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1. 風発 「自然エネルギーと社会的合意」
                       飯田哲也(ISEP所長)

2月17日?18日にかけて、スイス・セントガレン大学主催のワークショップ
「自然エネルギー・イノベーションと社会的合意」が、ベルンに近い小さな村
で開催された。自然エネルギーは、普及を進めることが大前提の「社会的合意」
だが、近年のウインドファームなどに見られる急速な拡大は、景観問題など新
しい社会的合意の問題を生んでいる。計11編の報告をとおして、この「新し
い社会的合意」の問題を討議した。リアル政治に踏み込んだ報告(「電力政治」
が強いところほど自然エネルギーの普及度が弱い現象など)が見あたらなかっ
たのは残念だが、たとえば、固定価格制のドイツでは、小規模事業でもリスク
が小さく、地域オーナーのプロジェクトが中心となるために、社会的合意を得
やすいという、各国間の制度と社会的合意の関係も興味深いものであった。

その中でも、欧州が中心のせいか、風力発電の景観問題に軸足があり、ここに
「inverse NIMBY」という新しい概念が登場する。「自分の庭」にある風車に、
より強い愛着を持つという現象だ。従来、エネルギー開発といえば、巨大開発
と環境破壊がセットになって「外」から地域にやってくるため、利権と地域保
全のそれぞれの立場が入り組んだ対立構造を生み出してきた。地域の「外」か
らこうした開発を進める政府や事業者は、これまで自らを問い直すことなく、
地域に一方的に「合意」を迫り、無事に説得できたものが「社会的合意」と呼
ばれてきた。そして説得できない批判派に対して”NIMBY" (Not in my back
yard) という、地域エゴを連想させる下品なレッテルを貼ってきたのである。
ところが、実情を見極めてみると、批判派の姿勢と思想は、地域エゴどころか、
社会公益の高みに至っていることがわかる(たとえば、松下竜一「暗闇の思想」
など)。

このように、これまで「社会的合意」といえば、事実上、一般公衆や地域住民
への一方通行の説得に過ぎなかった。しかし、自然エネルギーの場合は、政府
や電力会社など既存のプレイヤーが「自らを譲利・修正する」という意味での
「社会的合意」も必要になってくるのである。欧州のように、自然エネルギー
がエネルギー供給で有意となるまでに急拡大した場合、エネルギー供給インフ
ラやさらにはエネルギー産業そのものも構造変化が生じることになる。政策や
国際関係すら見直しを必要とする。地域住民だけでなく、自然エネルギー・イ
ノベーションの影響を直接に受ける政府や電力会社など既存のプレイヤーも含
めて、どのように「社会的合意」を取り結ぶか。従来のエネルギー開発とは逆
転した、この新しい「社会的合意」の構図も、自然エネルギーが社会にもたら
そうとしている新しい変化といえよう。

                       飯田哲也(ISEP所長)


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