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4.連載「光と風と樹々と」(8)?大草原の大学風車
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

・はじめての市民向けの講演

 2004年9月25日、滞米中の私ははじめて一般市民向けの講演をするこ
とになった。ミネソタ州の州都ミネアポリスから65kmほど南にあるカール
トン・カレッジ(Carleton College)で、1650kWの大型風車の運転開始
式を行うという。式を見たいと申し出たら、あわせて何人かを講師に講演会を
行うが、講師役も引き受けてくれということになった。日本の市民風車の話を
すればいいだろう、英語での一般市民向けの講演というのはなかなかない機会
だから、思い切って引き受けることにする。早速、北海道グリーンファンド、
京都グリーンファンドにメールで、写真を送ってもらうことにして、パワーポ
イントのスライドを用意した。
 案内のメールには、「celebrating the erection of a 1.65MW wind turbine」
とある。こんなときerect を使うのか、学生らしいジョークなのか。

・カールトン・カレッジ

 カールトン・カレッジは、学生定員1800人の小さなリベラルアーツ・カ
レッジ(http://www.carleton.edu/)。2004年の大統領選挙で民主党の有力
候補と目されていたポール・ウェルストン(Paul Wellstone)という上院議員
がいた。2002年の中間選挙の折に飛行機事故で亡くなり、非常に惜しまれ
た。ミネソタ州のリベラル派の間では今なお人気が高い。カールトン・カレッ
ジは、彼が1990年に上院議員に当選するまで、21年間政治学の教鞭をと
っていた大学として有名である。遺著となった『リベラルの良心』(The
Conscience of a Liberal, University of Minnesota Press, 2002)の扉には、
「父さん・母さん、僕はアメリカの上院議員だけど、心配しないでくれ、僕は
今なおリベラルだ」という味な言葉が記されている。
 ユニバーシティ(総合大学)に対して、リベラルアーツ・カレッジは一般教
育に重点をおく家族的で小規模な私立の大学である。日本の大学では一般教育
が人気がなく、どんどん縮小傾向にあるが、アメリカでは、むしろ大学院に入
ってからが専門教育、学部教育は一般教育重視という傾向が今でも強い。
 私が滞在していたミネソタ大などは学生数4万人で州立大としては全米第2
のマンモス大学である。ミネソタ大の関係者が一番大きいのはテキサス大だよ、
テキサスは何でもでかいんだというとき、テキサスに対して、(あっちはただで
かいだけという)やや見下したようなニュアンスがある。
 
・公共交通機関がない!

 講演の準備をすすめるなかでまず驚いたのは、カレッジなのに、そこに行く
公共交通機関がないことである。主催者側の学生と電話で話して、私の借りて
いる家まで迎えに来てもらうことになる。学生たちは主に寮生活しているとの
ことだが、農村部はむろん、郊外になるだけで、車以外に頼る交通手段がなく
なるというのがアメリカの実情である。自称「世界一の豊かさ」は、公共交通
の驚くべき貧困と隣り合わせである。昨年8月のニューオーリンズのハリケー
ン騒ぎが世界中に露呈したように。

・残念、風がない!

 風車が建設されたのは、キャンパスから東に2.5kmほど離れたいかにも
大草原(プレーリー)らしい、とうもろこし畑のまっただ中である。ミネソタ
州は、「大草原の小さな家」の舞台である(本はみんな知っているが、ほとんど
の人がテレビドラマの存在を知らず見たこともないという。テレビドラマ版は、
日本の方がはるかに有名だ。日本ではほとんどの人が見たことがあるよ、とい
うと一様に驚かれる)。
 工事中から完成までの写真が、
http://apps.carleton.edu/campus/facilities/sustainability/wind_turbine
/にアップされている。学生寮からはよく見えるが、キャンパスからは体育館か
ら少し見えるだけだという。
 地域の人々を含め、約200人ぐらいが集まって、バンドも繰り出してとて
もにぎやかである。関係者のいろいろな挨拶が続く。「ミネソタは風力発電のサ
ウジアラビアよ。どんどん風車を建てていきましょう」と女性議員の勇ましい
演説。いよいよ学長のテープカット、スイッチ・オン。待ちに待った運転開始。
一同注視。ん、びくともしない。残念、快晴で雲一つなく、風もない。昨日は
元気よく回っていたんだけどと、迎えに出てくれた学生が言う。案内どおり、
確かに ハブの高さ70m、羽根の長さ40mの風車の erect を祝ったことに
はなるけれど。
 この大学が風車をつくることにしたのは、持続可能なキャンパスづくりの一
環としてである。建築のある教授の努力と奔走が結実したようだ。引き続いて、
生ゴミリサイクルプロジェクトなどを展開する予定という。
 年間の予想発電量は500万kWh(稼働率34.6%)、20年の長期契約で、
全量、エクセル・エナジー社にkWあたり3.3セントで販売されるが、キャ
ンパス全体の年間の電力消費量の約4割に相当する発電量という。大学所有で
売電用の風車は全米初という。このほかに、州からの助成金が10年間kWあ
たり1.5セント、NPOを対象とする連邦からの減税分のクレジット(tax
credit)が10年間kWあたり1.5セントが得られる。建設費にも州の補助
金が使われていて、大学の実質的な持ち出し分は少ないという。学生やOBら
への寄付の呼びかけなどもなかったようだ。

・ Sea-Wind chan

 erection を祝う式典が終わったあと、キャンパスを会場にSustainable
Campus Conferenceと題された講演会の開始。聴衆は学生中心に40人ぐらい
に減っている。私の報告のタイトルは、「学校は、自然エネルギー普及の最初の
ターゲット」。community-based な自然エネルギーは、学校プロジェクトと市民
所有プロジェクトに大別されるとして、京都グリーンファンドのおひさま発電
所と北海道グリーンファンドの市民風車プロジェクトなどについて解説した。
「はまかぜちゃん」は、Sea-Wind chanと英訳した。はまかぜの英訳はふつう
は sea breeze だが、breeze では、そよ風的なイメージが強く、風車をびゅん
びゅん吹かせる強風という語感がないからである。ここの風車には名前がない
ようだが、学生から公募して名前をつけると増すよ、と助言した。
 とくに聴衆の共感を呼んだのは、おひさま発電所で、設置前の太陽電池パネ
ルのウラに子どもたちが自分の名前や好きな物に絵を描いたりしているスライ
ドや、発電容量がテントウ虫の数で示され、リアルタイムで園児にも一目瞭然
というスライドである。
 終了後、自分はがんばっているんだけど、うちの地域の教育委員会は風力発
電に理解がないから、講演してほしいと50代ぐらいの女性からリクエストが
あった(オーケーと返事したが、その後、連絡がなかった)。
 日本の市民風車のネタは、その後、バージョンや力点を変えて、ウィスコン
シン大やハーバード大、ミネソタ大でも話したが、日本の先進的なプロジェク
トを英語で紹介するのは実に気持ちのいいものである。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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