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1. 風発 「ピークオイル問題をどう捉えるか」
                       飯田哲也(ISEP所長)

 そろそろ日本でも、ピークオイル問題が論壇の地平線に浮かび上がってきつ
つある。ISEPとしても私自身も、まだ十分に論点を網羅しているわけでは
ないが、例のごとく「日本型」の歪んだ政治アジェンダで固まってしまうまえ
に、この問題への基本的な視点を提示しておくことは重要だと考える。
 ピークオイル問題とは、かつて1970年代に流行った石油枯渇論とは異な
って、全世界の原油の生産量が頭打ちになり(=ピーク)、その後は生産量が減
衰していく状況を指す。世界の石油消費は堅調に伸びており、「ピーク」後には
急速に需給ギャップが広がるために、原油の高値は続き、世界は急激なエネル
ギーシフトを余儀なくされ、社会的な混乱や戦争、国際的な不平等がますます
ひろがることが懸念されている。
 歴史的には、1956年に米国の石油地質学者であるM.K.ハバートが発
表したベル型の石油生産量の推移、すなわち「ハバート曲線」が理論的な論拠
である。ハバートは、アメリカが原油の生産の減少と石油輸入国に転落するこ
とを予告し、業界から袋だたきに遭ったものの、事態はその通りに推移したの
である。その後、1998年にK.キャンベルがサイエンティフィック・アメ
リカン誌にピークオイル論を投稿し警鐘を鳴らしてから、この問題が国際的に
はクローズアップされてきた。日本では、昨年8月に「ピーク・オイル」(リン
ダ・マクウェイグ著、益岡賢訳、作品社)が翻訳出版されてから、じわりと広
がってきたように思う。
 さて、この問題に対する「日本型アジェンダ」は、すでに政府筋で登場して
おり、そうでなくても容易に想像できる。温暖化問題を原子力擁護の論理に臆
面もなく使ったように、原子力開発と石油開発という経産省系の2大既得権益
を維持するために、「危機」をつまみ食いするのだ。ところが、いずれも真の危
機が訪れた場合には、ほとんど役立たない。ここでも、日本ムラの特徴である
「理想主義の貧困とリアリズムの欠落」が露呈している。
 ピークオイル問題に対しては、歪んだ「日本型」のアジェンダではなく、持
続可能性(サスティナビリティ)とエネルギー民主主義という2つの軸から、
対応を考える必要がある。ピークオイル問題に限らず、地球温暖化問題、そし
て原子力リスクも回避する「持続可能なエネルギー社会」への急激な移行を構
想する必要がある。また、一人ひとりの基本的な生存権や地域の自己決定と自
立(律)、南北間・世代間の衡平性、さらには、危機においても信頼関係を維持
できるタフな社会関係を築きあげていくことが不可欠だろう。
 なお、ピークオイル論は、石油保守層からは「悲観論」と呼ばれていて、こ
れに対抗する「楽観論」も経済学者や保守的なエネルギー業界人からは根強い
人気を持っている。ただし、ピークオイル論が「ファクト」に基づくのに対し
て、楽観論は定性的・抽象的な議論に留まり、悲観論を否定する論は見あたら
ない。百歩譲って、論争が五分五分だとしても、予防的に考え、かつ持続可能
なエネルギーシステムが持つ社会的な恩恵を考慮すれば、ピークオイル論を起
こりうるリスクとして捉え、行動した方が賢明であることは論を待たない。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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