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1. 風発「気候の歴史が動きはじめた」
                       飯田哲也(ISEP所長)

気候安全保障の時代へ、今、まさに歴史が動いている渦中(エポック)にある
ことが実感される。このエポックを生み出した「3つ歴史的な貢献」がある。
一般の人々の「気候の危機」への認識を急速に高めたアル・ゴア「不都合な真
実」の昨年来からのブレーク、率先して動くコスト(費用)よりも何もしない
リスク(損失)の方がはるかに大きいことを指摘した英国スターン卿を代表者
とするスターンレビュー、そして2月2日に公表されたIPCC第4次報告の
3つである。とくに、IPCC第4次報告は、過去50年間の温暖化現象が人
為影響であることをほぼ断定し、21世紀末に平均気温で最大6.4℃(最良
の予測でも4.0℃)も上昇しうるという危機的な内容であった。一本の映画
や一編の経済報告や科学報告なのだが、これらが今後の国際政治や各国の政
治・経済・政策、そして企業行動に与える大きさは計り知れない。

他方、日本の地滑り現象がますます目立つ。「3つ歴史的な貢献」と対比すると、
あまりに落差が大きいのである。現在、8.1%(2005年度)も温室効果
ガスを増大させてしまった日本では、遊び呆けた後の一夜漬けの受験生のよう
に、第1約束期間の直前になって、京都議定書目標達成計画の検証評価をして
いる。ようやく環境省(中央環境審議会)と経済産業省(産業構造審議会)が
一緒になって見直しができるようになったのは一歩前進といえる。達成の頼み
は、大きいところから、新エネルギー(約4,690万トン−CO2)、経団連
自主行動計画(約4,240万トン−CO2の削減効果。以下同)、建築物の省
エネ向上(約3,670万トン−CO2)、トップランナーによる機器効率向上
(約2,900万トン−CO2)あたりなのだが、いかんせん、有効な「政策」
がほとんどない。経団連自主行動計画は、経団連が総排出量の規制(キャップ)
や環境税の導入といった強い規制を避けるために予防的に導入した、いわば「塹
壕」だ。内容も不透明で、全体として排出総量削減を担保するものではない。
この「規制逃れの塹壕」に頼らざるを得ないところに、日本の気候変動政策の
悩ましい矛盾がある。

また、新(自然)エネルギーはもっとひどい状況だ。1月29日に、経済産業
省の新エネRPS法小委員会が新しい目標値(案)をひっそりと公表した。
2014年で160億キロワット、「1.63%」というもので、2010年に
比べて38億キロワット、0.28ポイント増という微々たるものだ(ちなみに、
2010年の1.35%から逆算すると、160億キロワットは1.77%に
なるのだが、なぜか報道では1.63%となっており、根拠は今のところ不明
である)。かねてより、「新エネ春闘」と揶揄してきたとおり、この低水準の目
標値は論外だが、それは本質的な問題ではない。昨年の新エネRPS法評価検
討小委員会を含めて、制度の有効性とその見直しはいっさい真面目に検討され
ず、ひたすら経産省と電力会社によるウラ舞台での交渉に終始してきた。根回
しの必要性も分かるし、個人的には双方とも真面目に努力したことは評価して
いるつもりだ。しかし全体の構図としては、国民に対しても公共政策のあり方
としても、いかにもできが悪く、不誠実になってしまっている。そして、それ
以上に重大なことは、「何かsomething interestingが起きそう」というワクワ
クするような期待感がいっさいないのである。海外メディアの注目は、ゼロと
いっても良い。熱分野や輸送燃料分野は、それ以上に無策だ。

その同じ1月29日からブリュッセルで、欧州再生可能エネルギー政策会議が
開かれたので参加してきた。この会議は、事実上、2020年に自然エネルギ
ー20%(一次エネルギー比)という新しい欧州連合の目標をお披露目するた
めのものであった。これまでが2010年で12%だったから、じつに8ポイ
ントも増大させる野心的な目標値だ。その週は、「欧州持続可能なエネルギー
週」と銘打って、政策会議だけでなく、さまざまな関連イベントが催されてお
り、さながらお祭りのようだった。欧州(とくにドイツ)で成功した自然エネ
ルギー政策も、こうして欧州のエネルギー政策の「核」となり、世界の自然エ
ネルギー政策を動かしている。

彼我の差を痛感するが、絶望することはない。新しい変化は周縁の現場で起き、
進化し、拡大しながら、中央と全体の構造を変える。霞ヶ関や永田町から目を
離して、地域を見渡せば、東京都の再生可能エネルギー戦略など、周縁の現場
で新しい変化は始まっている(東京都は中央にあるが、環境エネルギー政策の
現場としては周縁にある)。気候の歴史は動き始めたのだ。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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