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1. 風発 「オール電化住宅」2元論を越えて
             ・温熱政策からの総合評価の提案
                       飯田哲也(ISEP所長)

 このほど気候ネットワークから、「オール電化住宅は地球温暖化防止に寄与
するのか?」と題するレポートが公表された。短期間で限られた調査にも関わ
らず、基本的な論点を押さえた好レポートである。最近の急増ぶりが気になる
オール電化住宅について、社会全体で少し立ち止まって考えるための重要な一
石を投じたのではないか。
レポート:http://www.kikonet.org

 この機を活用して、「オール電化住宅」の是非2元論を越えた総合評価を提
案したい。エコロジー先進国としてしばしば参照されるスウェーデンは、ほぼ
全戸が「オール電化住宅」である。ところが、同じエコロジー先進国として知
られる隣国のデンマークは、北海の天然ガス田を持ち、天然ガスネットワーク
が整備されているために、ガスコンロが標準だ。ただし、両国と日本との決定
的な違いは、地域熱供給による暖房と給湯の有無である。日本とは比較になら
ないほど厳しい断熱基準も義務づけされている。さらにスウェーデンでは、原
発の過剰建設で電気が余り気味だった1980年代初頭に電気暖房を拡大したこ
とを、いまでは「間違いだった」と政府が認めている。

 これらの対比が示唆しているように、本質的な論点は「オール電化の是非」
ではなく、暖房や給湯などの「温熱政策のあり方」なのである。そもそも日本
では、電力・温熱・交通・産業というエネルギー用途毎にあるべき方向性を示
す「エネルギー政策」が欠落しており、エネルギー「業法」があるだけだとい
うのが、かねてよりの私の主張である。限定的な地域熱供給事業を除いて「エ
ネルギー業界」を持たない温熱分野が、その狭間にあって、既存のエネルギー
業界の草刈り場になってきた。その結果、(電気+ガス+石油)×(ストーブ
+ファンヒータ)という種々雑多な暖房器具が溢れかえる、見苦しくて生活の
質の低い温熱環境が形成されてきたのである。

 温熱政策を考えるとき、基本的な原理は「エクセルギー」である。エクセル
ギーとは、エネルギーによる有効仕事量を指し、質を伴うエネルギー価値であ
る。たとえば電気のように価値の高いエネルギーを暖房のような価値の低い用
途に使うことは、「電気ノコギリでバターを切る」ように無駄なことだとされ
る(ヒートポンプに関する詳細な議論は省くが大筋は変わらない)。

 暖房に関しては、すでに「無暖房住宅」が実証段階に入っている。そこまで
は無理な場合でも、「断熱・気密→パッシブソーラ→低エクセルギーの自然エ
ネ利用」という「エクセルギーのピラミッド」を基本として考える必要がある。
これは給湯も同じだ。その上で、無原則・無秩序に展開してきたこの国の住宅
温熱環境の現実を見据え、20年以上をかけて、少しずつ「あるべき方向」に近
づけていくことが求められよう。

住宅におけるエネルギー利用のあり方は、集合的にみれば社会全体のエネルギ
ーのあり方を規定する。同時に、適切な温熱環境は、一人ひとりの生活の質を
向上させる。したがって、住宅の温熱環境のあり方は、エネルギー事業者の販
売戦略や十分な情報や知識を持たない個人の選択だけに委ねられるべきではな
い。温熱政策が求められる所以である。

無原則・無秩序・無策による遠回りは、もうやめようではないか。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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