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5.プロジェクトフラッシュ
 「飯田市での実践・その2 木質バイオマス事業とピークオイル」
                 竹村英明(おひさま進歩エネルギー)

 久々に飯田市・おひさまより竹村がレポートします。
 おひさま事業は、環境省のまほろば事業(環境と経済の好循環のまちモデル
事業)の3年度目。仕上げのリミットまであと3ヶ月を切ったところです。市
民出資を集めた「匿名組合契約」事業は太陽光発電と省エネ(ESCO)事業
の二つ。環境省の交付決定が、おひさまではなく別の事情で飯田市環境協議会
に下されない(つまり「おひさま」にも下されない)・・という「困難」と闘い
続けた省エネ(ESCO)事業も、大きな飯田市美術博物館という仕事を得て、
何とか事業達成ができそうです。出資者の皆さんにきちんと利益配分を行える
ものと思います。

■木質バイオマスペレットへの反応

 さて、おひさまでは、匿名組合事業とは別に「木質バイオマス事業」、すなわ
ち森林の間伐材を活用した木質ペレットによる熱サービス事業も担っています。
これも「まほろば事業」補助金の対象で、総額では5000万円程度の補助金
となる予定でした。今回はこの木質バイオマス事業の現状について報告したい
と思います。
 ときあたかも、「ピークオイル・パニック」がささやかれるこの時期、木質ペ
レットはさぞかしもてはやされているのだろうとお思いでしょう。灯油の価格
も1リットル当たり70円くらいまで上がってきて、ペレットの一般的な流通
価格の1kgあたり35円くらいでも、もうちょっとで同等というところまで
来ています。
 しかし営業状況を率直にお話しますと、これがさっぱりです。世間の人は「ピ
ークオイル」なんてお構いなし、まだまだ「目先のコストじゃー」という感じ
です。まあ、まったく商談が成立していないわけではなく、小型のペレットボ
イラーを入れるという話が進んでいる施設もあります。が、ここの場合は、責
任者が自然エネルギーをできるだけ増やしたいという、いわばコスト度外視の
応援団ということです。
 飯田市に生まれたペレット工場、南信バイオマスも設備能力1000トン/
年に対して、今年の生産(販売)は20%以下(去年はもっと悪い)で、ペレ
ットは売れていません。長野県も飯田市も、木質ペレットを普及させようと、
ペレットストーブ購入補助やペレット価格応援補助などをやっているのですが。
正直言って、広がっていないのが現実です。

■なぜ木質バイオマスは売れないのか

 一番のカギは価格にあると思います。いま石油という船は喫水線すれすれで
すが、でも浮いています。私たちは小さな船で、乗っている人たちに「おーい、
もうすぐ沈むぞ。こっちに乗り移れー」と叫ぶのですが、船上からは「何言っ
てんだよ。そんな小さい船の方が危ないよ。」と言われる。70円/リットルと
35円/kgではなく、80円/リットルと30円/kgになると、ここはド
ドーッと動きます。水は喫水線を超え、石油という船に入りはじめるからです。
逃げ出す人が続出してきます。
 私の相場観ですが、この状況は来年には来る・・と感じます。でも、今年で
はないのです。石油は高くなったり、また下がったり、今年はまだぎりぎりの
ラインを保っているようです。石油価格は言うまでもありませんが喫水線を超
えないように操作されていると思います。その見えざる力と、木質バイオマス
は闘っているのです。
 価格が同等になってもまだ障害があります。ペレットボイラーもストーブも、
石油のそれより高い。そして何より「かさばる」。バイオマスペレットは同じ木
質のチップに比べれば3分の1以下の体積に圧縮されていますが、液体の石油
に比べれば、どうやっても大きい。安定して長期に使うには石油タンクの数倍
の大きさのペレットサイロを用意しなければならないのです。飯田市のような
地方都市ですら、石油ボイラーを使っている施設の中に大きなサイロとペレッ
トボイラーを置けるスペースは、なかなかありません。完全な置き換えならま
だしも、既存のボイラーとの併用(出はじめ商品なので、運転管理への不安も
持たれる)ともなると、まず難しいのです。
 同じことは輸送や流通のシステムでも言えます。お家の建て方から、最後の
灰の処理の仕方まで、木質バイオマスに適したスタイルを確立する必要がある
のです。違うシステムとスタイルの中で、木質バイオマスを広げようとしてい
ることに無理があるわけです。

