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1. 風発:カーボンオフセット考
                       飯田哲也(ISEP所長)

しばらく前から、「カーボンオフセット」をめぐって、水面下でさまざまな「蠢
き」がせり上がってきている。企業向けのカーボンオフセットセミナーが大入
りの盛況となり、日本郵政がカーボンオフセットの年賀状を発表、ローハスを
標榜するソトコト誌も、雑誌そのものもカーボンオフセットを呼びかけつつ、
最新号ではカーボンオフセット特集を組んでいる。ここ数ヶ月で、カーボンオ
フセットがあれよという間に時代のキーワードとして浮上する中、東京都は、
起動変動対策方針(6月1日)の中で、キャップ&トレードと域内取引を提言
し、9月には環境省が正式に「カーボンオフセット検討会」を発足させた。こ
れで、いよいよ「水面上」での動きも交えて、「カーボンオフセット」は制度化
へのレールが引かれることになった。

そもそも、カーボンオフセットとは何か。辞書的な定義は省略するとして、日
本で想定されるものとしては、(1)海外のクレジットの小口化、(2)国内の
クレジットの取引、の2つが想定される。前者は、基本的にCDMなど、正式
に認証されたクレジット(CER)を前提としているが、後者は、現状ではま
ったく任意となる炭素削減クレジット(2−1)と、炭素価値を含む暗黙の共
通合意のもとで第3者認証機関(グリーン電力認証機構)が認証するグリーン
電力証書(2−2)から構成される。

上記の環境省の検討会は、(1)の輸入クレジットを温暖化対策法が定める算
定・報告・公表制度の中に盛り込むための制度的な地ならしであると同時に、
(2)の国内クレジットの認証のあり方も視野に入れている。その国内クレジ
ットは、大きく次の4つの流れから「市場」が生みだされる可能性のある。(2
−a)環境省自主参加型国内排出量取引制度からの発展、(2−b)(主に経産
省領域の)省エネルギー事業からの発展、(2−c)東京都気候変動戦略の中で
提言されている中小事業所や家庭部門からの自主取引、そして(2−d)グリ
ーン電力証書を用いたカーボンオフセット、の4つである。

今後、これらが相互作用しながら、カーボンオフセットの市場創設とその制度
化が進展していくことになる。環境省のカーボンオフセット検討会はその第1
歩であり、経産省も国内クレジットの取引を睨んで省エネ法を改正する方向で
ある。グリーン電力証書については、まずは当研究所が、カーボン価値につい
て検討の場を今秋から設ける予定をしている。カーボンオフセットが典型的な
「政策市場」であることから、これらが整備された来年(2008年)が、日
本では「カーボンオフセット元年」となる。

ところで「世間の空気」は、カーボンオフセットへの過剰な期待が先行してい
るように思われ、微妙な危うさを感じる。かつて、エネルギー専門家の集まる
ワークショップで、「社会が環境指向になった未来は、排出権取引が日常化して
いる」というストーリが参加者の多くの意見から提示された。「排出権取引=環
境社会」という、あまりに浅薄な考え方に軽いショックを受けたが、それがあ
る側面では現実になろうとしているのではないか。念のために言うが、排出権
取引やカーボンオフセットそのものの是非の問題ではない。「カーボンオフセ
ット=(単純に)環境によい」と考える、表層的な思考の蔓延する社会への懸
念である。

カーボンオフセットに対しては、大きく4つの懸念が提示されている。(1)免
罪符としないこと、(2)不確実性(計量の誤差)が大きいこと、(3)追加性
要件の検証、(4)「質」の悪いクレジットの混入によるシステムの信頼性崩壊、
である。これらをクリアすることは、そう簡単ではない。たとえば、「免罪符と
しない」という意味は、自分の削減を尽くしてからオフセットする原則を確立
し、そのクレジットも国内を優先するという原則が必要と思われるが、現状は
それが逆転しかねないおそれがある。また、国内でも試行されている、植林を
対象にしたカーボンオフセットは、もっともコントラバーシャル(議論の余地
が大きい)ものである。先行して認証機関のあるグリーン電力でも、計量や追
加性要件は、必ずしもクリアではなく、積み残している課題も残っている。

「炭素経済」に向かう流れでは必然の、しかし補完的な仕組みであると思われ
るから、最初から反対する必要はないが、過度な期待も禁物である。一つ一つ
信頼性をベースに社会的なルールを組み立てるという姿勢で、自らも当事者の
一端として、ルールと市場づくりの場に臨みたいと思う。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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