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2.寄稿「10年前と何が変わったのか? メタボは進むが、デジャヴは続く」
                      石井徹(朝日新聞編集委員)

 9月1日から「エヴァンゲリヲン新劇場版:序」が公開される。思えば10
年前には、テレビアニメから始まったブームを受けて作られた劇場版「新世紀
エヴァンゲリオン」が大ヒットしていた。新作のストーリーは私も知らないが、
前作について知っている人が多いと思う。2000年に南極に隕石が落下、海
面上昇や天変地異で世界人口の半分が死亡した「セカンドインパクト」から
15年、やっと平穏な日々が戻ったと思われた日本が舞台。主人公の少年「碇
シンジ」はいつも半そで、窓からは虫の声が聞こえる温暖化後の地球を彷彿と
させる世界だった。

 あれから10年。堂々巡りをしているうちに温暖化は確実に進んだ。
1999年のノストラダムスの大予言は当たらなかったし、2000年に隕石
も落ちなかったが、47歳になった私の体はメタボリックシンドロームが進み、
世界はアニメやコンピューターゲームが描く暗色の未来に近づきつつあるよう
に感じる。

 「エヴァ」を持ち出すまでもなく、地球環境問題をテーマに取材をしている
としばしばデジャヴ(既視感)に襲われる。1997年夏、私は環境庁(当時)
クラブ詰めの記者として京都会議に向けた日本の対応を取材していた。あのこ
ろも通商産業省(現経済産業省)と環境庁は対立していた。国際交渉の場に2
種類の提案を持っていくこともしばしばだった。両者の対立はいまも続いてい
るし、世論を頼みにした環境省が最終的に腰砕けになるのも同じだ。

 「日本は世界で最も省エネが進んでいるので削減余地がない」「過去の省エ
ネ努力を反映しない条約は不公平だ」「排出削減は経済統制だ」「欧州連合(E
U)は格好つけているだけでずるい」「国内で排出量が伸びているのは民生部門。
家庭の排出を減らすべきだ」――これは京都会議で聞いた話だったか? それ
とも中央環境審議会と産業構造審議会の合同会合でやっている京都議定書目標
達成計画の見直しの中で出た話だったか? いずれにしても日本経団連の言っ
ていることは10年前と変わらない。

 ただ、個々の企業は10年前からいろいろだった。トヨタのハイブリッドカ
ー「プリウス」が、「21世紀に間に合いました」というコピーとともに登場し
たのは京都会議の2か月前だ。その時のテレビCMはこんなのだった。《自転車
で幼稚園に向かう母娘の会話。娘「おとなはいいよね」/母親「えっ?」/娘
「地球が温暖化するころ、もう、大変なんだから子どもは」/母親「なに言っ
てんのよ、ぶつぶつ」》

 プリウスは温暖化のおかげで大ヒット。当時は社長だった奥田碩氏は、温暖
化対策に前向きな発言をしていたと思ったが、日本経団連会長になると頑強な
産業界の代弁者となった。そのへんは、いまの御手洗冨士夫・日本経団連会長
(キヤノン会長)も同じだ。どちらも温暖化対策では、むしろ勝者になる可能
性が高い企業だと思われるのに、産業界が実質的に電力業界や鉄鋼業界に牛耳
られているからなのか? そのあたりの疑問はいまだに解けずにいる。

 また環境省が05年度から始めた自主参加型の国内排出量取引制度には、サ
ントリー、日本ビクター、日産車体など約150社が参加している。日本経団
連が反対の姿勢を崩していない中で、個々の企業は「いずれ日本にも国内排出
量取引制度が入る」と見て、その準備に一生懸命である。日本経団連の頑なな
姿勢も、国内対策での交渉に向けた産業界総体としての表向きの立場というこ
とで、割り引いて考える必要があるかもしれない。

 報道についても触れておくべきだろう。メディアはいま、10年ぶりの温暖
化報道ブームとなっている。IPCCの第4次報告書が出たとか、G8サミッ
トで2050年半減がテーマになったとか、来年から京都議定書が始まるとか、
いろいろ理由はあるが、何よりも温暖化の影響が顕在化してきつつあることが
大きいと思っている。報道もいずれ盛り上がってくるだろうとは思ったが、昨
年までの温暖化報道に対する社内の冷ややかな目を感じてきた身としては、と
まどいも隠せない。

 1996年188件、97年1192件、98年865件、99年650件、
2000年668件、01年913件、02年803件、03年603件、
04年686件、05年1116件、06年815件――これは朝日新聞に掲
載された「地球温暖化」というキーワードを含む記事の数である。

 京都会議のあった10年前に突然増え、その後は半分程度になった年もある
が、京都議定書が発効した05年に再び1100件台を回復。今年はこれまで
にすでに1000件を超えている。たぶん過去最多になるはずだ。熱しやすく、
冷めやすいメディアの特性を表しているのかもしれない。温暖化の記事が少な
くなるのは悪いことではない。あくまでも、温暖化の影響が小さければの話だ
が、この場合はちょっと違う。影響は深刻さの一途をたどりながら、メディア
も多くの国民もほかのことに関心が向いていたのである。今後は温暖化の影響
がより深刻さを増し、関連記事も年々、過去最多を更新しそうである。

 日本の温暖化対策レジームを変えるには、なによりもまず政治のリーダーシ
ップが大事だ。政治家にがんばってもらわなければならない。でも、安倍改造
内閣の顔ぶれを見ると、いかにも心許ない。京都会議の時に外務政務次官だっ
た高村正彦防衛相や町村信孝外務相など10年前にも見た顔や、鴨下一郎環境
相や増田寛也総務相など新しい顔など様々ではある。鳩山邦夫法務相は「環境
党宣言」なる本も書いている。だが、安倍首相をはじめとして環境を政治的に
利用しようとする人はいても、「気候変動は人類の最大の問題だ」と公言する欧
州の首脳のような政治家は見あたらない。

                      石井徹(朝日新聞編集委員)


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