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5. 寄稿2

アメリカのエネルギー事情
(アメリカ・デューク大学からISEPに1ヶ月間のインターンシップに来ている市
嶋文雄さんの寄稿です。)

アメリカの道路で辺りを見回すと、私の10年前の小さなトヨタ車が巨大なSUV
(Sports Utility Vehicle)に囲まれて走っていることが多い。現代の厳しいエネ
ルギー事情とは無縁かのように、アメリカでは戦車のような燃費を持つこのSUV
が大人気で、その売れ行きが伸び続け、一人当たりのエネルギー消費量も右肩上
がりである。

アメリカの一人当たりのエネルギー消費量は世界で群を抜いてトップにたってお
り、一般国民の大多数はエネルギー事情には無関心である。関心のある人々も、
「実際余分のお金を払ってまでそれに貢献するのは本当にごく一部の人間に限ら
れる」とアメリカのグリーン電力大手のグリーン・マウンテン社
(http://www.greenmountain.com/)の職員が話していた。全米のグリーン電力購
入者数は約40万人にとどまる。この40万人以外のエネルギー事情への無関心さを
象徴しているのは、アメリカの原油輸入量の増大ではないだろうか。

ブッシュ政権下のエネルギー政策も時代に逆行しているのが現状である。2003年
にブッシュは国外へのエネルギー輸入依存度を減らす目的で、国内の石油生産増
大のために石油会社への補助金や掘削禁止区域の開放、原子力発電の援助、拡張
をしようとするエネルギー政策を提案した。この政策には代替エネルギー研究推
進への補助金も多少盛り込まれていたが、代替エネルギーを市場に参入しやすく
するような連邦制策などの根本的なサポート案は何も含まれていなかった。この
法案は可決されなかったが、ブッシュ政権下での代替エネルギーのポジションは
かなり低い。

アメリカで最初のRPSが導入されてから5年以上経ち、クリーン・エネルギーの導
入量目標も多くの州では日本に比べて高いものとなっている。しかし、RPSを導
入している州はまだ15州にとどまり、代替エネルギー発電量は全米の総発電量の
2%に過ぎない。DUKE大学のあるノース・キャロライナ州では電力自由化はされ
ておらず、グリーン電力を購入する選択肢もない。経済性を考えると、電力会社
はわざわざ従来の化石燃料よりも高い代替エネルギーを利用して電気系統に入れ
る設備投資をするインセンティブがほとんどないのが現状だ。自然エネルギー推
進の難しさが良く分かる例である。

しかし、ここ数週間にアメリカ国民のエネルギー意識を変える大きな変化が訪れ
ようとしている。それはアメリカの原油価格の急騰である。中国とアメリカの原
油需要増大、そして不安定な中東情勢も重なり原油の価格は上がり続けている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX, http://www.nymex.com/) の原油市場が過去最
高値の1バレル41ドルに到達したという出来事は、朝日新聞や日本経済新聞の1面
記事にさえなった。その後も、最高値の水準での取引が続いている。この価格の
上昇には、米国社会自身の石油の浪費が、一因とはいえ作用していると思われる
ことから、国民にエネルギー事情のことを考えさせるいいきっかけとなってい
る。

石油の生産がピークを迎える時期にはさまざまな仮説があるが、アメリカのエネ
ルギー省(Department of Energy)の楽観的なシナリオでさえ2050年にピークと
予想している(http://www.energy.gov/)。今回の原油価格上昇はそのピークを示
す一つの警笛なのではないだろうか。石油生産のピークを示唆しているのはそれ
だけではない。今年の初めに世界の石油大手ロイヤルダッチ・シェル社は自社の
原油埋蔵量の20%減を緊急報告し社長は辞任に追い込まれた。

単純なようだが、石油価格が上がり始めてからは、友人でカー・プール(車の相
乗り)をする人が増えたり、自分のトラックを売り、より燃費のいい車に買い換
える人は少なくない。このような消費行動の変化は、ガソリン・ポンプから出る
石油の値段の上昇のように、分かりやすく目に見える形で、あまりにも安すぎた
石油の値段に気づくことでおきている。このような目に見える指標を増やすこと
が、国民の意識を変えるための最も重要なことのように感じる。極端な例だが、
1970年に起きた石油危機や、2003年にアメリカのオハイオ州周辺で起きた大停電
は良い例である。このような危機が起きたことにより、あらゆる政策転換がアメ
リカでも日本でも行われたのだ。何かしらのエネルギー危機を再度迎えずにエネ
ルギー政策の転換を行う必要があり、今回の石油価格上昇がアメリカのエネル
ギー政策のターニング・ポイントになることを願う。

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