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2. 連載「光と風と樹々と」(19)
 「美しい星50」の悪夢――「原子力ルネサンス」の本当の狙い
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

■原発復活になりふり構わぬ二代のブッシュ政権
 7月13日に、アメリカのメリーランド州で原発1基の建設・運転一括許可
申請がNRC(米・原子力規制委員会)に提出された。申請が認められ、実際
に着工されることになれば、1978年を最後に途絶えていた新規着工が、約
30年ぶりに復活することになる。
 2008年末までに約30基近い建設・運転一括許可申請が見込まれるとい
う。原子力産業は、「原子力ルネサンス」を謳っておおはしゃぎだ。 ではなぜ
今ごろになって電力会社側は、原子力復活をもくろむのだろうか。
 背景には石油や天然ガス価格の高騰と「地球温暖化問題」があるが、アメリ
カの場合、直接的な理由は、二代のブッシュ政権による強烈なテコ入れである。
 アメリカの電力会社にとって原発離れの要因は、突き詰めれば、経済性への
不安と認可申請の煩雑さにあった。この2つを解決すればいいというわけだ。
 アメリカでは、建設前の建設許可申請と運転開始に先立つ運転許可申請とい
う二段階の申請になっていた。電力会社側にとっては、建設許可申請を得て着
工し、工事は進捗したものの、政治状況の変化などによって、運転許可申請が
得にくい、運転許可申請に時間がかかるというリスクがあった。これを父親の
ブッシュ政権時代に、1992年成立のエネルギー政策法で、着工前に一括し
て許認可が得られるように、しかも運転開始前の公聴会は、特別に問題がある
ことが示された場合以外はスキップできるように「改正」したのである。しか
しこのような「改正」にもかかわらず、電力会社側からの発注復活の動きは、
その後10年以上なかった。
 そこで息子のブッシュは、電力会社側に直接的な経済的なメリットを与える
ことにした。先進諸国で例外的に、日本でなぜ原発の着工・運転開始が続くの
かを研究し、その最大の秘訣が「経済的なインセンティブ」の提供にあること
を学習したのだろう。アメリカになじむような手法で、経済的なメリットを提
供することにした。市場に委ねるのが、ブッシュ政権の経済政策の基本だが、
目的のためには、市場に積極的に介入するというご都合主義の見本のような政
策である。ブッシュ親子やチェイニー副大統領を代表とするその側近は、石油
資本とともに、原発建設を得意としてきた大手ゼネコン・ベクテル社と密接な
関わりがある。
 2005年8月8日に成立した「包括エネルギー政策法」に盛り込まれたの
は、新規建設の最初の6基までに対する「許認可手続きの遅れに対する損失補
償」(最初の2基には損失の100%(5億ドル(=約600億円)を上限)、
続く4基には50%(2.5億ドルを上限)を連邦政府が補償(計20億ドルを
上限)、「融資保証」(連邦政府が建設時の借入金の最大80%までの低利融資
を保証(再生可能エネルギー施設や石炭ガス化事業にも適用))、「発電税控除」
(運転開始当初の8年間は1.8セント/kWhの発電税を免除。100万k
Wあたり年間1億2500ドル、合計600万kW分が上限。なお発電税控除
は、2007年末までに運転開始した風力発電設備に対しても、1.9セント
/kWhの控除を10年間実施する)である。最初の6基に大きなアメを与え、
何が何でも発注を復活させようというなりふり構わない手法である。
 2008年の大統領選挙は、現状では民主党が雪辱する公算が強い。200
9年1月中旬のブッシュ政権退陣までに、建設・運転一括許可を何とか取り付
けたいというもくろみもあるだろう。原子力復活の動きに対して、ヒラリー・
クリントンやオバマなどの民主党候補がどういう態度をとるのかも注目される。

■ポスト京都の焦点としての原発
 京都議定書の重要なポイントの1つは、他国との排出枠取引や共同実施を行
った分を自国の削減量としてカウントできるようにする CDM(クリーン・デ
ベロップメント・メカニズム)の技術として、安全性や廃棄物問題などがある
ために、原子力発電を認めていないことである。原子力産業側としては、当然、
原子力発電を認めさせたい。CDMとして原発が認められれば、例えば日本政
府がODAなどのかたちで資金を提供し、ロシアや中国、ベトナムなどに原発
を建設し、原発による温暖化ガスの削減効果分を日本の削減量にカウントする
ことが可能になる。
 日本政府や東芝や日立・三菱などにとっては、国内での実質的な削減はサボ
ることができる、資金力の乏しいこれらの国々に日本のお金(国民の税金)で
原発をつくってあげることができる、原子力産業の生き残りも日本主導ではか
ることができる、このような前提のもとで、アメリカや中国・韓国などもポス
ト京都の枠組みに引き入れることができる、など、一挙四得の妙案である。だ
からこそ、東芝はウエスチング・ハウスを子会社化し、日立はGEと事業統合
をはかり、三菱重工はフランスのアレバ・グループと提携したのである。
 来年7月の洞爺湖サミットで最大の焦点と目されているのは、2013年以
降のポスト京都の枠組みづくりである。安倍政権は5月に、「美しい星50
(Cool Earth 50)」という、地球全体の温暖化ガスの排出量を2050年まで
に半減させるというプランを発表したが、その基本的な前提は、おそらく原子
力発電による排出枠取引や共同実施の進展であろう。
 原子力産業側が「原子力ルネサンス」を謳い、ブッシュ政権が原発新設の駆
け込み申請を待望するのも、原発にCDMのお墨付きを与え、東欧・ロシア、
途上国での原発大量発注への道筋をつけることに大きなねらいがあるだろう。
ポスト京都の枠組みへアメリカが復帰するための取引材料として、原子力にC
DMのお墨付きを与えることが利用される可能性も少なくない。実際、5月に
発表されたIPCCの第4次報告書の第3作業部会報告でも、温暖化対策とし
て原子力が肯定的に言及されている。
 洞爺湖サミットについて、環境NGOや世論、メディアがもっとも警戒すべ
きは、これらの点であり、官邸や経済産業省、原子力産業側のこのようなねら
いを浮かび上がらせていくことが重要である。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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