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2)Sweden とAustriaに学ぶペレット普及への道
                     井筒耕平(ISEP研究員)

■国内の状況
2000年以降、国内では徐々に木質ペレットへの注目が集まりつつある。た
だし、この6年間は閉塞状況にあることもまた事実である。需給量は3000
トン程度と相変わらずの状況であり、頭打ちといっても過言ではない。この理
由についてはペレットの品質問題、ロジスティクスの問題、機器本体の性能の
問題などのハード面と、日本人の木への親和性の欠落、バイオマスに対するス
テークホルダー間のズレ、国内の遅れた自然エネルギー政策などのソフト面が
あると考えるが、詳細は紙面の都合上ここでは割愛する。
では、先進市場である欧州の木質ペレット市場では、ペレット流通がどのよう
な状況であるのかという疑問がわいてくる。このたび、5月29日~6月11
日までスウェーデンとオーストリアへ来訪する機会を持つことが出来た。現地
のペレット流通の状況を生活者の視点、および国内での課題に対する回答とい
う視点からご報告したい。

■スウェーデン ~木を使った生活が雇用を生む~
5月29日からは、スウェーデンで開催されたWorld Bioenergy2006に参加し
た。ヨーロッパ(今回はスウェーデン、ドイツ、オーストリア)を訪れてまず
気づくことは、どこの家庭にも煙突があることだ。すべての煙突が木の利用と
いうわけではないようだが、生活の中で炎を楽しむというスタイルが確立され
ている。おしゃれな北欧家具にも利用される木は、彼らにとって「特別な存在」
ではないのである。また、コンビニには映画や音楽の雑誌とともに、エネルギ
ーに関するデザイン性の高い雑誌も陳列されている。多くの個人にエネルギー
を考えるきっかけを与えることが「普通」に行われているのである。
一方、技術についても確立されており、普及段階に達している。World
Bioenergy2006へも多くの企業が出展しており凌ぎを削っていた。燃焼機器や
ロジスティクスを担うメーカーはもちろんのこと、ペレットの袋メーカー、港
湾組合、バイオマスコンサル会社など、バイオマスによって多くの雇用が生ま
れていることが印象的であった。政策の後押しと民間企業のしたたかな推進力
のシナジー効果が十分に発揮され、日本で課題にされているようなステークホ
ルダー間のズレも埋まっていったのであろう。

■オーストリア
6月5日からはオーストリアのザルツブルグへ訪問した。ドイツやオーストリ
アには、カッフェルオーフェンという石製の大きな暖炉がある。市内のホーエ
ンザルツブルグ城内にも残る装飾の施されたカッフェルオーフェン(16世紀
製)は、豪勢なたたずまいを今に伝えている。この地方も家に煙突があること
は「普通」のことであり、木への親和性は非常に高いのである。
近年、ペレット需要は非常に高くなっており、年間60万トンの需給状況であ
る。燃焼機器は、家庭用ボイラーが4000~5000台程度、ストーブは1
万5000~2万台以上販売されている。中でも家庭用ボイラーは、複数の企
業によりEU内への輸出も含めて非常に盛んな状況である。燃料のロジスティ
クスに関しては、EU内への陸続きの利点を生かして国際取引が一般化してお
り、バルク輸送しエアレーションで施設への搬入という手法で統一されている。
オーストリアは、政策よりも民間、特に小規模ベンチャー企業によりバイオマ
スへの参入が進んでいる印象が強く、民間需要、多数の製材所の存在、ロジス
ティクス技術の向上が、オーストリアのバイオマスを牽引していると感じた。

■日本の新展開
昨今、国内でもペレット(チップ)市場に関して新展開が進んでいる。その内
容と考慮すべき論点を以下に挙げる。
一つ目は、電力会社による石炭混焼で、数万トンのペレットを利用する計画で
ある。ペレット需要が増加することは歓迎ではあるが、いまだ小規模の国内ペ
レット市場に対して、価格や品質面での影響は少なからずあるであろう。
二つ目に、大規模工場のチップ燃料導入への動きである。繊維工場、パルプ工
場など蒸気ボイラーを利用する工場が、高騰する石油から木質バイオマス(主
にチップ)への燃料転換を計画している。化石燃料の抑制にはプラスの動きで
はあるが、チップの価格上昇と、ロシア、アフリカ、南米など更なる違法伐採
の恐れがあり、注意が必要である。
三つ目にターゲット市場の広がりである。現在、温水プールや老人ホームなど、
温水を利用する中規模ボイラーが、自治体の負担によって年間数台ずつ導入さ
れている。これに対して、民間の知恵を生かし、欧州のベンチマーク市場のノ
ウハウを取り入れ、価格的にも石油と同程度を目標とする取り組みがある。国
内の燃焼機器、ロジスティクス機器から鑑みて非常に困難なチャレンジではあ
るが、大いに期待したい。
今回の欧州訪問では、国内での機器の未熟さもさることながら、ソフト面での
努力が全く不足していることを痛感した。もともと高かった日本人の木への親
和性は石油燃料の台頭した1960年以降途切れてしまい、今は刹那的な石油
文化にどっぷりと浸かっている。今後は、木を利用する生活が「普通」の生活
として心地よく取り入れることができるよう、マーケティング戦略も需要にな
ってくるであろう。それこそは、木への親和性が欠如してしまった日本特有の
新展開が必要なのである。

                      井筒耕平(ISEP研究員)


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