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2.連載:デンマークから学ぶ持続可能なエネルギー社会(1)
    「サムソ島における自然エネルギー100%供給への挑戦」
         細川和朗(ISEPインターン:神戸大学国際文化学部)

 少し郊外に出ると必ずや目にする風力発電機。真っ青な空の下、陽光を浴び、
緑の農地に白く聳え立つ。そんな国、デンマークのオーフス大学へ1年間の交
換留学を経験してきた。
 留学中、正規の授業外で、以下の3人のキーとなる人物にお話を伺ってきた。
自然エネルギー100%供給に挑戦するサムソ島のソーレン・ハーマンセン氏、
低エネルギー社会を提案するデンマーク工科大学教授のヨアン・ノルゴー氏、
そして再生可能エネルギー技術の実物説明を行っているフォルケセンター所長
のプレーベン・マガード氏。今月号を含む3回に渡って、それぞれの活動と対
談の中での印象的なポイントを紹介する。持続可能なエネルギー社会に関して、
私がデンマークで学び感じ取ったことを読者の皆様と少しでも共有できたらと
思う。

* 自然エネルギー100%供給への挑戦

 オーフスの南東に位置する“サムソ島”。人口は約4400人、面積は114
平方km。豊かな自然のあるこの小さな島から持続可能なエネルギー社会への
大きな一歩が踏み出されようとしている。実はこの島では、現在、電気の
100%を風力から、暖房・熱の75%を太陽熱やバイオマスから供給し、「再
生可能エネルギー100%アイランド」を目指している。プロジェクトの中心
的役割を果たす「サムソ環境エネルギー事務所」を訪れ、ソーレン・ハーマン
セン氏のお話を伺ってきた。

 では、まず、この島の再生可能エネルギー促進プロジェクトを概観してみよ
うと思う。1997年末、サムソ島はデンマーク国家構想である「デンマーク
再生可能エネルギーアイランド」というコンペで最優秀賞を受賞し、「再生可能
エネルギーアイランド」として認定された。この構想は、10年間で100%
再生可能エネルギー供給の達成を目指し、アルテネアというEUの再生可能エ
ネルギーアイランド構想の支援も受けている。

 1998年にプロジェクトが本格的に開始され、2000年末には1MWの
風力発電11基の設置により、サムソ島内での年間電力消費量(2万8000
MWh/年)を風力から賄うことに成功した。また2002年4月には藁や木
質チップ、太陽熱による3ヶ所の地域熱供給所により、約60%の熱供給を自
然エネルギーに転換した。

 さらに1998年後半から始まった洋上風力発電計画は2002年4月に施
工が開始され、2002年末には2.3MWの風車10基から7万7659
MWh/年の電力を供給し、サムソ島における運輸部門消費エネルギー
5万3000MWh/年(電力エネルギー相当量に換算)を相殺し余剰すら生
み出している。もちろん相当量ということなので、実際には運輸部門ではまだ
石油は使用されている。しかし、菜種油を用いた代替燃料の使用も若干始まっ
ているようだ。また島と本土は送電線で結ばれているため、余剰電力は本土へ
売電され、風の吹かない時は逆に本土から買電する。

 環境保護、地域経済、政策の観点から、このプロジェクトの2003年度時
点での結果を見てみたいと思う。

 環境保護の観点からは、周知の通り、温室効果ガス(二酸化炭素など)の削
減、それによる気候変動緩和への貢献、地球生態系の安定、最終的には人間の
社会・経済・生活基盤の維持ということになる。

