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1. 風発:「塹壕」に立てこもる経団連
                       飯田哲也(ISEP所長)

 中央環境審議会と産業構造審議会の合同で進めてきた京都議定書目標達成計
画(いわゆる目達計画)の検証がそろそろ大詰めを迎えている。そこで、気候
ネットワークが先日公表した資料(「経団連自主行動計画はなぜ問題か」
2007年3月17日)を引用しつつ、前号の「経団連自主行動計画=規制逃
れの塹壕」論を再論しておきたい。

 時代は、1997年のCOP3(地球温暖化防止京都会議)に遡る。当時、
経団連は、京都会議を前にして経団連自主行動計画を定めた(1997年6月
17日)。この時点での経団連自主行動計画の削減目標は、1990年比±0%
であった。その後、京都議定書で目標数値が定まり、京都議定書目標達成計画
(旧大綱)での産業界への割り当て(1990年比マイナス7%)とのギャッ
プがあったものの、それを曖昧にしたまま、京都議定書批准・発効に至った今
日でも、産業界には「強い規制」は導入されていない。この経緯を見ると、経
団連自主行動計画は、「見かけ上の目的」(=温室効果ガスの削減)よりも「真
の目的」(=削減規制の回避)を果たしていた。これを「経団連自主行動計画=
規制逃れの塹壕」論と呼ぶ。

 とはいえ、産業界は経団連自主行動計画のもとで過去省エネに務め、十分に
削減しているという「乾いたゾウキン神話」がある。この「乾いたゾウキン神
話」に基づいて、経済界は、1990年以降の温室効果ガス増大の責任は民生
部門と交通部門の伸びにあるから、一般国民のライフスタイルの問題という主
張をしてきた。これは本当なのか。

 まず、従来からの産業・民生・交通という各部門別ではなく「企業・公共」
と「家庭」という主体別に分けて二酸化炭素の排出量見てみると、日本独自の
電力配分後(電力の排出量を消費者が排出したと見なす)で見ても「企業・公
共」が81%を占める。電力の排出量を発電源で見ると、なんと「企業・公共」
の排出が89%しめるのである。さらに、わずか180の超大口の工場・発電
所だけで、日本の総排出量の5割を占める。つまり、事務所や商業ビルを含め
た企業こそが温暖化対策の責任の中心である。

 とはいえ、産業部門は基準年から3.2%(2005年)も削減しているで
はないかという反論が予想される。しかし、これは真面目に取り組めば、はる
かに削減することができたのである。経団連自主行動計画は、鉄鋼の生産減と
電力の二酸化炭素排出原単位減に依存していた。その両方の計画が狂っている。
電力会社は、原発の老朽化や耐震基準の見直し、不正・トラブル等による停止
が相次ぎ、稼働率は目達計画をはるかに下回っている(目達計画は2010年
度に87〜88%に対して、2002年73.4%、2003年が59.7%、
2004年が68.9%、2005年が71.9%)。鉄鋼も、1割の生産減を
見込んでいたため、省エネ法の義務も満たさずにサボっていたが、中国特需な
ど予定外の増産で、自主行動計画も危うい状況だ。

 これに対して、まず産業部門では大幅に石炭を増やしている。主犯は、電力
会社や卸電気事業者の石炭火発(2004年度までに排出量が2.5倍)と製
造業での石炭による自家石炭発電(同1.8倍)が増加したことにある。地球
温暖化問題に国民を駆り立てる一方で、自分は安い石炭を使い放題に使ってい
る。また、経団連自主行動計画のもう一つの誤魔化しは、「原単位」の指標にあ
る。たとえば、流通業の指標は、開店時間×店舗面積でエネルギー消費量を割
っており、原単位を下げるためには、もっと店舗を拡大し、もっと開店時間を
延ばせばよいというブラックジョークのような指標だ。自動車工業界は売上金
額単位(高級になれば原単位が下がる?)、石油業界は意味不明の原単位と、誤
魔化しのオンパレードだ。こうした企業に、いったい「CSR」を口にする資
格があるのか。

 結局、こんな無責任な振る舞いをする日本の企業は、中長期的には負け組に
なるに違いない。経団連自主行動計画という「塹壕」に入ったつもりが、気候
変動や自然エネルギー市場に関する新しい知識生産を阻害され、新市場でのヘ
ゲモニーを握る機会を失い、政府も新しい政策イノベーションの機会を逃し、
「落とし穴」に陥っているのではないか。日本企業に求められることは、直面
する環境エネルギー問題を受け身でもなく、個別の問題として矮小に捉えるの
ではなく、新しい経済社会の幕開けであるという認識を持って「塹壕」を抜け
出し、プロアクティブに挑戦することであろう。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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