上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
1. 風発:ブーム=バースト
                       飯田哲也(ISEP所長)

【当研究所のメルマガおよび風発の発行をしばらく中断しており、ご迷惑をお
かけしました。今号からリニューアルして再開しますので、ご期待ください。
今後ともよろしくお願いいたします。】

ジョージ・ソロスは、市場にときおり生じる、いわゆる「バブル現象」を「ブ
ーム(暴騰)=バースト(暴落)理論」として説明した。この市場におけるブ
ーム=バーストは、その上昇トレンドが市場参加者の潜在的な期待バイアスを
強化してますます暴騰し、その期待が懸念に反転した瞬間に暴落が生じる不連
続な動きである。1987年のブラックマンデーや1997年のアジア通貨危
機、そして日本のバブル経済もまさしくそうであった。

さて、日本の自然エネルギーもこのブーム=バーストの歴史をたどってきた。
1980年代初頭に、太陽熱温水器がにわかにブームとなり、一転、売上げが
急減した後は、現在に至るまで長期低迷傾向にある。風力発電は、1998年
に電力会社が導入した「長期購入メニュー」によって、意図しない「小さなバ
ブル現象」が生じたものの、新エネRPS法の施行された2003年あたりを
ピークに、市場が低落しつつある。そして、太陽光発電も、政府の補助金の打
ち切られた2005年をピークに、ついに2006年には初めての前年比減を
記録したのである。つい先日まで、「日本は太陽光で世界一だ」と見栄を張って
いたのも、今は昔。今や、累積でもドイツの約半分(日本が約150万kW、
ドイツが約300万kW)、単年度の市場規模ではドイツの四分の一程度に過ぎ
ず、生産でもドイツの企業は急成長している。

世界の自然エネルギー市場は、2004年に世界全体で約3兆円規模が、
2005年には約5.5兆円規模へ、そして2006年には約8兆円規模への
急拡大している。こうした世界のトレンドから、日本は一人取り残されている。
世界的に急成長する自然エネルギー市場が、逆に冷え込みつつある国は、少な
くとも先進国の中では日本以外には、見あたらない。

自然エネルギー市場は、世界を瞬時に駆けめぐるグローバル金融市場やグロー
バル株式市場とは違って、「政策市場」と呼ばれる。それぞれの国や地域の「環
境エネルギー政策の政策環境」が市場に強く影響する自然エネルギー市場の動
きは、ソロスの「ブーム=バースト理論」では説明できない。むしろ、アメリ
カの風力発電市場と同じく、「ゴー=ストップ市場」に近い。アメリカでは、連
邦政府が風力発電への支援策(とくに生産税減税)が頻繁に中止されたり再開
されるために、それに応じて風力発電市場も普及したり滞ったりするなど、不
安定な連邦政府の政策に強い影響を受けてきた。

日本は、政治的に不安定なアメリカの自然エネルギー市場に似ているが、もっ
とお粗末で、より深刻である。太陽熱市場も風力発電市場も、そして太陽光発
電市場でさえも、けっして慎重に練られた支援策のもとで普及したのではなく、
「思いがけない政治的偶然」によって急激に普及したというのが、出発点であ
る。ところが、新興市場が成長するにつれて、既存のセクターがさまざまな巻
き返しに出る。太陽熱温水は、既存のエネルギー三事業(電力、ガス、石油・
LPG)の厳しい競争の中で排除され、風力発電は、電力会社による「系統に
制約がある」という口実で締め出された。太陽光発電も、風前の灯火となって
いる。

年金問題や臨界事故隠しなど、国内では「偽装社会」の化けの皮が次々に剥が
れつつあるが、国際社会から見ても日本は「ロストワールド」となりつつある。
2050年に二酸化炭素半減を目指す安部首相の「美しい星」も、内実の欠落
と下品な思惑が見透かされていて、国際社会からは、まともに相手をされてい
ない。こうした環境エネルギー問題だけでなく、国際捕鯨委員会で『水産庁の
対応は子供じみた癇癪』と世界にあきれられたり(グリーンピース)、従軍慰安
婦問題では、米紙ワシントン・ポストへのお粗末な意見広告で逆に批判の声を
高めたあげくに米下院外交委員会決議が可決された。

知日派の米国人学者が最近相次いで出版した好著がある。レナード・ショッパ
(ヴァージニア大学教授)の『「最後の社会主義国」日本の苦闘』(毎日新聞社)
は、少しキワモノっぽいタイトルながら、「見返りの乏しい社会改革に努力する
よりも逃げる方が容易いために、企業と女性の離脱が進行している」という日
本の社会分析を提示している。マイケル・ジーレンジガー(UCバークレー客
員研究員)の『ひきこもりの国』(光文社)では、日本にしか存在しない「ひき
こもり現象」を写し鏡にして、日本の停滞と社会的な機能不全を見事に分析し
ている。

日本が「バースト」する前に、再生できるか。ジーレンジガーが紹介している
韓国再生のエピソード「危機の原因は自分たち自身の内部にあった」は示唆に
富んでいる。逃げず、ひきこもらず、「ムラ」から「開かれた社会」へと、自分
自身が変わっていくしかないのだろう。

                       飯田哲也(ISEP所長)


-・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://isepseenarchive.blog88.fc2.com/tb.php/306-b4478ba6
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。