 特に注目したいのは、次の地域経済と政策の観点である。
 地域経済について、1999年~2002年の4年間で約60億円の投資が
なされた。約50億円は島民によって現金または銀行の貸付によって投資され、
残りの約4億円は政府からの直接公共投資、約6億円はデンマーク本土の投資
家から投資された。つまり、ほぼ島民の投資によるプロジェクトである。もと
もとトップダウン的にサムソ島町長が地域経済発展のため「デンマーク再生可
能エネルギーアイランド」コンペへの応募を指示したため、地域に、島民に、
どれだけ利益をもたらすかが重要な要素だった。結果的に、農業・観光業を主
産業とするサムソ島は、暖房と電気に関する島外からの輸入エネルギー依存を
1997年の年間約9億円から2003年には年間約5億円に削減することが
できた。つまり島外へ流れていた4億円が島内で循環、もしくは島民の家計に
余裕を持たすことになった。また風車建設やバイオマスプラント建設など再生
可能エネルギー関連インフラ整備に伴う施工会社や技術会社などにおいて雇用
が増え、さらに再生可能エネルギーという環境負荷価値を得た島は多くの訪問
者を呼び込むことになり観光業にも貢献している。

 ハーマンセン氏によると、この成果を生み出す重要な要素が、“地元住民が儲
かる仕組み”や“地元住民が投資したがる仕組み”を作り出すことだそうだ。
本土の中央資本の投資家が儲かる仕組みなら、せっかく地域に留まり地域経済
発展に貢献するお金も外部へ流れてしまう。だからまず地元住民が進んで投資
できる経済的な仕組みを作り出すことがポイントとなる。デンマークでは元来
農業国家であるため、“皆でちょっとずつ出資し、成果を皆で分け合う”という
協同組合の歴史と伝統がある。その協同組合を活かして風車建設に対しても地
元農民たちがお金を出し合い投資し、売電による利潤を自らで分け合う方法が
採用された。

 しかし、このしくみを実現するにあたっては、政府の政策が肝心となる。せ
っかく風車を建てても、初期投資のコスト回収、その後の利潤が十分に見込め
なければ、彼らの行為は環境正義の名の下に無残にも赤字となる可能性がある。
だから、10年・15年という期間における一定の買取価格保証を電力会社と
契約する必要性がある。電力会社への買取価格保証義務付けの要求は、まさに
政治的な交渉である。サムソ島の場合、陸地における風車からは最初のフル稼
働1万2000時間は約12円/kWh、その後10年間は約8円/kWhと
いう電力会社による買い取り価格が保証された。洋上における風車の場合も同
様に、10年間で約8円/kWhという契約が結ばれている。この価格保証契
約義務により地元住民は、自分達が建てようとする風車からの利潤を計算でき、
出資しようと思うわけである。

 ただハーマンセン氏の話を聞いている限りでは、どのプロジェクトに関して
も“地元住民が出資したがる仕組み”を作るのはそう簡単にはいかないようで
ある。サムソ島で育った彼ならではのローカルナレッジ(地元地域に関する知
見)を活かして、プロジェクトに地元住民を巻き込み、環境正義のみならず、
経済的に利益があることを繰り返し示してきた。その地道な努力の末、現在の
結果がある。

 以上のように、サムソ島では、電力における再生可能エネルギー供給100%
の目標は達成され、熱供給においても現在75%とその目標に近づきつつある。
もちろんこれを可能にするのはサムソ島が孤島ではなく、本土との人や物資の
ネットワークを持ち、送電線が本土と島を結び電力の売買を可能にしているか
らである。その点ではサムソ島は、本土における各地域と変わりない。もちろ
ん今の段階では運輸部門に見られるように再生可能エネルギーがすべての化石
燃料エネルギーに取って代わることができるなどとは言えない。しかし、サム
ソ島の事例からわかるように、ある地域において再生可能エネルギー源からの
エネルギー自給は可能であり、足りないときには他の地域から買い、余ったと
きには他の地域へ売ることができる。一方で化石燃料は蓄えられ持ち運べると
いう特徴を活かし必要なときに再生可能エネルギーを補完する役割へと転換で
きるということがはっきりと示されたと思う。

         細川和朗(ISEPインターン:神戸大学国際文化学部)


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