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3.連載「光と風と樹々と」(5)
 ミネソタ農民風車物語 1
               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)

「地域密着型風車」は世界のトレンド

 市民風車は、アメリカでも、community-based wind power や community
wind というコンセプトとともに、現在大きな焦点になっている。そのまま日
本語に訳せば、「地域密着型風車」である。 community wind を、Windindustry
というミネアポリスに本拠をおくNPOは、次のように定義している。
community wind とは、「地元の利益を最優先するような地元所有の商業用の
風力発電プロジェクトである。地元所有とは、地域社会のメンバーが、土地の
使用料、税収、税以外の他の収入を得ることにとどまらず、直接、重要な出資
を行うことを意味する」(http://www.windustry.org/参照)。
 このサイトでは、community wind energy projects は、(1)自治体風車、
(2)農村電力協同組合風車(Rural Electric Cooperatives)、(3)学校風車
(高校、大学など)、(4)農民風車、(5)風力協同組合風車、連載の第1・2
回で紹介したような(6)ネイティブ・アメリカンの風車、の6種類に分類し
ている。プロジェクトは、ミネソタ州やその南隣のアイオワ州に集中している。
 
見渡す限り風車・風車また風車

 とくにミネソタ州には、104もの community wind energy projects が存
在する。それらは、強風に恵まれた南西部の端(サウス・ダコタ州とアイオワ
州の境界にはさまれた、バッファロー・リッジ(リッジは尾根を意味する)付
近)に集中している。実際、バッファロー・リッジを訪れてみると、この北東
方向に連なる小高い尾根に沿って大規模・小規模、視界の限り、発電用風車が
ひろがっており、実に壮観である。とうてい数え切れない(カリフォルニアの
サンフランシスコ近くのアルタモント・パスをしのぐ規模である)。風車立地の
最初のきっかけをつくったのは、この付近に住む Dan Jurl という現在40
歳代半ばぐらいの住民であり、彼は風車に憑かれて25年もの間活動し続けて
きたのだという。ミネソタ農民風車の第1の英雄である。彼は独自にこの地域
の風況マップをつくり、年間の発電量をシュミレーションしている。
 
急増するミネソタ州の風車

 全米各州の中でも、このところミネソタ州での風力発電の増加が目立ってい
る。2003年は22.6万kWが新設され全米最大の伸びを示し、2004
年は5.2万kWと南隣のアイオワ州の16.1万kWに次ぐ2番目の伸びだ
った。2004年末現在、総設備容量61.5万kWは、カリフォルニア、テ
キサス、アイオワ州に次いで4番目に多い。
http://www.awea.org/pubs/documents/Outlook%202005.pdf
さらに22.2万kWの新設が計画され、2015年には300万kWの設備
容量となり、州の電力需要の12%を風力でまかなう予定である。もちろん背
景には強風もあるが、実は風力発電が急増しているのには同州に特別な理由が
ある。

112.5万kW分の風力発電――エクセル・エナジー社の法的義務

 全米有数の電力会社エクセル・エナジー社が2011年までに設備容量
112.5万kW分の風力発電の新設か、相当分の電力の購入を同州から義務
づけられているからである。興味深いことに、しかもそのうち10万kW分は、
2000kW以下の小規模プロジェクトでなければならないとされている。市
民風車や農民風車プロジェクトがさかんになりつつあるのは、エクセル・エナ
ジー社が州法によるこのような法的義務を負わされているからである。ではど
うしてこういうことになったのか。
 
放射性廃棄物貯蔵施設拡充との取り引き

 興味深いことに、1994年に浮上した、州都セント・ポール市から
45km南にある、ミシシッピ河沿いのプレリー・アイランド原発(1973、
74年運転開始の2つの原子炉。出力計107.6万kW)の放射性廃棄物貯
蔵施設問題がそのカギである。放射性廃棄物貯蔵施設の確保は、トイレなきマ
ンションと揶揄されるように、どこの原発にとっても難題である。強力な反対
運動を背景として大きな争点となったが、電力会社と運動・議会との妥協の産
物として、94年、エクセル・エナジー社は同原発の使用済み核燃料17キャ
スク分の貯蔵施設の拡充を、原発立地点のオンサイトで認めてもらう代わりに、
2002年までに42.5万kW分を、2006年までにさらに40万kWの
風力発電を自前で新設するか、その分の電力量を購入するという条件で合意し
た。さらに2003年に50キャスク分の拡充とひきかえに、2011年まで
に追加で30万kW分の建設または購入という条件が追加され、計112.5
万kWの義務づけとなったのである。長期的に原発を風力発電などで置き換え
ていこうというロジックがそこにはあるが、複数の関係者の話によれば、94
年に合意した計82.5万kW分の風力発電と使用済み核燃料との間に、論理
的な計算式があったわけではない。真相は、「成り行き、勢い」なのだという。
交渉の中で、20万kW、40万kW、50万kWと、条件は上積みされ、つ
いに、82.5万kWに至ったのである。アメリカ的な取り引き、バーゲニン
グである。
 初期の原発の放射性廃棄物貯蔵施設の貯蔵能力は小さく、その増設が必要に
なる場合が多い。ミネソタ州の場合、貯蔵施設を確保し、原発の運転を続けた
い電力会社側が反対運動や州議会との力関係の中で涙をのんだのである。
 82.5万kW(1基あたり1000kWの風車に換算すれば、825基!)
の風力発電が義務づけられるという事態は、80年代後半から90年代半ばま
で停滞的だった全米の風力発電ビジネスを一気に再活性化する契機ともなった。
 しかも10万kW分は、2000kW以下の「地域密着型風車」のプロジェ
クトでなければならない。この取引は、市民風車・農民風車の基礎ともなった。

               長谷川公一(環境社会学者 東北大学教員)


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