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2)自然エネルギーの導入拡大と持続可能な地域作り
                    中島恵理(環境省水環境課所属)

自然エネルギーは、環境に負荷の少ない再生可能なエネルギーとしての意義だ
けでなく、地域コミュニティ形成、地域の経済活性化、社会問題の解決等地域
を環境的、社会的、経済的に元気にしうる鍵になると考えている。
筆者は、平成15年6月から平成17年7月まで、経済産業省資源エネルギー
庁で新エネルギー行政に関わってきた。主な業務はRPS法の運用業務と風力
発電系統連系対策、また新エネルギー産業ビジョンの策定やグリーン電力プロ
グラム・グリーンPPS等の調査業務に携わった。その経験から、個人的な立
場で、最近の新エネルギー政策の動向とその成果を紹介しつつ、個人的な追求
テーマである持続可能な地域作りの観点から見た政策のあり方について考えて
みたい。

一定量以上の新エネルギー等による電気(以下、「新エネルギー等電気」)の供
給を電気事業者に義務付けるRPS法は、費用対効果の高い新エネルギーの供
給を推進していくために導入された制度である。RPS法の導入後電気事業者
の新エネルギーによる電気の供給は増大してきている。具体的にどのような新
エネルギービジネスが拡大したかという点でみると、数万kW規模の風力発電
ファームや建設廃材のバイオマス発電等大規模な発電ビジネスまたは石炭火力
発電におけるバイオマス混焼等の電力会社自身による新エネルギー供給である。
すなわち、RPS法のもとでは、電気事業者は、義務量を満たすため、競争力
のあるより安価なコストの新エネルギー等電気を買い求めることになる。また、
価格は相対交渉となり、取引コストを削減するために、結果として、大きなロ
ットの新エネルギー等電気を提供できる大規模な発電事業者との取引を優先す
る。市民出資による市民風車や自治体が主体の小規模な発電ビジネス等地域発
の事業にとっては、RPS法下における価格交渉の取引コストが増大しただけ
でなく、特に風力発電については、売電価格が下がり採算性を厳しくさせるも
のとなった。風力発電については、大きな出力変動があることから風力発電が
大量に連系する北海道、東北、九州電力等では風力発電の系統連系が制限され
るようになってきた。そこで風力発電の系統連系を円滑化させるため、資源エ
ネルギー庁では、平成16年に総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会の
もとに風力発電系統連系対策小委員会を設置し、2年にわたって、風力発電の
系統連系対策の検討を行ってきた。この検討の末、当面の対策として、蓄電池
併設や低負荷期の解列を行うことを条件とした系統連系が有効な対策として提
示された。このような対策は、大規模なウインドファームにおいては対応可能
であるが、小規模な風力発電事業については、事業展開のハードルとなる可能
性がある。
RPS法において電気事業者に課せられた総義務量は、2010年に122億
kWh、新エネルギーの政策目標としては、たとえば、風力発電については
2010年に300万kWである。これらの目標が達成されるのであれば、全
国で事業展開をする大規模な事業者であろうと地域に根付いた小規模な事業者
であろうとそれは問わない。新エネルギーに対する補助金も限りがあり、国民
経済上も少ない費用で最大のkWhが稼げる大規模事業の方が望ましいという
ことになる。
経済産業省においても、自治体やNGOが行う地域に根付いた新エネルギー事
業の意義(地域活性化、普及・啓発)は認めており、地方公共団体における新
エネルギービジョン策定に補助を行いまた、事業補助においては民間事業者よ
りも高い補助率を設定して新エネルギー事業を推進している。また、平成16
年に公表した新エネルギー産業ビジョンにおいても、新エネルギービジネスの
将来像のひとつとして「地域経済と共存共栄するビジネス・モデルの創出〜
"New" Community Development by "New Energy"〜」を提示し、「地域における
新エネルギー産業が、持続可能なエネルギーの地産地消を実現し、さらには地
域の課題解決や地域の新たな文化創造への貢献等多様な価値をもたらす。また、
新エネルギー産業立地が地域の産業クラスターや教育の場の創造につながるな
ど地域の経済社会の発展にも貢献する。」と指摘している。新エネルギー産業ビ
ジョンに基づき平成17年度からは、新エネルギーの人材育成やバイオマスエ
ネルギーの地域モデル作りを支援する事業を展開している。しかし、売電を中
心とする新エネルギービジネスにおいては、RPS法の影響を強く受けること
となり、地域に根付いた小規模な事業展開が十分進んでいるとはいえない状況
にある。
RPS法は、供給事業者に対して新エネルギー等電気の供給を義務付けるもの
であるが、需要側に着目した新エネルギーの推進方策も重要になってくる。こ
のような視点から、グリーン料金やグリーン電力証書等の電気の需要家の参加
によって新エネルギーを拡大させる仕組みである、グリーン電力プログラムが
注目できる。そこで、資源エネルギー庁では、筆者が主担当となって、平成
15年度は、内外のグリーン電力プログラムの動向に係る調査、平成16年度
は、グリーンな電気を直接需要家に供給するグリーンPPS事業に係る検討を
実施した。また需要家側の取り組みとして、経済産業省の電気の購入に新エネ
ルギー供給の観点も考慮していくことの検討も進められた。このような調査検
討の結果、複数の事業者においてグリーンPPSの事業化の検討が進められて
いるところである。
 このような形で、資源エネルギー庁では、新エネルギーの導入の拡大が図ら
れてきており、筆者もその業務の一旦をになってきた。一方、地域における自
然エネルギーの取り組みとしては、たとえば、北海道や東北等における市民出
資による市民風車、長野県飯田市における市民出資、グリーン電力証書を組み
合わせた商店街エスコ&太陽光発電ビジネス、滋賀県野洲市における地域通貨
を通じた商店街活性化と太陽光発電の展開、埼玉県小川町における有機農業と
市民手作りバイオガスプロジェクト等が進められている。これらの取り組みは、
自然エネルギーの導入をきっかけとして、地域の住民間の交流及び地域住民の
社会参加が進み、さらに地域の商店や農業の販売の拡大や廃棄物等の社会・地
域の環境問題の解決、地域の技術・知恵を活かした新しい地域文化の創造等、
再生可能なエネルギーの導入にとどまらない、多様な社会的、経済的、環境的
な意義をもたらすものとなっている。しかし、このような多様な意義をもたら
す形で自然エネルギーを導入するのは、必ずしも容易ではない。RPS法のよ
うな価格とkWhのみを評価する政策のみでは、このような多様な意義をもた
らす事業を推進することは困難である。自然エネルギーがエネルギー供給の主
流をになうよう政策的に位置づけ、メジャーなエネルギー源としての役割を果
たすようになるためには、技術的な課題を克服していくだけでなく、他のエネ
ルギーにはない、自然エネルギーでこそもたらすことのできるこのような多様
な価値、意義を明らかにし、環境上だけでなく社会的、経済的な市民権を獲得
していくことが必要ではないかと考えている。そのためには、このような価値・
意義をもたらすことのできる自然エネルギーの事業を推進することのできる仕
組み、支援策が必要である。そのひとつとして、グリーン電力プログラムのよ
うな需要家・生活者の視点に立った自然エネルギーの普及・拡大を図る仕組み、
政策が重要であろうし、また資源エネルギー政策だけでなく環境政策や社会政
策からのアプローチが必要となってくるであろうと考える。筆者は、このよう
な視点から、個人的な立場で、地域やビジネスを魅力的にする自然エネルギー
の多様な価値、意義について紹介し、今後の政策や取り組みの方策について論
じる本を来年度出版することとしている。

                    中島恵理(環境省水環境課所属)


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