■ある温泉旅館の問題意識

 飯田市での実践では、こんなこともありました。飯田市内の某有名温泉旅館
のご主人は、新しいもの好きです。石油の枯渇や地球温暖化問題にもある程度
の意識を持って世界を見ています。だから本当は、ペレットボイラーを入れた
くてしょうがない。しかし、このご時勢、観光客も減っていますし、あまり高
額の投資はしたくない。そこで、私たちの、初期投資ゼロの「おひさまスタイ
ル」に興味を持ちました。
 ペレットボイラーを入れるべく、夏から設計を何度も繰り返し、そのかなり
複雑な構造物の中にペレットボイラーを入れられるよう工夫しました。不幸な
ことに、複雑な構造ゆえに工事費は通常の倍以上かかるものになりました。私
たちの熱サービスは、ペレットボイラーを売るわけではなく、設置をさせても
らって「熱」の代金をいただくものです。当然ですが、初期コストの高さは、
そのまま提供する「熱」の料金に反映します。ペレット価格プラスボイラーの
機器工事費プラスおひさまの維持管理費などです。
 それでも石油が高騰すれば、その料金の高さはすぐに吸収されるはずです。
ところが、このご主人は「リスクは負担しない」という理由で、機器工事費な
どの費用分は負担しないと言い出したのです。石油価格が高騰するのであれば、
ペレット価格との差額分で機器工事費分などはまかなえるはずであると。した
がって、自分はペレットを石油価格に連動させて、石油と同じ価格で買い取
る・・と。
 最初は何を無茶苦茶な・・と思いました。私たちは市民出資によって機器費
と設置費用をまかなうわけなので、出資者への返還は絶対に確保しなければな
りません。しかし石油が確実に高騰するのであれば、この温泉旅館から私たち
は大きな利益を得られます。いわば、石油価格とペレット価格の価格差の「先
物買い」です。そういうリスクとリターンを明示しての市民出資もありうるの
かなと思います。今回は、とても手が出せず頓挫しましたが・・。

■岡山の銘建工業を訪れて

 木質バイオマス事業の活路を求めて、このビジネスを成功させている銘建工
業を訪ねました。岡山県の中国山地の山懐、銘建工業のある真庭市は飯田市に
よく似た環境の土地でした。温泉と森林です。バイオマスがビジネスとして成
立するだけではなく、森林資源と人々の暮らしと産業がうまく結びつき、人々
が資源の活用で山を育てることによって、ますます山のパワーが大きくなる・・
という循環が生まれる可能性です。
 銘建工業はバイオマスビジネスをやろうとしたわけではなく、もともと建材
業なので端材を燃していました。ただ燃すのはもったいないと発電をはじめ、
工場のエネルギーは自前でまかなうようになりました。それでも端材が残るの
で、それを有価物である「ペレット」にしてみました。でも売れない・・とい
うのは、上に私が書いたことと同じです。銘建工業が違っていたのは、それな
らと需要をつくりはじめたことです。
 まず地元の温泉にペレットボイラーを入れるため、石油のボイラーメーカー
に電話をかけまくり、ペレットボイラーをつくってくれと説得したといいます。
その試作には自ら開発費を出し、いま5つか6つの温泉施設にペレットボイラ
ーが入っていると言います。さらに、おひさまの私たちが先だと思っていたビ
ニールハウスへのペレットボイラー導入もすでに実現し、なんと木質バイオマ
スイチゴが売り出されていました。今後の技術的課題だと思っていた、冷熱共
用のペレットボイラーも実現させていました。
 その結果、銘建工業のペレット工場はほぼフル稼働で安価に安定的にペレッ
トを生産できるようになりました。こうしてペレットが売れれば、投資は回収
できる。ビジネスの基本を教わったような気がします。

■GSS(グリーンサービサイジング事業)で開発にチャレンジ

 上で書いた、温室農家(ビニールハウス)への木質バイオマスによる熱供給
事業が、この夏に経済産業省のGSS補助金事業に採択されました。事業とい
っても、これはまだ実証段階で、銘建工業のようにボイラーの開発からはじめ
ています。温室ボイラーと言えばネポン社で、ネポン社自身もビニールハウス
のバイオマスによるグリーン化にはとても興味を持っているようですが、その
試作品はとてもとても高い。温室農家が、いま使っているボイラーはほとんど
50万円程度のものです。そこで地元の鉄工所にお願いして、なんとか100
万円を切れる温室用ボイラーをつくってみようとチャレンジしています。
 匿名組合からも、まほろば事業からも離れた事業ですが、飯田さんや山口さ
んが講師となって実施した、第1回起業セミナーから生まれた事業ではありま
す。まほろば事業に比べ、はじめは「ままごと」のようなものかなと思ってい
たのですが、これを指導する委員(がいるのです)の皆さんの厳しい指摘を受
けて、まほろば事業の考え方にも影響を与えるほどしっかりしたものに育って
きました。
 森林資源と人々の暮らしと産業の循環という考え方、そして冒頭の方で私が
書いた、木質バイオマスに適したシステムやスタイルを作り出すことの必要性
ということも、このGSSを実践する中で気がついたことです。銘建工業のN
さんは、森林はエネルギーだけじゃない、マテリアルでもある・・と語りまし
た。社会のシステムを木質バイオマスに適したものに変えて、木質がどんどん
活用されはじめたとき、私たちの未来には石油文化に変わる、第二の新しく洗
練された木質文化が待っているのかもしれません。決して「江戸時代」ではな
く。

                 竹村英明(おひさま進歩エネルギー)


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