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1. 風発「表層社会から内実社会へ」
                        飯田哲也(ISEP所長)

遅い挨拶となりましたが、あらためて本年もよろしくお願いいたします。

さて、日本人や日本社会を知る人なら誰でも了解しているように、日本はタテ
マエ社会だ。国会でも、国や地方自治体の審議会でも、意思決定を演じる人た
ちが事務方の舞台回しどおりに演じ、実質のところは事務方がしっかりとカバ
ーする、そういうかたちでこの国は回されてきた。ところが、昨年を振り返っ
てみると、大きな政治話題から自分たちが取り組む実務に至るまで、「実質」の
ところが腐りつつあり、ただでさえ底の浅い「表層社会」が地滑りを起こして
いるのではないか、そういう懸念を覚えた。

まずは、イデオロギー論争に回収されてしまった感のある教育基本法の「改正」
がその筆頭だろう。もとより「ノスタルオヤジ」による戦前懐古的な教育基本
法「改正」は論外だが、たとえば野田正彰氏が問い続けるように、文科省と教
育委員会による異常ともいえる教員管理などがもたらす教育現場の質の低下の
方が、これからの日本社会の実質に与える影響という意味で、はるかに深刻だ
と思う(「子どもが見ている背中」(岩波書店、2006年)などを参照されたい)。
教育の専門家でもない人寄せパンダ的な著名人を集めた「教育再生会議」では
飲み屋談義がせいぜいであり、ウラを支える文科省は原因そのものである。イ
デオロギー論争は棚置きして、質の良い研究者を揃え、質の良い実証研究を踏
まえて、子供と教員の立場からの実質的な教育再生こそが望まれる。

また、昨年1年間を賑わせた耐震偽造問題も、地滑りを起こしている表層社会
ニッポンの代表例だ。一部の建築士や不動産業者の責任に矮小化されてしまっ
たが、張本人たる国交省の責任は不問とされ、新耐震基準以前の膨大な住宅も
放置されたままだ。しかも、偽造問題は耐震に留まらず、建坪率や容積率の誤
魔化しも常態化しているという(五十嵐敬喜・小川明雄「建築紛争」岩波新書)。
ましてや、OECD諸国で唯一義務ではない断熱基準などは、野放し状態と言
えよう。そもそも、購入した瞬間に3割もの価値が目減りをする低質住宅を、
個人の無限責任で購入させる構図の日本の住宅政策自体が、住まい手の立場で
はなく、住宅産業界と金融業界のためにあると言っても過言ではない。

その他、高校必修単位未履修問題や発電所データ改ざん問題などもあったが、
こうしたメディアを賑わす「社会問題」は、もちろんどれも重要であり、適切
な対応が必要であることは当然だ。しかし、むしろあらゆる分野で日々日常的
に進行している膨大な公共政策の方が、一つひとつは「問題」ではないとして
も、じつははるかに影響が大きいと思うのである。たとえば、小職も国や地方
自治体などで委員会に呼ばれることがある。多くの場合、委員会はタテマエ的
で、政策の裏付けはコンサルのやっつけ仕事、そして政策のアウトプットでは、
実効性よりも関係者の了解のもとで形式が整えられることに力点が置かれる、
というパターンが典型だろう。その典型が、初めから破綻が内定していた「京
都議定書目標達成」だろう。現在、中央環境審議会と産業構造審議会の合同部
会での検証が進行しているが、シロウト談義とガス抜きが飛び交い、ここでも
「表層」が崩れている。その崩れた表層の内実を、経団連自主行動計画という
「無理」が埋めているという構図だ。

もう、そろそろ「表層」を取り繕うことを止め、「内実」を真剣に創造する社会
に転換しなければ、日本全体が21世紀社会で大きく立ち後れると思うのであ
る。

                        飯田哲也(ISEP所長)


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