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(2)「気候変動問題・政府専門家セミナー」の結果と今後の見通し
                              中島正明
    (特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン気候変動問題担当)

 今年5月、例年のように、ドイツのボンで気候変動枠組条約第22回補助機関
会合(SB22)が開催された。今年の会合はその様相がいつもと違い、緊張し
た雰囲気が感じられた。2月に京都議定書が発効したことを受け、今年末にカ
ナダのモントリオールで開催される気候変動枠組み条約の締約国会議(COP
11)に並行して、第1回目の京都議定書の締約国会議(COP/MOP1)も
開催される。このため、SB22はその準備会合としての意味合いが強かったこ
とが緊張感を生んでいたひとつの要因であろう。また、このSB22の前には、
京都議定書の第一約束期間後の国際制度のあり方について意見交換を行うため
の「政府専門家セミナー(SOGE)」が開催され、いよいよ将来の国際制度に
関する政府間の議論が本格的に始まったことも会場の緊張感をより一層高めて
いた。
 モントリオールでの会議で、正式に将来の枠組みに関連する国際交渉が始ま
ることとなっている。この会議の開催を控え,SOGEは非公式ながらも国連
の場で初めて各国政府代表者が将来枠組みに関する意見交換を行うものであり、
開催された意義は大きかった。このイベントは「情報の非公式な交換を促進す
るための」ものという位置づけであり、交渉ではないこともあって、終始穏や
かで明るい雰囲気の中で行われた。
 気候変動が危険なレベルに達するのを防ぐためには、産業革命以前のレベル
から2℃未満の気温上昇に抑制しなければならないと言われている。しかし、
すでに産業革命以前のレベルから気温は0.6℃ほど上昇し、現在の温室効果ガ
ス濃度で推移したとしてもあと0.4~0.8℃の気温上昇は免れない。削減率で言
えば、2℃の目標達成のためには、先進国は今世紀半ばまでに60~80%の温室
効果ガスの削減を達成しなければならない。ある調査では、同時期に開発途上
国も含めた世界全体で50%の削減が必要という結果も出ている。国際交渉の場
では、世界全体が行動を起こし、こうした大幅な削減を実現していくための制
度をいかに構築していくかが課題となっている。
 また、気候変動枠組条約などの国際合意では、気候変動を引き起こしている
先進国の責任を鑑み、先進国が率先して温室効果ガス排出削減を行うことと、
対策を行うための資金・技術支援を開発途上国に対して行うこととなっている
が、先進国の排出量は増加し、支援も十分に行われていない。2002年にインド
で開催されたCOP8では開発途上国と先進国間の対立関係が顕著化したが、
これは先進国の対策が進んでいないことに対する開発途上国の不満が爆発した
ことがひとつの要因であった。効果のある国際制度の確立には、しっかりとし
た国際的協調関係が必要であるが、信頼関係の醸成のためにはこれまでの国際
合意に基づき、先進国がまず行動することで結果を示していくことが必要不可
欠であろう。
 こういう状況の中で開催されたSOGEは、結果的には私たちが予想してい
たより、良い成果を生んだといえる。各国政府の立場はこれまでの交渉で示さ
れてきたものと大きくは変わらないが、気候変動枠組み条約の第2条に究極目
的として明記されている危険な気候変動の防止という共通の到達点に向けて、
世界全体が大幅な温室効果ガスの削減に向けて前に進むことが必要であるとの
大前提の認識がSOGE全体を通して確認され、今年末のモントリオールの会
議での交渉のための良い土壌が作られたことが一番大きな成果であろう。欧州
諸国がこれまでと同じく気候変動の影響が「危険な」閾値を超えることを防ぐ
ために、2℃以下の気温上昇幅抑制目標の達成を主張する中、中国、ブラジル
などを含む、開発途上国からの前向きな発言が目立った。中でも南アフリカや
ツバルなどは、今後の交渉の道筋を示すための「モントリオール・マンデート」
にモントリオールの会議で合意することを主張し、強い指導力を見せた。個別
の問題では、早急に将来の枠組みに関する議論を開始すること、先進工業国の
率先した行動が大切であること、2℃以下に気温上昇幅を抑えるための温室効
果ガスの大幅な削減の必要性、京都議定書の意義と重要性、そして適応策や技
術移転の強化の必要性などについて、各国が具体的に意見を述べた。こうして、
今後私たちが進むべき方向性、抱える問題や課題がより明らかになってきたこ
とは、いよいよ世界全体が新しい時代の構築に向けて動き出したことを感じさ
せた。
 日本政府も将来の制度の交渉を早く始めるべきという比較的前向きな立場を
とっていた。しかし、積極的に働きかけているというより、これまでと同じよ
うに様子見を続けている感が否めない。日本政府は、実質的な中味を伴った「マ
ンデート」にモントリオールで合意し、交渉を早急に開始できるようにEUと
共にリーダーシップをとり、締約国への働きかけを強化していくべきである。
最近のG8サミットの準備プロセスは、アメリカの阻止的行動などにより、思
わしくない方向に進んでいるが、それとは別に、国連の場での日本政府のやる
気が問われている。

SOGEの詳細については、
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/climate/cop/soge2005_html

                              中島正明
    (特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン気候変動問題担当)


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