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1. 風発:サムソ島の10年
                       飯田哲也(ISEP所長)

「自然エネルギー100%アイランド」のデンマーク・サムソ島に招へいされ、
雑事の合間を縫って、訪問してきた。計画から10周年を記念するワークショ
ップに呼ばれたのだが、当初から関係を保ち、幾度となく訪れ、自ら日本へも
紹介してきた経緯から、「10周年」に出席して感慨深いものがあった。

とくにデンマークは、2001年にブッシュと親しいラスムッセン政権に代わ
って以降、反環境イデオローグのロンボルグをアドバイザーに据えて、環境政
策、とりわけ再生可能エネルギー政策に対して、異常なまでの冷遇が今日でも
続いている。そうした社会環境のもとでは、再生可能エネルギー関連の団体は、
維持・継続だけでも困難で、多くの団体は、縮小や閉鎖に追い込まれている。
しかしサムソ島では、真新しいエコロジー建築でできた「エネルギーアカデミ
ー」という新しいプロジェクトに成功していた。2001年以降のデンマーク
には、ほとんど注目すべき社会イノベーションは見あたらないが、唯一、サム
ソ島だけは多くの環境知性が推奨する事例となっていることにも、それは表れ
ている。

さて、サムソ島の10年の成果はどうだったか。2005年に島内の自然エネ
ルギーで99.6%の自給に達しており(開始時の13%)、ほぼ「100%」
と言えるだろう。とくに電力については、11基の陸上風車と15基の洋上風
車(すべて島民出資)で100%をはるかに超える供給を達成している。熱は
40%強の供給だが、麦わら、木材チップ、太陽熱など地産地消かつ地域協働
型のエネルギー利用が進んだ。4カ所の小さな地域熱供給だが、もちろん
CO2フリー(中立)であるほか、麦わらが追加収入になり、化石燃料より安
く、出資を通じた収入があり、若干の雇用増にも繋がるという、「5重の配当」
である。交通部分は、まだ試験レベルに留まっているものの、総じて成功とい
えるだろう。

サムソ島を「成功」として知らしめているのは、こうした物理指標で見た側面
に加えて、さまざまな社会側面での取組みである。島民との合意形成や粘り強
いコミュニケーションを通じて「地域のオーナーシップ」による自律的なエネ
ルギーのあり方を維持する一方、対外的には、EUや日本など海外に拡がる社
会ネットワークの「核」となっている。世界で数多い「自然エネルギーアイラ
ンド」プロジェクトの中で、サムソ島は、物理側面と社会側面の両面で、おそ
らく唯一、実質的に「成功」を収めた例ではないか。これは、スポークスマン
であり、プロジェクトリーダーであり、そして島民であるゾーレン・ハーマン
センという卓抜なコーディネータのリーダーシップによるところが大きい。

これからの10年は、気候変動や石油需給(ピークオイル)、原子力ルネッサン
スなど、70年代以来、ふたたび「エネルギー論争の時代」に突入しようとし
ているが、サムソ島は、「デンマークの灯台」から「世界の灯台」として期待さ
れるのではないか。サムソ島のワークショップには、ちょうどinfoseヨーロッ
パ(リオサミットで結成された持続可能なエネルギー開発を目指す南北協力の
NGO)の15周年のワークショップを兼ねていたこともあって、じつに多彩
な人が集っていた。英国のCAT(Center for Alternative Technology)から、
カナリア諸島の環境エネルギー事務所から、マケドニアやポーランドの環境エ
ネルギー事務所から、欧州委員会から、デンマークエネルギー庁から、等々。
ここから、サムソ島の次の10年の歩みがはじまる。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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