、EU、そして途上国の間の調整役として位置づけていた。ただし、「調
整役」といえば聞こえはいいが、これは、国内の省庁間の合意や無いことや産
業界の強いロビーにより、積極的な立場を明確にできない事情を反映している
面があったことは否定はできない。

そうした曖昧さゆえ、京都議定書の下で採用された「総量での排出量削減」と
いう約束形式から逃げようとしていると解釈される提案を序盤に行ない、NG
Oから「今日の化石賞(Fossil of the Day)」を受け取る場面もあった。

特にその曖昧な立場が表れたのは、最終日のAWGの文書に合意の時であった。
最終日の会合で、IPCC第四次評価報告書から引いた「25~40%削減」
などの強い数字への言及がある文言に対して、カナダとロシアのみが反対を発
言したが、その後にほとんどの国々がそれを支持する発言をし、それら2つの
国々も最後には合意することになった。そうした中、日本は一貫して沈黙を守
っていた。このような重要な議題の最終局面で「発言をしない」という形での
立場の表明には、日本の消極性が目立つ結果となった。

2008年は、今回合意された交渉が本格的にスタートし、自らが議長国を努
めるG8が開催されるという意味で、日本にとっては自らの考え方を国際的に
示すチャンスであると同時に、その失敗は日本の国際社会での役割の更なる周
辺化を意味するという意味で危機でもあるといえる。その年に突入していくに
あって、自国の考えを前向きに示せなかった今回の会議が残した反省は大きい。

             山岸尚之(WWFジャパン 気候変動グループ長)


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