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4.NGOの視点 核カードを最初に放棄すべきは誰か
                     大林ミカ(ISEP副所長)

10月9日に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府が地下核実験を行ったと
発表して以来、日本で国防論が高まっている。北朝鮮の行動は、核の廃棄を約
束した2002年の日朝ピョンヤン宣言や2005年の六ヶ国共同声明を裏切
るものであり、東アジア地域の平和を揺るがす断じて許されない行為である。
厳重に抗議するのは当然で、核軍備解体に向けて、あらゆる手段が執られるべ
きである。ただし、圧力も必要だが、捨てるもののない崖っぷち外交に走って
いる北朝鮮に対しては、何とか議論のテーブルにつかせることが最初だろう。

しかし、日本の様子を見ると、米外交へ依存しているばかりで(米国が最大の
圧力国であることはいうまでもないが)、国内では、北朝鮮の核に対抗していた
ずらに日本の軍備強化を唱える声が目立つ。その先鋒が、政権を握る自民党の
政調会長や日本の外交的顔である外務大臣であり、こぞって日本の核武装論議
を始めようとする発言を繰り返しているのだから、米国の外交努力で六者協議
に復活したばかりの北朝鮮を説得できる状況ではないことは確かである。

安倍総理は「我が国の核保有という選択肢は全く持たない。非核三原則は一切
変更がないということをはっきり申し上げたい」(2006年10月10日 、
衆議院予算委員会)と発言しているが、過去に核武装を発言したこともあり、前
述の二人の発言を言論の自由という一般論で擁護し通そうとしていることから
も、日本の核武装論を容認していると言ってよい。

では、果たして日本が核武装すれば、北朝鮮への圧力となるのだろうか。核抑
止論は、核兵器を所有することによって敵対する相手に、こちらも核兵器で攻
撃するという脅しをかけて核攻撃という最終手段を執らせない、つまり核戦争
に発展させないという考え方から発しているので、現在の北朝鮮のように瀬戸
際に追い詰められた相手に突きつけても有効ではない。日本が核武装すればな
おさら相手を刺激するだけのことで、核攻撃によって失うものが多いのは北朝
鮮より日本の方であり、核抑止論は働かない。ピョンヤンと東京が核攻撃され
た場合を比較想像しただけでもわかる。

そして、日本の核武装に対する国際的反応は北朝鮮の比ではないだろう。「北朝
鮮と違って」周辺国の核レースを煽ることは明らかであり、わたしの周辺の韓
国人数名に聞いても、韓国が核武装するとしたら北朝鮮のせいではなく日本が
核武装した時、と答える。このような状況は、中国にとって大きな懸念だろう
し、明らかな敵対国として日本をつぶしにかかるだろう。現在、日本の核武装
に技術的な障害はほとんどないと言ってよいだろうが、実際に核武装するため
には、IAEA(国際原子力機関)の査察を欺く核物質の確保(あるいはIA
EAの査察の拒否)、核物質の軍事転用を禁じる日米原子力協定の不履行(ある
いは協定の破棄) 、NPT(核兵器不拡散条約)からの脱退などなどが必要に
なる。北朝鮮が歩み、国際社会から非難されてきた道のりを、日本ほどの経済
大国、外交的に北朝鮮の比ではない影響力を持つ国が歩むことになる。そう考
えると、国内からはよく見えないが、自民党の政調会長や現外務大臣はキム・
ジョンイル以上の過激な主張をしているのだ。浅はかな発言にすぎないとはい
え、即刻やめさせるべきである。

一方で、核武装して半世紀以上たった英国では、唯一の核戦力である潜水艦発
射弾道ミサイル「トライデント」を2010年以降更新するかどうかを巡って、
核保有の是非を問う議論が過熱している。ブレア政権は「独立した核抑止力」
を堅持することを前提に、年内に新たな核戦略を展望する白書をまとめるとし
ているが、与党内でも労働党左派からや市民団体からは、核廃絶を含めた幅広
い検討が必要であるという声が上がっている。支持母体である英国労働組合会
議も国民を交えた広い議論の場を設けるべきとしている。

英国に限らず現在の核軍備は、数十年前の冷戦構造の中で発展してきたもので
ある。国際的な安全保障の状況は大きく変化し、大国の核保有こそがテロや拡
散した核による脅威を増幅しかねない。すでに核抑止論の通らない国際状況下
での日本の核武装は、外交的にはもちろん、経済的にもマイナスはあってもプ
ラスはない。国際的な尊敬を集め、日本の外交に資する唯一の道は、世界の核
廃絶を訴えつつ、北東アジアの非核化に向けて、建設的な提案をしていくこと
しかない。今こそ冷静になって、日本こそが核のカードを捨て、力で相手を押
さえ込めると考える野蛮な抑止論ではなく、新しい世界秩序のモデルに向けた
議論を、北東アジアから始めていくべきではないか。

                     大林ミカ(ISEP副所長)


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